北米で大人気! トヨタ・4ランナーを南米の土漠で試乗

トヨタSUVシリーズのなかで世界的にランドクルーザーとともに人気があるのがハイラックス。現在は海外専用車として世界中で愛されているが、かつて日本でも大人気だったワゴンタイプのハイラックス サーフは、現在フォーチュナー(南米ではSW4)として販売されている。もともとハイラックスのバンタイプは、1984年にハイラックスのショートボディをベースに、FRP製のルーフを被せたスタイルで誕生し、1986年にワゴンタイプが追加された。2009年までの26年間、4代のモデルチェンジをしながら日本で悪路走破性の高さはもちろん、スポーティーなスタイリングが人気を博した。北米でも1984年当初から4ランナーとして販売され、Midsize SUVとして新たなカーライフスタイルを提案し、人気車種となった。
この4ランナーに南米・チリで乗る機会を得たので紹介しよう。

ワイルドでスポーティーなスタイリング

街中でスポーティーに走り、オフロードで高い悪路走破性を発揮するコンセプトはハイラックスサーフ時代から踏襲されている。さらにオフロードを気軽に走れるよう、電子デバイスの拡充やラダーフレームの高い剛性が魅力だ。ボディサイズは全長4,820mm×全幅1,925mm×全高1,780mmとSUVとして扱いやすいサイズだ。タイヤサイズは265 / 70 R17。サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン、リヤは4リンク式サスペンションとなる。

<KEEP IT WILD>をテーマに誕生した2016年モデルの4ランナー
バンパーとグリルのデザインを一体化し、冷却効果も高くオリジナリティ溢れるフロントマスク
直線を基調としたスクエアなスタイリング
4ランナーがハイラックスサーフと同じだったということを象徴するリアデザイン。デザインをしっかり踏襲している

エンジンはFJクルーザーに搭載されている1GR-FEと原則同じで、4リットルV6デュアルVVT-iで最高出力275Hp/5,600rpm、最大トルク381Nm/4,400rpm。車両重量約2トンの4ランナーにはとてもマッチするエンジンだ。

1GR-FEエンジンはトップフードを最小限にし、エンジンルームが見やすく整備性がよさそうだ

北米仕様では、グレードによってインテリアも異なってくるが、今回試乗したチリ仕様(4x4 SR5 Control Volante)のインテリアはとてもシンプルだ。センターデフロック付フルタイム4WDで5速AT。電子デバイスはタイヤの空転を制御しながら悪路走破性を高めるA-TRCや下り坂で安定性を高めるDAC(ダウンヒルアシストコントロール)が装備されている。北米仕様ではランドクルーザーと同様に、クロールコントロールとマルチテレインセレクトが装備される仕様もある。

シンプルなデザインが好印象。各スイッチの操作性もいい
サブトランスファーはダイヤル式。H4F(ハイモードでセンターデフロックがフリー)、H4L(ハイモードでセンターデフロック)そしてL4L(ローモードでセンターデフロック)と選択できる。
右から)急坂の下りも安定して降りられるDAC(ダウンヒルアシストコントロール)、ぬかるみや砂丘でスリップしそうなときに使うA-TRAC(アクティブトラクションコントロール)そしてVSC(ビークルスタビリティコントロール)のスイッチ
メーターパネルはとてもシンプル

フラットダートを疾走する心地よさ

4ランナーの走りで一番楽しいのは、フラットダート。ランドクルーザーより軽い車両重量と4リットルガソリンエンジンの組み合わせでとても安定感のある走りを楽しめる。またエンジンが3,000rpmを超えてくるあたりから、適度に排気音が聴こえてくるのが心地いい。サスペンションも初動がソフトで、細かい路面の凹凸をしっかり吸収しながら追従してくれるので、ふわついた感覚がなくしっかり路面をグリップしてくれる。VSC(車両安定制御システム)をオフにしてステアリングできっかけを作り、アクセルでクルマを旋回させてもとても扱いやすい。

こんな風景に降り立つとまるで月面探索車のよう
フラットダートはサスペンションが細かいギャップを着実に抑え、乗り心地がいい
このボディカラーも土漠に似合う
リヤから見ると、やはりハイラックスサーフを思い出す
シートも固めでロングドライブも疲れない
後ろの山の頂上まで登れる走破性を持つ4ランナー
アクセル全開で登っても50km/hしか出ない急な上り坂も軽々走る

低速トルクが太く砂漠も走りやすい

タイヤの空気圧を落とし、面圧を下げ、サブトランスファーのダイヤルを回しL4Lに入れ、砂漠を走ってみる。砂漠でも車重の軽さは有利に働き、まったく埋まるそぶりもみせぬまま軽快に走る。注目すべきは低速で走ったときに、ガソリンエンジンとは思えない低速トルクの太さのおかげで勢いをつけていかなくても砂の登りをスムーズに登れる。そして柔らかい砂で埋まりそうになっても、すばやくアクセルを踏んで砂の抵抗に負けないくらいの駆動をかけようとするとエンジンのピックアップもよいので埋まらずにすむ。運転に不安があればA-TRCをオンにしておけば、砂で空転してしまうタイヤのところに制御が入り、タイヤを空転させず、反対側のトラクションのかかっているタイヤに駆動がかかり、埋まることなく走れる。仮に埋まってしまったらA-TRCをオンにしてアクセルを1/4程度踏んだままにしておけば、トラクションがかかるタイヤに集中して駆動を与えてくれるので脱出できる。これはすばらしい制御だ。

低速トルクを活かしてゆっくり走っても埋まらないのがいい。この先どこを走ろうかと、砂を見る余裕が生まれる
砂丘の下りはエンジンブレーキが効きすぎるとかえって走りにくいので、少しアクセルを踏んで抵抗を減らすと走りやすい
サイドウォールがたわむ程度に空気圧を落とせば、なおさら楽に走れる。近づくと押し出し感の強いフロントフェイス

街中をスタイリッシュに乗れ、オフロードで真価を発揮する4ランナーは、ランドクルーザープラドやFJクルーザーとは異なる存在。日本ではハイラックスサーフの中古車がいまだ高値であることを考えると、欲しい人も多いのでは。きっと日本でも乗りやすいSUVの1台だろう。

(写真・テキスト:寺田昌弘)

[ガズー編集部]