目指すは国内最高峰のスーパーGT 実力が光る若き美人レーサー

2015年にFIA-F4選手権でレースデビューし、今年はGAZOO Racing 86/BRZ Raceにも挑戦しているレーシングドライバーの今橋彩佳さん。20歳でモータースポーツの世界に飛び込み、男性に勝るとも劣らない“ホンモノ”の情熱を持っています。

プロフィール
今橋彩佳(いまはしあやか)
福島県いわき市出身。1995年2月生まれの21歳。2015年にmiNami aoYama with SARDでFIA-F4選手権に出場し、レーサーとしてデビュー。今年はFIA-F4選手権と、ネッツ兵庫★トミカ86レーシングからGAZOO Racing 86/BRZ Raceに出場。6月4日、5日に富士スピードウェイで行われた第4戦が86/BRZ Raceのデビュー戦となった。

――現在の仕事内容について教えてください

​レーシングドライバーとして、FIA-F4選手権とGAZOO Racing 86/BRZ Raceに出場しています。FIA-F4は昨年からですが、86/BRZ Raceには今年初めての挑戦です。第4戦のデビュー戦以降は、9月2日、3日の第6戦(富士スピードウェイ)と、10月29日、30日の第8戦(鈴鹿サーキット)に出場予定です。

「ネッツトヨタ兵庫さんとタカラトミーさんにご協力いただき、86/BRZレースにデビューできました。決勝レースが楽しみですね」と予選前に話す今橋さん。爽やかな笑顔を見せてくれた

また、地元のいわきでは、あらゆるクルマが集まるイベント「いわき オールジャンルモーターフェス」の実行委員もしています。このイベントは毎年開催しており、私はドレスアップカーの担当。参加車両の選考や会場内の配置などを行っています。

――なぜレーサーを目指そうと思ったのですか?

子供の頃、テレビで偶然レースを見たときに、“なんか知らないけどカッコイイ”と思いました。それから自分なりにモータースポーツを調べたのですが、実は一番興味を持ったのはドリフトでした。変わったものが好きなので、クルマを滑らせてコントロールするという、特殊性に惹かれました。

――ドリフトがきっかけだったのですか?

そうですね。中学生の時からサーキット内で練習していて、高校3年の頃には本気でD1グランプリ出場を目指していました。でも練習するうちに、“ドリフトに自己満足している自分”に気づきました。私が勝負したいのは、技の華麗さではなくスピード。悩んだ末、ドリフトの道は捨て、レーサーの道を歩む決心をしました。

――どのようにして、レーサーのきっかけをつかんだのですか?

高校卒業後、国内Aライセンスを取得し、地元のカーショップで働きながら、自分が入れるレーシングチームを探していたのですが、ある時、miNami aoYama Projectのオーディションの話を聞きました。「女性レーサーを探している」と知り、早速応募しました。

「今年5月末までメカニックとして働いていました。少しでもクルマの知識を高めて、自分でも直せるようになりたいと思ったからです」と今橋さん。写真はカーショップで整備を行っている様子

書類選考やシミュレーターのテストを経て、富士スピードウェイで行われた実車(FIA-F4)による最終テストに参加しました。純粋にレーサーになりたい一心で挑んだ結果、晴れてプロへの第一歩を踏み出せました。

「最終テストが行われた日は大雨。初めて乗るFIA-F4で、走りはめちゃくちゃでした」と今橋さん。FIA-F4選手権のデビューは2015年の第5戦。自己最高位は、2016年の第2戦、岡山国際サーキットの22位

――現在の課題を教えてください。また、それをどのように克服していますか?

普段からのトレーニングに加え、月に2回、水戸にあるフィットネスクラブにも通う

また、ドライビングテクニックに課題を感じています。レース中、スムーズな操作を意識しているのですが、バトルでボルテージが上がると、ドリフト仕込みの急ハンドルなどのクセがつい出てしまうことが…。このクセを早くなんとかしたいですね。

「86は、FIA-F4やドリフトマシンのように、勢いまかせでハンドルを切っても反応してくれません。また、アクセルとブレーキももっとメリハリをつけたいですね」と今橋さん

――初めての86/BRZ Raceの感想を教えてください

ほぼノーマルに近い状態で走るので、ハンドル、アクセル、ブレーキをしっかり操作しないとクルマが曲がってくれません。キビキビと動くFIA-F4とは全く逆ですね。でも、だからこそ、基本に忠実にしっかりとテクニックを磨けるレースだと思います。

今回の86/BRZ Raceのクラブマンシリーズには79台がエントリー。決勝は予選タイム上位の決勝Aレースと、下位の決勝Bレースに分かれて争われる。今橋さんは予選で2分09秒423のタイムで上位進出が決定。しかし「コースに出たタイミングが悪くて、満足のいくアタックができませんでした。本当は8秒台を狙えましたね」と悔しさを話してくれた

また今回走ったことで、自分の課題が浮き彫りになりました。タイヤの使い方や86の走らせ方などをもっともっと研究し、上位に食い込みたいですね。そのためには、まずは予選で上位グリッドを獲得することが大切だと思いました。

決勝Aレースは雨。今橋さんは31番グリッドからスタート。「86のシェイクダウンテストが雨だったので、今回のレースには自信がありました。とにかく冷静さを心がけ、少しでもタイヤに熱が入るように走ったところ順調にポジションアップができました」と今橋さん。結果は23位。初めてとは思えないデビューレースだ

――​レ​ーシングドライバーのやりがいや魅力を教えてください

レース中は喜怒哀楽がはっきりと出るので、もしかしたら生きている実感を強く感じられる仕事かもしれませんね。負ければ当然悔しいですが、勝てばチーム全員が喜んでくれるので本当にうれしいです。この喜びがやりがいに直結しますね。

――レーシングドライバーとなって、ご自身にどのような変化がありましたか?

母からレーシングドライバーになることを反対されていたのですが、昨年の富士ラウンドに招待したところ、私の走る姿に感動してくれて、逆に応援してくれるようになりました。私自身も、心細い中でのスタートでしたが、今では堂々と胸を張って戦えるようになりました。

兄弟や親戚などモータースポーツを全く知らない人たちも興味を持ってくれるようになりました。この勢いでモータースポーツ好きがもっと増えてくれればいいなと思っています。

ネッツ兵庫★トミカ86レーシング参戦発表会より。このとき今橋さんは「女性を感じさせない力強い走りをしたいです」と話したが、今回のレースでその実力を証明した

――今後の目標を教えてください

スーパーGTのドライバーになることです。簡単ではありませんが、しっかりと実力をつけて、勝てるドライバーとして選ばれたいです。GT300に必ずデビューします! また、ニュルブルクリンク24 時間レースにも出てみたいです。

「86は楽しいクルマですね。普段使いに1台欲しいかも(笑)。走り方もだんだんわかってきたので、レースだけではなくラリーにもチャレンジしてみたいですね」と、モータースポーツへの探究心が尽きない今橋さん

――お休みの日は何をしていますか?

洗車をしたりドライブをしたりと常にクルマと一緒です。それからサーキットに行き、ドリフト走行を思いっきり楽しんでいます。女の子らしいことはあまりしてないかも(笑)。

プライベートではR34スカイラインに乗る今橋さん。「高校を卒業したら何に乗ろうかと調べていたら、R34が一番カッコいいと感じました。直線的なスタイルに惹かれたんですよね。欲を言えばGT-Rが欲しかったのですが、あまりにも高価なことと、ドリフトも楽しみたかったので、FRのスカイラインを選びました」

――理想のドライブデートを教えてください。また、その時彼氏が気をつけることは?

海沿いをひたすらロングドライブしたいですね。自分のスカイラインだったらもちろん私が運転しますが、彼氏のだったら横に乗っているのもいいですね。でもそのうち「運転代わって」ってなるかも(笑)。

運転してくれるなら、特にブレーキングに気をつけてほしいです。ペダルを強く踏んで“ぎゅっ”って停止するのはやめてください(笑)。運転はとにかくデリケートに!


純粋に速さを求め、自分の実力でレーシングドライバーのステップを登り始めた今橋さん。クルマへの思い入れも、男性以上のものがありました。数年後には必ずスーパーGTに乗れるよう応援していますよ!

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road