夢は全モデルコンプリート!? サニーを愛しすぎたデザイナーのガレージを覗くと…

最近ではあまり見かけなくなったけれど、ひと昔前の新車カタログを開くと、ひとつの車種に対してセダンやハードトップ、クーペ、ワゴン、ピックアップと様々なボディバリエーションが存在していた。そして、それらは仕事からレジャーまでオーナーの求めるニーズにピタリと寄り添い、それぞれ独自の魅力や趣を生み出していたのである。
そんな『昭和の名車』として今でも高い人気をほこるのが、今回ご紹介するオーナーの附田(つくだ)さんが愛して止まない日産B110型サニーだ。

B110といえば、日産の元祖大衆車として人気を集めたB10の跡を継ぎ、2代目として1970年にデビューしたモデル。ボディタイプは2ドア/4ドアセダンと2ドアクーペ、ライトバン、そして1994年まで生産されていたピックアップトラック(B120型)がラインアップされた。なかでも2ドアクーペは当時レースでも使用され、今も旧車ファンの間からは人気が高いモデルである。

「若い頃はずっとバイクに乗っていて、週末の第三京浜保土ヶ谷PAなんかにも頻繁に通っていましたから、正直それほどクルマには興味がなかったし、所有したいという気持ちも特になかったんですよね。でも、たまたま知り合いから『NOx制限に引っかかって、あと半年しか乗れないサニトラがあるんだけど乗る?』と声をかけてもらったのがきっかけで、人生が変わりました」
はじめて手にした愛車がバイクの延長線にあるようなシンプルな構造のサニトラだったということもあり、乗り始めてからはどんどんハマっていったという附田さん。NOx制限に引っかかっていた初代愛車はそのまま手放したものの、その後すぐに現在も所有しているサニトラを入手。ブルー/ホワイトのツートンカラーをはじめ、エンジンからボディまで自分好みに手を加えていったという。

そうしている間にサニー繋がりの友人知人が周囲に増えていき、その繋がりの中でバンや4ドアセダンなど様々なモデルが附田さんのもとに集まってくるようになる。
「仲間が乗り換える時などに“もったいない”クルマが放出されるタイミングってあるんですよね。そんな時に買い手がつかないと『どうにかしたい』と考えちゃうんです。幸か不幸か置き場所が確保できたこともあり、1台、もう1台なら…と気づいたらどんどん増えていっちゃって(苦笑)。このクーペGXも、実は前のオーナーさんが乗り換えるということで、譲り受けた1台なんですよ」

ちなみに「ダサカッコいいクルマが好き」という附田さんの感性としては、サニーのボディバリエーションの中ではサニトラがナンバーワン。逆にクーペは完成されすぎたカッコよさがあるので、気後れしてしまうのだとか。
そんなわけで通常なら手を伸ばすことはなかったはずなのだが、このクーペに関しては書類を見て気が変わったという。
「車検証の初年度登録年月が、自分の誕生年月とおなじ1970年11月だったんです」
もはや運命とも呼べる巡り合わせである。

5年前に入手したこのクーペは、前オーナーの愛情を示すようにコンディションも良好。このコンディションを維持しつつ、各部を自分好みにカスタマイズしながらイベントやサーキット走行を楽しんでいるという。

エンジンは排気量をアップしてFCRのΦ41キャブレターを装着。ミッションは現在サニトラ用の4速をセットしているが、後期用5速ミッションもストックしているため、いつでも積み換えることができる状態だという。

スタイリングは基本的に前期オリジナルをキープしつつも、GXラインに関してはノーマルでブルー1色だったものを日産らしくトリコロールになるように上部を赤に変更。
また、足回りはフロントにAE86用の車高調を使用し、リアはレース用のリーフを組み替えつつローダウン。前後で深さの違うロナール製ホイールを組み合わせることで、当時さながらのクーペらしいスポーティな装いを作り上げている。

そんな附田さんのカーライフをさらに充実させてくれるのが、パーツのストックやメンテナンスからカスタマイズまで、ひと通りの作業を自分でこなす秘密基地として3年前に手に入れたガレージの存在だ。

「このガレージはクルマやパーツを収めておくだけでなく、いろんな創作の場にもなっています。例えばヘッドカバーを蓋にしたツールボックスだったり、ラジエターやキャッチタンクなども自分でデザインして作っていますよ」
美術大学を卒業し、工業デザインを仕事とする附田さんにとって、オリジナルデザインのメタルワークはお手のもの。ボール盤や溶接機なども備えていて、既存にないパーツや工具などを自作することもあるという。

例えば、13インチなど比較的小径なタイヤを履くサニーだけに、自分でもタイヤ交換ができるようにと作った手動式タイヤチェンジャー。このチェンジャーを作ってしまったことによって、手軽さからタイヤホイールのストック数が急激に増加しているのだとか。

また附田の『ツク』と、誕生日である11月17 日の数字4ケタを掛け合わせて作った『ツクモータース』というオリジナルロゴも、デザインセンスと発想力を感じさせる。
そして、附田さんの自作魂は、このガレージが隣接する自宅にもおよぶ。なんと、屋根に設置されている雪止めまで、みずから製作した作品なのである。

もともと所有していたサニトラやこのクーペGXに加え、4ドアセダンやバンなど、現在では9台を所有している附田さん。
「サニーってカスタマイズのベースとしてはかなり優秀で、走らせても面白いしデザインも遊べる自由度が高いんですよね。だから1つのスタイリングで作って満足するのではなく、あれもこれもって欲張ってしまうんです。その時に思い描いたサニーがすぐに作れるように、という気持ちもあって手元に何台もストックしちゃうんですよね。もっとも、手に入れたクルマに愛着が湧いてなかなか手放せないっていうのも実際のところですけど(笑)」

ちなみに、今までに唯一所有したことがないのが2ドアセダン。あくまでもコレクターではないと言い切る附田さんだが、随一のB110サニーファンとしては、このガレージに全バリエーションが並ぶ光景を密かに思い描いていることは想像に難くない。

そして、そんな附田さんの溢れるB110愛は、みずからサニーのイベントを企画するほどにまで高まっている。毎年行われるサニーの日(今年は3月8日に開催)はサニー好きの仲間と共に開催していて、全国から多くのファンが詰めかけるミーティングだ。
カスタマイズだけでなく普段から乗って楽しめるB110サニー。その楽しみを同じ趣向を持つオーナー間で共有することもまた、附田さんにとってB110サニーの楽しみ方のひとつというわけだ。

この愛車のエンジン音を動画でチェック!

(文:渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)

[ガズー編集部]

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