【動画】華麗な技も披露!アンダーステアとオーバーステアのクルマの挙動を知ろう・・・山野哲也 基礎からのドライビング集中講座③
「もっとスマートに安全に普段の運転を楽しみたい」「スポーツドライビングに興味がある」という方々に、ジムカーナとレース界のレジェンド山野哲也が4回にわたってアドバイス。日常ドライブからサーキットでのスポーツドライビングまで、しっかり役立つテクニックや練習方法をお届けする。
アシスタントは西野洋平。こちらも全日本ジムカーナ選手権チャンピオン獲得回数多数のドライバーで、トヨタカローラ栃木GR Garage宇都宮つくるま工房のGRコンサルタントを務めている。
第3回目はステアバランスについて。まずはアンダーステアとオーバーステアを理解して、クルマの挙動変化とそのコントロールテクニックが身につく練習方法を紹介。今回もGR Grage 宇都宮つくるま工房の試乗車、GR86を用い、『ドライビングパレット那須』でロケを行った。
アンダーステアとは⁉ オーバーステアとは⁉
コーナリングの『アウト・イン・アウト』のライン取りや『スローイン・ファストアウト』のセオリーは比較的簡単に身につけることができる。しかし、それらを実践している最中に生じる『挙動変化』のコントロールは難しい。
山野選手は『ステアバランス』という言葉を使っているが、すなわちそれは、ドライバーが狙った動きよりも曲がらないで外側に膨らんでいってしまう『アンダーステア』と、狙った動きよりも曲がり過ぎてしまい、内側に巻き込んでしまう『オーバーステア』のふたつ。
それらがどういう状況で起きて、どう対処すべきかを知り、そのコントロール技術を養っていくことは、日常ドライブやスポーツドライビングの安全につながり、ドライビングの醍醐味を味わうのに欠かせない要素となる。そこで、山野選手としては、このテーマを3回目に持ってきたわけだ。
コーナー進入でのアンダーステア
映像では、第2回目に使った『Jターン』のコーナーで、FR車に生じるアンダーステアとオーバーステアを解説。まずは最も多い進入でのアンダーステアは、止まりきれなくて、ステアリングを切れない状況陥った例を示している。
そのほかにも減速が足りずにステアリングを切っても曲がらず膨らんでしまうパターンや、ブレーキを離してしまって、荷重が前から後ろに戻ってしまってからステアリングを切って、操舵が効かないパターンなどが考えられる。
コーナー進入でのオーバーステア
進入でのオーバーステアはなかなか起きないが、ブレーキングから荷重がまだ前寄りの状態でステアリングを切った際に浮き気味のリアが流れたり、シフトダウンをともなった際にクラッチのつなぎがラフで、シフトロック気味になったりしたときなどに起きる現象だ。
コーナー立ち上がりでのアンダーステア
立ち上がりのアンダーステアは曲がりきれていないのにアクセルを踏んでしまったときに生じる。立ち上がりの加速を意識しすぎると本来通りたいラインから膨らんでしまうことで、余計なタイムロスになってしまう。
一般道の交差点に置き換えても、このコーナーの立ち上がりに横断歩道があったり歩行者もいる可能性があるため、どんな状況にも対応できるアクセルコントロールを心がけたい。
コーナー立ち上がりでのオーバーステア
立ち上がりのオーバーステアはこれまた比較的少なく、アクセルを踏んだら後輪が空転して外側に流れて起きるが、ドライビング面ではステアリングを戻すのが遅れた、アクセル操作がラフだったなどの原因がある。
あるいは、パワーがあり過ぎた、タイヤが摩耗していた、L.S.D.が効き過ぎていた、サスペンションのセッティングなど、クルマ側の事情も原因として考えられる。
定常円旋回でクルマの挙動変化を知る
中央に置いたパイロンのまわりをぐるぐる回る定常円旋回。いわゆる“ドーナツターン”自体は「実は簡単」と山野選手は言うが、アンダーステアやオーバーステアがどうして生じるのか? どんな感じの変化なのか? どう対処すればよいのか? などを簡単に知って学べるトレーニングだ。
FR、ミッドシップ、RRといった後輪駆動車、FF(前輪駆動車)、4WD(4輪駆動車)でも、ステアリングを切った状態で、アクセルを開けていけば、旋回径はどんどん大きくなって、曲がりにくい状況になる。
クルマは加速している状態では曲がりにくいアンダーステアになるということを、まずは知っていただきたい。曲がらないのに減速しないで、あるいは、アクセルを踏み続けてしまって、事故に陥るなど、日常ドライブでも、そういった悲劇は起こさないで済む。
曲がりやすくする=径を小さくするにはどうするか? アクセルを緩めればいい。つまり、減速中は曲がりやすいということだ。コーナーの進入ではクルマのこの挙動変化を利用する。いうまでもなく、それもスムーズな日常ドライブに活かせるセオリー。
旋回径が大きくなっていく状況で、さらにアクセルを強く踏み込むと、FFはさらにアンダーステアが強くなり、4WDはFFほどではないが、同じような傾向になる(車種によってオーバーステア方向に転じる場合も)。
しかし、後輪駆動車は後輪の空転が始まり、外側にスライドしてオーバーステアに。いわゆる『パワーオーバーステア』と呼ばれる現象だ。また、アクセルOFFで減速によるクルマが曲がりやすい状況から、すかさずアクセルを踏み込むと、同じようにオーバーステアに持ち込むことができる。
ここではそれをキッカケに挙動コントロールを学ぶわけだが、その際のリアの出方はFRに対し、後方にエンジンやミッションなどの重量物があるミッドシップやRRのほうが唐突で、コントロールもその分、シビアになる。同じFRでもホイールベースの長さの違いなど、車種によって出方は異なる。
山野選手はこの定常円旋回で挙動コントロールを学んでほしいという。『Jターン』同様、クローズドの広場を使ったレッスンや練習会などで試せる機会は増えている。もっとも、前述の理由から、コントロールの醍醐味が味わえるのは後輪駆動車がいちばんということになってしまうのだが……。
映像では簡単にパワーオーバーステアに持ち込む手段として、『ドーナツターン』を紹介している。停車状態でステアリングを大きく切って、エンジン回転を4000rpm以上の高めに保ち、クラッチをラフにつなくと、後輪が空転して流れ、クルマはスピン状態に。その際、ステアリングは内側を向いたままで、ハーフスロットルでアクセルを微妙にコントロールすると、リアがスライドしながら旋回を続けることができる。
定常円旋回トレーニングは、それをキッカケに、後輪のホイールスピンを増やすようにアクセルを踏み込み、オーバーステアが大きくなってきた際にアクセルをキープか、少し戻してカウンターステア(クルマが曲がっている方向と逆側に操舵すること)を当てる。
外側に出ていくリアに合わせてステアリングを外側に切り、カウンターステアの操舵角やアクセルの量を微妙に調整しながら旋回を続けるのが一連の流れ。コツは低いエンジン回転でやること。高回転では破綻しやすい。
また、行きたい方向をつねに見ながら進む。1速で慣れてきたら、2速でもっと大きな円にも挑戦してほしい。難易度がさらに増す。そして、1速のままでいいので、もうひとつトライしていただきたいのが、次のトレーニングだ。
最初はドーナツターンからだんだん回転径を大きくしていく
アクセルの開度とカウンターステアを大きくしながら、回転径をさらに大きく
アクセルの開度とカウンターステアを緩めながら、回転径を小さくしていく。これはかなり高度な技だ
定常円旋回のステップ2は前述の『2速バージョン』と、ここで紹介する『径の自在コントロール』。カウンターステアとアクセルの量を増やして旋回径を大きくする。これは比較的簡単にできるだろう。
しかし、難しいのはその状態から旋回径を小さくしていく操作。カウンターステアとアクセルの量を減らして、中央のパイロンに近づいていく。山野選手の映像のように、パイロンのギリギリ際まで小さくするとことまでトライしていただきたいが、後輪のグリップが回復して、スライドが止まってしまう場合もあり、高度なテクニックが必要だ。
映像では山野選手に続き、西野選手もお手本を披露。山野選手の実況付きだ。
これらの定常円旋回トレーニングはオーバーステアへの対応力を高め、コーナーの進入でリアが流れても、瞬時に修正できたり、逆にそれを利用して積極的にクルマの向きを変えたり、立ち上がりでリアが流れてもステアリングで修正しながら積極的にアクセルを開けていったり……というように、コーナーを攻める自信につながる。
さて、今回はちょっと難しい内容だったかもしれないが、次回Part.4は日常ドライブでも大切な『誌面移動』と『車両感覚』。運転がラクになること請け合いだ。
車両協力:トヨタカローラ栃木 GR Garage宇都宮つくるま工房
栃木県宇都宮市陽東5-8-24 TEL 028-612-3055
https://www.corolla-tochigi.co.jp/naradeha/tsukurumakobo
(文:蔵田智洋 写真:堤 晋一)
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