新しい価値観を提供するフロアマットプロデューサー

自動車用フロアマットメーカー、株式会社プレシャスの代表取締役を務める青木史枝さん。同社がリリースするオリジナルフロアマットは、従来のフロアマットのイメージを覆す明るいカラーや個性的なデザインが評判を呼び、人気を集めています。聞けば青木さんは自動車業界での豊富な経験を活かして同社を立ち上げた、たたき上げの社長とか。さっそく青木さんの素顔に迫ってみました。

■プロフィール
青木史枝
トヨタやBMWのメーカー系ショールーム勤務を経て、外車ディーラーに転職。2008年に株式会社プレシャス創業。フロアマットに特化した専門メーカーとして、魅力的な製品づくりに情熱を傾ける。

――現在の仕事内容を教えてください。

株式会社プレシャスの代表として、フロアマットのブランド「Preciousf(プレシャスエフ)」のプロデュースを行っています。販売先は主にカーショップで、自社で企画からデザイン、製造、販売までを行っています。

プレシャスエフのサンプル。「フロアマット=汚れるためのどうでもいいもの」というイメージを逆手にとり、試行錯誤を繰り返しながら、カラー、生地、デザインなどの付加価値を高めていった。機能性や安全性もしっかり確保
プレシャスエフのサンプル。「フロアマット=汚れるためのどうでもいいもの」というイメージを逆手にとり、試行錯誤を繰り返しながら、カラー、生地、デザインなどの付加価値を高めていった。機能性や安全性もしっかり確保

――プレシャスエフの特徴はどんなところですか?

ファッション性と遊び心を大切にしたデザインが特徴で、「F15」「F10」「FE」「FL」の4シリーズを用意しています。お客様はカラーやステッチを自由に組み合わせることができ、好きなロゴを入れることも可能です。また、プレシャスの特許であるスワロフスキーを散りばめたフロアマット「Jewel Mat(ジュエルマット)」の他、MINIやジャガー、BMWなどの車種別専用マットもあります。

オーダーメイドのためのサンプルも充実。透明な箱の中に入っている光りものはスワロフスキー
オーダーメイドのためのサンプルも充実。透明な箱の中に入っている光りものはスワロフスキー
花柄マークの真ん中で光り輝くのがスワロフスキー。2012年に特許を取得しました
花柄マークの真ん中で光り輝くのがスワロフスキー。2012年に特許を取得しました

――会社を立ち上げることになったきっかけを教えてください

ずっと自動車業界で仕事をしてきたので、クルマを見て、触れる機会が多かったのですが、その過程でフロアマットが進化していないことに気づきました。国産車も欧州車もモデルチェンジのたびにどんどんカッコ良くなっていったのですが、フロアマットだけは黒かベージュ、グレーばかり。当時、市販のフロアマットはあまりなく、もっとおしゃれなものが選択肢としてあってもいいのではと思い、起業しました。

――独立する前はどんな仕事をしていたのですか?

大学を卒業してすぐにアムラックス(トヨタ)に入り、その後はBMWレディ(BMW)を経験。ここまでがメーカー系のお仕事で、その後は外車ディーラーで受付や営業事務をしていました。ディーラーを職場に選んだのはそれまでと立場の違う販売という仕事に興味があったからです。

――それらの経験が独立につながったという……

アムラックスやBMWレディの時は考えていなかったですが、外車ディーラーの時には独立すると決めていました。当時は20代で、自分の思いを何か形にしたいとどこかで思っていました。一番エネルギーがあったのでしょうね。

――メーカーやディーラーの仕事で印象的だった経験は?

アムラックスやBMWでの仕事は1人でも多くの(トヨタやBMWの)ファンを作っていくこと。お客様がメーカーに望んでいることはバラバラなので、それに対応していく適応力が求められました。また、アムラックスではトヨタのエンジニアにお客様の声を伝えるという仕事もしていたので、お客様と作り手側の間のようなポジションにいました。ディーラーの仕事は真逆で数字ありき。いかに結果を出していくことかが問われていて、一番大事なのは人と人のつながり。信用力だと思いました。

――今の仕事にプラスになっていると思うことはありますか?

アムラックスの時の経験が一番仕事に活かされていると思います。今もお客様と作る側(工場)の間に立っていますが、どちらも言うことは対極です。それをいかに調理して上手にアウトプットするのかが私の仕事なので、20代前半の未熟な私を採用してくださった会社には本当に感謝しています。

――この仕事をしていてうれしさや楽しさを感じるのはどんな時ですか?

会社をスタートした時に、フロアマットにスワロフスキーというオーストリア製のクリスタルを埋め込んだJewel Matを考案したのですが、ありがたいことにスタートから人気商品になりまして。やはり自分のアイデアが時代とかお客様のニーズに合い、受け入れられたのはとっても大きなことで、すごくうれしかったです。

また、フロアマットはひとつの絵、作品のように思っています。オンリーワンの好きなものをつくっていく楽しみをわかっていただき、それがきっかけで会話が広がったり、ブログに「こんなの作ったよ」とのせてもらったり。本当に小さいことなのですが、今までなかったようなことができたのも私にはうれしいです。新しい価値観でクルマを楽しむことができたのかなと思っています。

インテリアとの積極的なコーディネイトが楽しめるのもプレシャスエフのポイント
インテリアとの積極的なコーディネイトが楽しめるのもプレシャスエフのポイント

――大変だなと思うのはどんな時ですか?

OL時代は大きな会社の信用とブランドに守られ、その中で仕事をしていました。ですが、起業したことによりそれが全くなくなり、結果がすべてに。準備不足や直感的に進めてしまったこともあり、軌道に乗るまでが大変でした。

会社の名前があれば電話1本で済む商談も、1から100の力を使い1人でやりました。もともとフロアマットメーカーで修行していて、既存のお客様がいた場合はもう少しスムーズにできたかもしれませんが、本当にゼロスタートでしたから。いい工場と出会うことができ、そこはクリアできましたが、今度はお客様がいない。そこでホームページを立ち上げましたが、注文が簡単に入るはずもなく、それからはいろいろなショップに営業に行きました。

――他のインテリア製品を展開することは考えていますか?

ご縁があればやってみたいと思いますが、最初に感じたフロアマットがおしゃれではないという自分の思いを大事に、自動車用フロアマットに特化してやっていきたいと考えています。

――これからの仕事で挑戦したいことはありますか?

イベントに行きたいですね。オーナーさんそれぞれの思いがあり、クルマに乗っていると思うので、生の声を聞きに行きたいです。あと、お客様のほとんどは男性なので、女性オーナーに使っていただけるような製品づくりにもチャレンジしたいですね。

イベントの様子。お客様の声に積極的に耳を傾ける
イベントの様子。お客様の声に積極的に耳を傾ける

――休日の過ごし方を教えてください

近場の江ノ島や千葉の鴨川をドライブしています。都内のカフェに行くのも好きです。この間はフクロウのいるカフェに行きました。フクロウ、かわいいですよ(笑)。

都内のフクロウカフェで。最近になってやっとオンオフの切り替えができるようになったそう
都内のフクロウカフェで。最近になってやっとオンオフの切り替えができるようになったそう

今日も明日もフロアマットの未来を描き続ける青木さん。プレシャスエフは単なるフロアマットの域を飛び越え、豊かなカーライフを送るための重要なツールになったと言っても過言ではありません。青木さんが今後、どんなフロアマットを発表し、クルマ好きたちを笑顔にしていくのか、非常に注目です。

(フリーライター:ゴリ奥野)

[ガズ―編集部]

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