日本人の知らない!?タイの熱いクルマ事情(カーライフ&モータースポーツ編)

目覚ましい経済発展を続けながら、独自のクルマ文化を構築するタイ。第2回目となる今回はタイの人々のカーライフとモータースポーツを紹介します。

タイでは18歳からクルマの免許をとることができます。適性検査と学科、実技試験パスすれば免許は交付されますが、教習所で運転を習ってから取得する方法もあります。

タイの人々の多くは通勤に自家用車を使用しています。バスや電車などの交通機関だけでは通勤需要をカバーできないからですが、休日でも状況は同じ。そのため休日の移動は自家用車が基本。寺院や滝、海などの観光地もクルマで行きます。

ちなみにタイはイギリスや日本と同じ左側通行(右ハンドル)ですが、急なUターンやバイクの対向車線はみ出しなどが当たり前のようにあります。バンコク市内での事故原因の1位は急な車線変更で2位は車間の詰めすぎです。やはり渋滞が多いからでしょうか。

バンコク市内の交差点。対向車線は1車線のみで、日本人には非常にわかりづらい(しかも時間によって変わることもあります)。警察や防犯カメラによる取り締まりも行われており、防犯カメラの場合は違反者の自宅に罰金納付命令書が送られてきます
バンコク市内の交差点。対向車線は1車線のみで、日本人には非常にわかりづらい(しかも時間によって変わることもあります)。警察や防犯カメラによる取り締まりも行われており、防犯カメラの場合は違反者の自宅に罰金納付命令書が送られてきます

レースが好きな人たちは週末に集まりミーティングを行っています。広い駐車場に集合し、様々な活動を行うグループもあれば、地方への旅行を楽しみながら慈善財団や遠く離れた田舎の学校に物を運んで寄付する、いわゆる社会貢献的な旅を楽しむグループもあります。スピード好きが多いので、レースを観戦するためのツアーを組むグループも。

ミーティングの様子。週末に広い駐車場でミーティングを行うのは万国共通のようです
ミーティングの様子。週末に広い駐車場でミーティングを行うのは万国共通のようです
休日を利用してメンバー同士のレースを行うグループも。日本で言うところの走行会ですね
休日を利用してメンバー同士のレースを行うグループも。日本で言うところの走行会ですね

改造対象として用いられる車種は1980~1990年代の日本車がほとんど。トヨタはカローラレビン(AE92)やカローラ(AE100)、MR2(SW20)やスープラ(JZA80)、日産はセフィーロ(A31)やシルビア(S13/S14)、スカイライン(R32/R33)、ホンダはシビック(EG/EK)やインテグラ(DC)などです。この中でもっとも人気を集めているのがタイと日本の両方で販売されていたA31やEG、EKで、20年以上使われてきた今でも人気を集めています。現在のチューニングトレンドは美しさとシンプルさを重視した、無駄のないチューニングです。

オリジナルのものとは異なるエンジンを搭載するBMW。タイでは珍しくない光景です
オリジナルのものとは異なるエンジンを搭載するBMW。タイでは珍しくない光景です

しかし、タイでは今、ピックアップトラックの改造が黄金時代を迎えています。その理由の一つは、よりパワーとトルクを上げることができる新型コモンレール式ディーゼルエンジンの存在です。チューニング技術も進化しており、実力は有名ドラッグレースの結果で証明されています。こうしたチューニングをマネしたいという人も多く、ピックアップトラックのアフターマーケットは急激な成長をみせました。

2.5リッターのコモンレール式ディーゼルエンジン。シリンダー容量拡大と大型ターボチャージャーによりパワーアップさせることができるのも人気の理由です
2.5リッターのコモンレール式ディーゼルエンジン。シリンダー容量拡大と大型ターボチャージャーによりパワーアップさせることができるのも人気の理由です
レーシングスタイル派の一番人気はいすゞのD-MAX
レーシングスタイル派の一番人気はいすゞのD-MAX

また、ドラッグレースはタイでもっとも人気のあるモータースポーツです。他にもサーキットやジムカーナ、ドリフトやラリーなど、さまざまなカテゴリーがありますが、ドラッグレースは他のカテゴリーと比べて少ない予算で済み、いろいろなところに専用コースがあるので、やる気さえあれば簡単に参加できます。ほとんどが先述のピックアップトラック(トップ画像)によるもので、参加者の間で最も人気があるのはいすゞのD-MAX。その次はシボレー、トヨタ、三菱という順です。

ベンジン(ハイオクガソリン)エンジン車でのドラッグレースが好きな人は、「SOUPED UP」や「REV UP」など、大きな大会に参加することにこだわっています。カーショップは日本製スポーツカーやファニーカー、スペースフレームのマシンを開発し、さまざまなチューニングを施してドラッグレースに出場しています。主なチューニングの内容はターボチャージャーによるパワーアップ、シリンダー容量拡大、アクセサリーの取り付けなどで、アメリカンのスタイルに近いです。

タイ国内のドラッグレースカーは、アメリカンスタイルを取り入れたものが多い
タイ国内のドラッグレースカーは、アメリカンスタイルを取り入れたものが多い

一方、サーキットレースも人気です。プロドライバーになるチャンスを用意する主催者もたくさんあり、自分に合ったレースに出場できます。ガソリン車やディーゼル車はもちろん、1.5リッター車からスーパーカーまで出場できるクラスがあり、楽しいレースを提供することを目指しています。その中で最も大きなレースは、有名レーシングカーとプロドライバーが集まる「Thailand Super Series」で、ブリ―ラム県にあるチャン・インターナショナル・サーキットやチョンブリ県にあるバンセーンストリートサーキット(一般道を閉鎖して行う公道レース)など、グレードの高いサーキットで開催されています。

Thailand Super Seriesの1コマ。おなじみのスーパーカーが走っていて、日本の光景とさほど変わりません
Thailand Super Seriesの1コマ。おなじみのスーパーカーが走っていて、日本の光景とさほど変わりません

ちなみにタイではジムカーナの人気が低調ですが、特別なコースを設けて継続的にレースを開催しています。また、タイでのドリフト人気は減少傾向で、10年前と比べてイベント数と参加者が減りました。その理由は開催費用が高い上に、ルールやジャッジも難しく、観客がなかなか理解できないからです。ドラッグレースが人気を集めていることでもわかる通り、シンプルでわかりやすいカテゴリーの方が、タイの人々に受け入れられやすいということでしょう。

クルマを移動の道具だけではなく、遊びのツールとして活用しているタイの人々。日本人が見習うところもいっぱいありそうですね!

Pakorn suksamran(パコーン スックサンラーン)
タイのライター兼編集者。普段からクルマ系記事を中心に担当しており、「Option thailand」等でも執筆経験あり。

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