【動画】全ては“止まれる自信”から!「止まる」「曲げる」ブレーキを身に付ける・・・山野哲也 基礎からのドライビング集中講座②
「もっとスマートに安全に普段の運転を楽しみたい」「スポーツドライビングに興味がある」という方々に、ジムカーナとレース界のレジェンド山野哲也が4回にわたってアドバイス。日常ドライブからサーキットでのスポーツドライビングまで、しっかり役立つテクニックや練習方法をお届けする。
アシスタントは西野洋平。こちらも全日本ジムカーナ選手権チャンピオン獲得回数多数のドライバーで、トヨタカローラ栃木GR Garage宇都宮つくるま工房のGRコンサルタントを務めている。
第2回目のテーマは『走る・止まる・曲がる』の中で最も重要な『止まる=ブレーキング』。1回目に続き、今回もGR Grage 宇都宮つくるま工房の試乗車、GR86 RZ 6速MT車を使い、『ドライビングパレット那須』でロケを行った。
『止まれる自信』は『曲がれる自信』『アクセルが踏める自信』につながる
ドライビングの『走る・止まる・曲がる』の中で、最も重要なのは『止まる』だと山野選手はいう。『曲がれる自信』『アクセルを踏める自信』は『止まれる自信』から来るもので、そこに不安があったら先には進めない。まずはそこから技術を磨いていくことが先決だ。
普段の運転では、ABSを効かせるほど強くフルブレーキングを掛ける機会はまずない。しかし、急な飛び出しやさまざまな異変によって、危険回避的にそうしなければならないシーンには遭遇する。なので、スポーツドライビングに興味がない方も、ぜひ知っておいてほしい。
今回は、フルブレーキングの踏み方、ABSの効かせ方、ブレーキングが上手くなるためのポイントを解説していく。
『目標制動トレーニング』で『絶対そこで止まる』を身につける
まず、加速状態からのフルブレーキングで、目標と定めたパイロンの位置で完全停止する『目標制動』からスタート。
画像は成功例のフィニッシュ地点だが、映像では、
①パイロンを通り越してしまい止まるパターン
②パイロンの手前で止まってしまうパターン
という、ふたつの失敗例も。
①は目算を誤った、そもそもそのクルマの制動性能を把握していない、強く踏めなかった、などが原因として考えられる
②も目算を誤った、そもそもそのクルマの制動性能を把握していない、かなり手前からブレーキを掛けてしまった、などが原因として考えられる。
そのあとに成功例を見せているが、やり方のコツはそのあとのトークをご覧いただきたい。
最初の踏力が肝心!できるだけ早くABSを効かせる
第1回の『ドライビングポジション&操作編』の中にもあったように、まずはアクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替えを素早く行う。高い踏力を出すためにも大事なことだ。
そして、最初にドンと強く、思いっきり踏みつける。始めを強くすることによって空走距離を短くでき、大きなストッピングパワーを得ることができる。クルマは速度が高いときに強い制動力を掛けたほうが減速しやすいからだ。
そのままの踏力で、踏み続ける。ABSが作動すると思うが、ABSはできるだけ早いタイミングから効かせるようにしたい。
ABSは効かせても効かせなくても制動距離はさほど変わらないが、ABSが介入するほど強いブレーキを踏んだことがない人は、強く踏んでABSを効かせるほうが、フルブレーキがしっかりできている証ともなることもあって、ここではABSを早めに効かせて、効かせ続けることを推奨している。
フルブレーキングで初期に高い踏力を出せるようにする、目標と定めた位置で止まれるようにするために、クローズドの場所で練習を繰り返し、『止まれる自信』を確保したい。スポーツドライビングはもちろん、日常ドライブの危険回避でも役立つスキルとなる。
「止まるブレーキ」と「曲げるブレーキ」を『Jターン』で反復練習のススメ
『止まれる自信』をつけたら、次は『曲げるためのブレーキ』を習得したい。クローズドの広場で『Jターン』と呼ぶ、ひとつのペアピンコーナーをつくり、加速→減速→旋回→加速を繰り返す。
まずは2速からシフトダウンなしに曲がるくらいの規模でよい。慣れてきたらストレートを長く取って、3速から2速へのシフトダウンをともなうと、ブレーキングとシフトダウンの連携も学べる。
映像では『止まるためのブレーキング』と『曲げるためのブレーキング』があることを解説。その連動こそが『Jターン』トレーニングのポイント。
- 突っ込み過ぎ=止まりきれなくて、ステアリングを切り込めない状態が続き、アンダーステアに陥るという失敗例
- ステアリングが切り込める速度まで落とすのがクリッピングポイントの遥か手前過ぎて、『曲げるためのブレーキング』を活用できず、速度が落ちきってしまい、早めにアクセルを開けてしまうことでアンダーステアに陥るという失敗例
などを見せてくれてから、理想的な曲げるブレーキによるコーナリングをレクチャーいただいた。
画像は成功例の連続写真。強いブレーキングで短い時間に曲がれる速度まで落とし、コーナーにアプローチ。ブレーキペダルの踏力を緩めながら、ステアリングを切り込んでいく。するとクルマは小さく旋回し、クリッピングポイントとなるパイロンの裏側に回り込むようにつく。その時点でノーズは出口を向いているので、ステアリングを戻しながら、憂いなく加速に移っているという流れだ。
成功の秘訣はというと、まず、『目標制動』がちゃんとできていること。『止まる自信』がその後の操作を可能にしている。素早く踏み替え、高い踏力で一気に減速。クリッピングポイントに対して、早い段階からブレーキを戻し始めて、ステアリングが効くようにしている。
ブレーキはスパッと離すのではなく、じわっと緩めていく、そこに操舵角を徐々に増していくことで、クルマは大きな旋回力を得る。向きを変えながらクリッピングポイントに近づけるわけだ。
画像や映像を見ると、クリッピングポイントの手前までブレーキランプが点いているのがわかるだろう。このリリーステクニックが『曲がるブレーキ』で、『Jターン』はそれを養うのに有効なトレーニング方法というわけだ。
ジムカーナ場やクローズドの駐車場などで『Jターン』を取り入れたレッスンや練習会も各地で行われている。積極的に参加して、ビギナーも中級者も、そういう機会にマイルを稼ぐのがいちばんと山野選手はいう。
日常ドライブでの交差点もUターンもカーブも、基本的には同じ考え方だ。必ず頂点(クリッピングポイント)があり、低い速度域でも、
①クリッピングポイントまでは減速、そこからが加速という意識を持つこと
②クリッピングポイントの手前からじわっとブレーキを緩めて、ゆっくりステアリングを切る
ということを心掛けると、スムーズな運転となる。
次回Part.3はその先で求められる『クルマの挙動コントロール』について、そして、Part.4は日常ドライブにも大いに役立つ『視線移動』と『車両感覚』をレクチャー。そちらもお楽しみに!
車両協力:トヨタカローラ栃木 GR Garage宇都宮つくるま工房
栃木県宇都宮市陽東5-8-24 TEL 028-612-3055
https://www.corolla-tochigi.co.jp/naradeha/tsukurumakobo
(文:蔵田智洋 写真:堤 晋一)
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