「旧車だからと遠慮することはない」若い頃の思い出カスタムを自由に楽しむカリーナ1600GT
青春時代の楽しい思い出が詰まったクルマたち。それから月日が流れ「またあのクルマに乗って楽しかった思い出に浸りたい」という思いから、当時のクルマを改めて手に入れたという旧車オーナーさんは少なくない。
そして、欲しかったクルマを手に入れた後は、当時のオリジナル状態に戻すことに注力するひと、ガレージに納めて眺めるひと、自分好みにカスタムを楽しむひとなど、その楽しみ方はさまざまだ。
「子供の頃に持っていたぬいぐるみがたまたまオークションに出ていたら、懐かしくて買っちゃうでしょ? それと同じような感覚で『若い頃に2台乗ったなー』と懐かしく感じたカリーナをついポチッとしたんだよ」
そう気さくに話してくれた新潟県三条市在住の宮腰保男さん(62才)は、免許を取得してからセダン系を中心にいろいろなクルマを乗り継いできたクルマ好きなオーナーさん。
そして20年前に“懐かしいオモチャ”を手に入れる感覚で初代カリーナ1600GT(TA12)を購入し、楽しく乗っていた頃の仕様にカスタムしつつ、今の時代の機能パーツも取り入れることによって、気軽で快適な旧車ライフを楽しんでいるという。
「免許を取って最初はハードトップのカリーナSR(TA17型)を買ったけど、それが3ヶ月しないうちにスクラップになって。それで友達のお兄さんが乗っていたTA12型のカリーナを譲ってもらったんですよ。
これが1台目のTA12で2年くらい乗っていたんだけど、橋の欄干に負けて廃車になってしまって。それでも2ドアセダンというのが気に入っていたので、近所のクルマ屋さんで売っていた同じTA12を買いました。ボディカラーもいっしょです。
ただ、この2台目は1750ccにボアアップしたせいか2年くらいでエンジンブローしてしまいましたね(苦笑)。当時はとにかく週末は夜通しでクルマ遊びをしていた時代でした」
クルマ遊びが一番楽しい20代前半の青春時代に、2台続けて乗るほどお気に入りだったのがTA12カリーナだったという宮腰さん。その後もコロナ1800SL(RT102)やマークⅡ(MX41)、クラウンマジェスタなどセダン系のクルマを乗り継ぎ、MR2(AW11)を所有していたこともあったという。
「そんなかんじでカーライフを送っていたんだけど、20年前にインターネットオークションでTA12型のカリーナが50万円で出品されていたのを見つけて、つい懐かしくなってポチっとしたんですよ。競り合う相手はいなかったから、すんなり買うことができたかな。
出品していた愛知のクルマ屋さんによれば、元の持ち主のおじいさんが亡くなって納屋に入っていたものを処分してほしいと頼まれたものだったみたいで、オルタネーターと足まわりがダメなくらいで程度はすごいよかったんだ。外装も前オーナーが全塗装したんじゃないかな」
そうして2002年に宮腰さん愛車となったのが、1973年製の初代トヨタ・カリーナ1600GT(TA-12MQ)の2ドアセダン。
「この時代の旧車は、たくさん手をかけたところで値段が上がるわけじゃないじゃないですか。だから、どうせなら懐かしいカリーナとの思い出に浸ろうと思って、40年前に乗っていた仕様を再現しているわけです」
現在は、普段乗りにER34型の4ドアスカイラインを所有していて、このカリーナは基本的にイベント用とのこと。そのイベント参加が宮腰さんの中ではとても大切な時間なのだという。
「カリーナは友達に会うためのアイテムだね。ほら、職種とか生活によって付き合いって変わってくるじゃないですか。以前は土曜日でも夜中まで仕事しているから飲みにいくこともないし何もできなかった。そうなるとイベントに行くくらいしかないじゃない。現地に行けば市街や県外を問わずおもしろいお友達に会えるからさ」
そんなこだわりの当時仕様の象徴ともいえるのが、ダルマセリカやカリーナなどのGTグレードに装着されていた“GTホイール”だろう。しかも、当時の仕様に近づけるために、ホイールの修理や特殊加工にも対応する老舗ホイールショップ『鎌ヶ谷ワイドホイール』に依頼して加工も施しているという。
「そうそう、GTホイールが目立つようにって思ってドラムブレーキのカバーを青色に塗ったんだった。それから、タイヤは当時の復刻版でアドバンのタイプDを履いています。タイプDというのが大事なんだ。この復刻版タイヤが発売されたときは涙がでるほど嬉しかったね」
「外から見てイチバン好きなのはGT専用のグリル。真ん中のモールがステンレスなのはこのGT専用だけでちょっとめずらしいんだ。他のグレードは銀色の塗装がしてあるだけだから。
あとCピラーのGT専用エンブレムは、純正品を持っている人から借りて鋳物屋さんに型を作ってもらって鋳造して、それをメッキ屋にメッキ塗装してもらって作ったんだよ。なにせ三条は金物産業の街だから、その辺はいくらでも伝手はあるんですよ。オレ自身も16年メッキ屋したあと25年プラスチック屋やって、今は金型屋にいるから金物系は自分で作っちゃいます」
この“地元が金物産業の町”というステータスは、純正部品が次々と廃盤になっている旧車オーナーにとってはとても心強いだろう。実際、ほかにもエンジンルームに使用しているボルトなどワンオフの金物パーツが各所に見られた。
「当時仕様にするためにタコ足は買い直したし、エンジンカバーはBNR34の純正色に塗装しました。あとは、ブレーキがあまりにも効かなくて床が抜けそうになったから、マスターバックはAE85用に交換したよ」
そう、宮腰さんは当時仕様のカスタムだけではなく、安全に走るための機能や、壊さずに長く乗るためのパーツ選びにも力を入れているのだ。
「いくら当時仕様に戻すといっても、自分の命を守ることには必死なんですよ。5年くらい前に地元の旧車イベントの帰り道にトンネル内で故障して、後ろから大型トラックに突っ込まれてしまったという方もいたからね。オリジナルや当時にこだわるだけじゃなく、電装系を新世代のものにしたり、ヘッドライトをHIDにしたりと、やれることはやってます」
「ハンドルは40年前の当時仕様。シートは20年近く我慢していたけど劣化してカバーが切れちゃったりしたから、この年代に似合いそうなレカロのバケットシートに交換したんだ。あとはバキュームメーターに油温計、パワステも追加してるよ。
それから、スイッチ関係って何回も押したら壊れるし、ワイパーも無駄に動かす回数が減らせればいいなと思って、間欠ワイパーやオートライトも使えるようにしたんだ。年寄りはラクしたいだけですよ(笑)」
そんな宮腰さんはカリーナとの今後について、どう考えているのだろうか。
「正直、あとはパワーウインドウが欲しいくらいで、特にイジりたいところはないですね。それにあんまりいじると参加ルールの厳しい糸魚川の旧車イベントに出られなくなるから。
車検はずっと継続しているし、これからも維持していきたいと思っているけど、これを残したら家族に迷惑でしょ。このクルマの前の持ち主も納屋に5年以上置きっぱなしで家族が処分に困ってクルマ屋さんにお願いしたワケだしね。だからオレが生きているうちには処分しなきゃいけないと思ってます。子供の迷惑になるからね」
「俺の周りにはクルマを大事にしすぎて生活を犠牲にしてまでつぎ込む人がいっぱいいるけど、ウチは仕事生活家庭があってオマケでやっているだけだから。気楽な旧車ライフを送っているわけです(笑)」
取材中、終始快活に笑いながら楽しそうに応じてくださる姿が印象的だった宮腰さんを見ていて感じたのは「旧車は大事にキレイに乗らなきゃいけない」といった固定観念にはとらわれず、自由に楽しんでいいんだ、という強い想いだ。
宮腰さんの愛車カリーナ1600GTは、それを実践しているからこそ、青春時代のカスタムに加えて現代パーツも使った“改良”を加えながら楽しむことができるのだろう。
そして、今日も青春時代の思い出として、そして友達とのコミュニケーションツールとして彼のカーライフを彩り続けている。
取材協力:万代テラス
(⽂: 西本尚恵 / 撮影: 金子信敏)
[GAZOO編集部]
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