ストイックなだけじゃない?!笑顔がステキな自動車整備士

クルマの専門知識や技術力に加え、体力も必要な自動車整備士のお仕事。職人気質の男性が多いイメージですが、今回は女性自動車整備士として活躍している鶴岡いずみさんに、自動車整備士になるきっかけやお仕事のやりがいについてお話を伺いました。

プロフィール
鶴岡 いずみ(つるおか いずみ)

愛知県を営業エリアとしている名古屋トヨペット株式会社トヨタ248店に勤務する自動車整備士。
専門学校トヨタ名古屋自動車大学校(※1)を卒業後、平成23年に名古屋トヨペットへ入社。国家一級自動車整備士(※2)、トヨタ技術検定一級(※3)、自動車検査員の資格を取得し、クルマの故障診断から一般整備、お客様への対応まで、幅広い業務を担当している。

※1 専門学校トヨタ名古屋自動車大学校
愛知県清須市にあるトヨタ自動車直営の私立専修学校。​
http://www.toyota-tcn.ac.jp/​)​
※2 国家一級自動車整備士​​
高度な整備技術力に裏づけされたアドバイザー能力、環境保全、安全管理など
​社会の要請に応えられる整備士。一級整備士試験の合格率は全国平均で約30%前後。
※3 トヨタ技術検定
トヨタ自動車が認めるエンジニアの証となる資格。

―自動車整備士になろうと思ったきっかけはなんですか?

高校生のときにテレビでF1を観ていて、ピット作業に興味を持ったのがきっかけです。ドライバーやレースクイーンよりも、ピットスタッフがかっこいいなと思って。高校は普通科でしたし、そこまで機械いじりが好きな方でもなかったのですが、クルマの構造には興味があったんですよね。それで先生に相談して、トヨタ名古屋自動車大学校という専門学校へ進学を決めました。
在学中に二級自動車整備士の資格を取って、就職のタイミングで一般企業に入ることも考えましたが、学んだことを活かしたいという気持ちから自動車整備士の道を選びました。

テレビでよくF1を観ていたという鶴岡さん。高校時代はサーキットのピットスタッフになることが夢だったそう。

― 一級自動車整備士資格を取得するまでの苦労はありましたか?

やっぱり、勉強中は現実逃避をしたくなったりもしましたね。(笑)でも会社にも技術向上を目的とした研修をしていただいていたので、勉強は一生懸命していました。一級自動車整備士の試験は学科と実技があって、学科の方は特に覚えることが多くて大変でしたが、合格できたときはすごく嬉しかったです!​

作業中は帽子と軍手を装着。夏でも薄手の長袖作業着を着用し、しっかりと安全対策をしています。

―仕事を始めてから大変だったことは?

最初は専門学校で習ったことと現場とのギャップに戸惑いましたね。全部初めてのことばかりで不安だらけ。とにかく仕事を覚えようと必死でした。学校はクルマの構造や基礎的なことを学ぶ場なので、実際の仕事現場とは全く違います。修理書を見ながら進めてもなかなか上手くいかなくて…。決められた時間内に作業が終わらなかったり、力の入れ方が分からなくてボルトを緩められなかったりと、いろいろな苦労がありました。
分からないことは先輩方に教えていただき、日々の積み重ねの中で、工具の選び方や効率のいい作業の仕方などが分かるようになってきました。

「新人時代にたくさん失敗したことが今の成長につながったのかなと思えます」と語る鶴岡さん。1人に1台支給されるキャリーケースには、鶴岡さんの“マイ工具”がズラリ。

―入社した頃と比べて、今はどのような変化を感じますか?

1年目で吸収したことを2年目で応用できるようになって、3年目で自動車検査員(※)の資格も取得して自信がついていきました。作業の質と時間の両立を意識するようになってきたのも同じ頃ですね。今は5年目に入って、まわりを見て動ける余裕が出てきました。先輩の状況を見て作業の手伝いをしたり手順を組み立てて動けるようになったり、無駄な動きは以前よりも少なくなったのかなと思います。
安全性についてはもちろん手を抜くことはできませんが、時間だけを重視するなら、少​しくらい雑に作業することだってできるんですよね。でも、素早いだけで仕上がりが悪ければ意味がないし、逆にたくさん時間をかけて綺麗に仕上げても、お客様をお待たせして迷惑をかけてしまう。だから、これからはより短時間で質の高い作業をできるよう、自分なりに工夫していきたいです。

※自動車検査員
自動車整備士として一定の経験・資格を有した上で
地方運輸局長が行う「自動車検査員教習」を修了し、
自動車整備業者からの選任と地方運輸局からの認可を受けた者。

点検作業もテキパキこなします。向上心を持って仕事に取り組む姿勢は、先輩方から見ても頼もしいでしょうね。

―仕事のやりがいや嬉しかったエピソードを教えてください。

効率よく作業ができたときは、今日はうまくいったな、という達成感がありますね。
​それと、修理後にお客様から「ありがとう」と言ってもらえたり、反応を直接感じられたりすることが嬉しいです。女性の自動車整備士はまだまだ少数派なので、「すごいね」と声をかけていただくこともあって、お客様の一言でモチベーションが上がることも多いですね。
​嬉しいこともある反面、場合によっては私の説明では納得してもらえないこともあるんですよ。伝え方を変えて試行錯誤していますが、どうしても納得してもらえないときは先輩に対​応を代わってもらうのもひとつの方法なのかなと、今では割り切って考えられるようになりました。​

自動車整備だけでなく、直接お客様の対応をすることもしばしば。清潔感のある身だしなみにも気をつかっています。

―お休みの日の過ごしかたは?

何もすることがなかったらゆっくり寝ていたり、愛犬と遊んだりしてのんびりしています。外出するときは買い物やカフェに行くことが多いのですが、思いつきで友達の家に遊びに行ったりもしますね。専門学校時代の友達は県外に住んでいる子が多いので、富山や長野、京都など、いろんなところに遊びに行けるのが嬉しいです。
愛車のハイエースに乗ってお出かけするときは、高さ制限で立体駐車場や地下駐車場に入れないことがたまにあるので、駐車場探しがちょっと大変。(笑)でも、クルマは見た目のかっこよさ重視で選んでいます!

休憩室でリラックス。お休みの日はオンとオフを切り替えて、愛犬やお友達との時間を満喫されているんですね。

―理想のドライブデートを教えてください。

一緒に綺麗な夜景を見に行けたらいいかな。以前、友達と数人で岐阜県にある池田山という夜景スポットに行って、山の上から見える星空と夜景がすごく綺麗で感動しました。工場夜景もかっこよくて好きなので、いつか三重県四日市にある工場夜景も見に行ってみたいですね。

仕事やクルマ選びに関しては男気も感じられますが、ロマンチックな女性らしい一面も。

―今後の目標はありますか?

自動車整備士の仕事は体力的な問題もあるし、今後のことを考えるとずっと働き続けるのは難しいかもしれません。結婚するとなると働き方を考えないといけないな、とも思います。でも、今は自動車整備士としてもっと経験を積んでいきたいと思っています。
スペシャリストエンジニア(※)のような、どんなことにも対応できる自動車整備士になることが今の目標ですね。

※スペシャリストエンジニア
名古屋トヨペットでは愛知県内を7つの営業部に分け、
スペシャリストエンジニアを各営業部に1名ずつ配置している。
主な業務は担当営業部内を巡回し、高難度のトラブルを解決に導くサポートをすること。
また、社員の育成もおこない、店舗とメーカーのパイプ役となる存在でもある。

ストイックな部分もありつつ、女性らしさもしっかりと持っている鶴岡さん。時折見せてくれる笑顔もとっても魅力的です。さらに上のレベルをめざして仕事に取り組む姿を、今後も応援していきたいですね!​

[ガズー編集部]