大型ダンプ、パワーショベル、ホイールローダー… 働くクルマを乗りこなす“美人土木系女子”

美女とパワーショベル、なんとも斬新な組み合わせですが、この女性は決してモデルではありません。今回の主役、岩澤千里さんは大型ダンプのドライバー兼重機オペレーターとして約15年のキャリアを持つベテラン。なんと18歳から建材の現場でバリバリと仕事をこなす、生粋の土木系女子なのです。

プロフィール
岩澤千里(いわさわちさと)
昭和57年生まれ。神奈川県横浜市出身。平成13年4月、父の前島延壽さんが経営する前島建材に入社。以来15年にわたって、配送と営業を担当している。会社内での愛称は「ちーちゃん」。

――現在の仕事内容を教えてください

大型ダンプを運転し、砂や砂利を運んでいます。山や港に積みに行き、当日または次の日までにお客様のもとに届けます。積み込みや重機の運転も私の仕事です。会社に戻ってきたら伝票整理や請求書などの事務仕事を行い、夕方に帰宅するのが1日の流れです。以前は1日300kmぐらい乗っていましたが、最近はだいたい150km。横浜を中心に神奈川県内を走っています。

前島建材はその名の通り、建築現場で使う様々な建材を販売する会社。敷地内には販売用の砂利が置かれています

――この仕事をすることになったきっかけは何ですか?

父親が経営している会社ということもあり、中高生の時から会社に足を運んでいたのですが、その当時働いていた女性ドライバーから話を聞いたり、隣に乗せてもらったりしているうちに憧れを持ち始めました。

もともと乗り物が好きだったこともあり、高校生の時に原付、中型二輪免許を取得。18歳で普通免許を取得し、20歳の時に大型免許を取得しました。重機を運転できる免許も持っています。

トラックや重機の整備も岩澤さんの仕事。タイヤ交換やオイル交換なども難なくこなします。整備技術は父親から習得

――やりがいを感じるのはどんな時ですか?

配達先でお客様に「ありがとう」と言われた時ですね。「女性なのにこんな大きなクルマを運転してすごい」と言われるのもうれしいですね。

また、トラックドライバー同士のコミュニケーションも楽しいです。県内のドライバーのほぼ全員とつながっているので、いつもアマチュア無線で誰かと会話しながら走っています。

トラックドライバーとすれ違う際に、手を上げてあいさつする岩澤さん。人気者の岩澤さんはトラックドライバーの間でも知られた存在です

――この仕事の大変なところを教えてください

免許取りたての頃は、マニュアル車を乗りこなすのがとても難しかったです。重さによってクラッチやギアを適切に操作しないとクルマに変なクセがついてしまい、故障の原因になることもありました。また、特に怖かったのが荷物を積んだ状態での坂道発進です。

――どのように克服したのですか?

父親から「クルマに一番優しい操作」を叩きこまれました。コツはクラッチをつなぐ瞬間のアクセルワークで、その時の車重を考慮しながら半クラッチを使う時間を最小限にし、ショックを減らします。5年くらい乗ってようやくコツをつかめました。

今ではどんなトラックも乗りこなす自信がありますが、雨が降ったぬかるみでハンドルがきかなくなったことやタイヤが沈んだこと、崖から落ちそうになったこともありました。初心者がダンプを運転するのは大変だと思います。

――女性ならではの苦労話はありますか?

この業界は基本的に男社会なので……。20歳そこそこで大型ダンプに乗り始めて、いろいろありました。若い頃は今より男性従業員もいたのですが「負けたくない」「頼みたくない」という気持ちが強く、何でも自分でやっていました。負けず嫌いでしたが、すごく勉強になりました。

――仕事で乗っているのはどんなクルマですか? また、その中でお気に入りのクルマはありますか?

毎日運転しているダンプは日野の10トン(グランドプロフィア)で、たまに2トン(デュトロ)も運転します。重機はパワーショベルやホイールローダー、フォークリフトなど、いろいろです。

思い入れがあるのはやっぱりグランドプロフィア。新車で購入し、9年乗っていますが大好きです。発進時のみクラッチを使用するセミオートマ仕様で、女性に優しいトラックです。でも、そろそろマニュアルに乗りたいなあと思っています。

右のダンプが岩澤さんの相棒、グランドプロフィア。実車の迫力は相当なものですが、車体の大きさに対する慣れは意外と早かったそう
写真はパワーショベル。重機の免許は大型免許取得とほぼ同時期に取得。重機の運転は、頭で考えるより体で覚えるものというのが岩澤流
積み込みの際に活躍するホイールローダー。自身がトラックドライバーということもあり、相手のドライバーが運転しやすい積み方を心がけています

――今後の目標を教えてください

常に無事故でいること。これが目標です。公道も構内でも、大型は事故が起きると被害が大きくなってしまいますから。また、言いたいことははっきり言って楽しく仕事を続けること。目標というわけではありませんが、もっともっと女性がこの業界に入ってきてほしいですね。

岩澤さんは4人兄妹で、うち3人は女性。しかも、3人とも前島建材に勤めています。右端がお姉さんの紗織さん(営業部長兼2トントラックドライバー&重機オペレーター)、真ん中が末っ子の楓さん(受付兼2トントラックドライバー)。テレビや雑誌などのメディアにも取り上げられている土木系美人3姉妹です

――お休みの日は何をしていますか?

息子が全寮制のレーシングドライバー養成学校に通っているので、月1回の頻度でレースの応援に行っています。サーキットまでの移動はアルファード。みんなで乗れる大きなところが気に入っています。

現場でできることは岩澤さんも手伝う。休みが日曜日の岩澤さんにとって遠方への応援は決して楽ではありませんが、家族全員で息子さんを応援。愛情を注いでいます

男勝りに大型ダンプを転がす岩澤さんですが、素顔はやっぱりママ。「子供のためにも頑張らなくちゃ」と明るく話してくれるその表情からは、公私ともに充実していることがうかがえます。これからも素敵な笑顔で現場を和ませてくださいね。

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road