南米大陸に挑んだいろんな乗り物 ダカールラリー2017同行取材で観た!(その2)

WRCやWEC、F-1など世界的モータースポーツとダカールラリーが大きく違うのは、クルマだけでなく、バイクやクワッド、トラックなどいろんな乗り物がほぼ同じルートを走ることだ(ステージによってはバイクやトラックが別ルートになることもある)。このモータースポーツの異種格闘技のような見どころの多さから、沿道には約440万人が駆けつけ、声援と歓喜に包まれ、インターネットの動画は2360万人が楽しんでいる。では、クルマ以外にはどのような乗り物が走っているのか紹介しよう。

すべての選手がリスペクトするモト

ひとりでルートブックやGPSを観ながらバイクをライドする。降雨や川渡りではずぶ濡れになり、路面がウェットであれば泥だらけになる。砂塵が激しければ、砂まみれになり、気温が低ければ寒いし高ければ暑い。自然をそのまま感じながら走るから、その過酷さをクルマやトラックで参戦する選手もわかっていて、最もリスペクトされるのがモト部門だ。今回は標高4,900mあたりまで登り、酸素が希薄となるなかでも激しいライディングを強いられた。単にバイクが好きでライディングがうまいだけでなく、登山家のような心肺能力がなければ完走することも難しい。今大会、モトは143台がエントリーし96台が完走。KTMが表彰台を独占し16連覇を達成した。ホンダはTeamHRCとしてワークス参戦、ヤマハはヨーロッパチームが参戦し、この3メーカーでトップ争いをしている。排気量はみな450cc以下で単気筒もしくは2気筒までのエンジンで、エンジンやサスペンションなど市販部品であれば改造が許されている。クラスは主催者のASOに認定されているエリートライダーのグループとそうでないライダーのグループに分けられる。さらにエリートライダーでないグループでは、エリートクラス同様のスーパープロダクションクラスとエンジンやフレーム、フロントフォーク、スイングアームなどの部品交換が許されないマラソンクラスに分けられる。

標高4,000mでも変わらぬライディングをする選手に驚く
大自然のなかをまるで乗馬をしているかのような美しさ
硬く締まった道を走ることも多い
完走を目指す選手はCP後やSSゴール後に休息を取る選手も多い
十分に水分を摂りながら、休む選手たち

路面の衝撃に耐えながら走るクワッド

バイクも相当過酷だが、クワッドはもっと過酷かもしれない。タイヤの接地面が広く、4輪のサスペンションストロークが短いので、路面の凹凸の衝撃を受けやすい。またフロント2輪の衝撃をバータイプのステアリングで押さえつけるので、握力、二の腕の筋肉、背筋に絶えず力が入る。そしてリエゾンでアスファルトを走るときは、ブロックパターンのタイヤのせいで絶えず振動するから気が抜けない。今大会は37台がエントリーし22台が完走。1位から6位までヤマハが独占している。クラスは単気筒で排気量750cc未満の2輪駆動と2気筒以内で排気量900cc未満の4輪駆動がある。

クワッドはヤマハが圧倒的にエントリー台数が多く、上位を独占している
簡単に乗っているようにみえるが、握力、背筋に絶えず力が入る
限られたスペースに工具、水などを積んで走る

オートから分かれ、新設されたUTV

UTV(Utility Task Vehicle)は多用途四輪車で、もともとは牧場や大規模農地、森林などの管理、軽作業の足として使われる乗り物だったが、スポーツタイプがラインナップされたことで、アメリカやオーストラリアでオフロードレースが盛んになっている。代表的メーカーのポラリスで参戦する選手が増え、今大会よりオートから分かれUTVとしてカテゴリーが新設された。2気筒で排気量1,000ccのエンジンを搭載し、二人乗りタイプ。オフロードを楽しく走るために設計され、軽量でサスペンションもしっかりしているのでジャンプも軽くこなせる。フロントガラスこそあるが密閉はされていないので砂まみれになるが、仮に転倒しても二人で起こせるくらい、気軽な乗り物だ。今回は8台が参戦し、5台が完走している。

2人乗りだがコンパクトなポラリス
果敢に攻める。片側のリヤタイヤが浮いても構わずアクセルを踏む
オフロードを走るために生まれたポラリス

ダカールならではの大迫力のカミオン

FIAのレギュレーションではカバーしきれないため、ダカールラリーの主催者ASOが規定するレギュレーションに合わせ独自の進化を続けているカミオン。主要チームが定期的に会合を開き、より安全により速く走るカミオンを協議しているのもこのカテゴリーならではだ。道の状況によりオートとは走るルートが異なることもあるが、おおよそのタイムを比較してみると、実はオートとタイム差があまりないほど速い。ひと昔前のカミオンは、直線は速いがコーナリングはゆっくり走り、砂丘も直線的にしか登らなかったが、現在はオートと同じような走りができる。コーナーではドリフトもするし、砂丘も斜めに登っていったりする。大半が排気量10,000cc以上のマシンで、オフロードでも硬い路面では、タイヤのブラックマークをつけるほどだ。タイヤ径が大きいので、多少の凹凸など気にせず走れ、また車内から路面に合わせ空気圧調整ができるので、停まらず走れる。ただ車重が重いので、泥ねい路はドライバーの高いドライビングスキルが必要となったり、万一パンクをするとタイヤ交換に時間を要する。そしてスタート時間が、モト、クワッド、オート、UTVの後にあるため、日が暮れてもステージを走ることが多い。今大会は50台がエントリーし、40台が完走した。ロシアのカマズ、イタリアのイヴェコが毎回優勝争いをしている。

毎回優勝争いをしているカマズ
日野レンジャーは風にたなびく鯉のぼりがトレードマーク
ルノートラックが砂塵を巻き上げながら走る

オートではEVが初完走の偉業を成し遂げた

ダカールラリーは純粋なモータースポーツだが、当初は動力とタイヤがついている乗り物であれば、参加者に冒険心さえあれば何でも参加可能だった。それから39回目にしてEVが初完走した。ドライバーのアリエル・ジャトン選手は、今までラリーマシンを数多く製造し、このEVマシンも自ら手掛けた。最高出力250kW/最大トルク81.6kgmを発生する電動モーターを搭載。今回で3度目の挑戦にしてその夢がかなった。ダカールラリーにも新たな歴史が刻まれた。

オフロードも果敢に攻めるが、ヒューンと音もなく駆け抜けるのに驚く
3度目のエントリーで念願の完走を果たした

(テキスト・写真/寺田昌弘)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road