第二の人生の相棒として選んだ愛車は、40年越しの夢だったロータリーエンジン搭載車FC3S

群馬県の渋川スカイランドパーク駐車場で開催された『ディーズガレージオータムフェスティバル』。車種や搭載エンジンなどの制限が一切ないうえ、事前エントリーが不要ということで、朝から小雨が降る生憎のコンディションながらも全国各地からバラエティに富んだマシンが集合した。

参加者それぞれが自慢のマシンを披露しながらクルマ好き同士の交流を図っていたが、そのなかでも際立っていたのが新井建雄さんのFC3S型マツダサバンナRX-7
なんといっても驚くべきはそのコンディションで、ボディはもちろん劣化が表れやすい燈火類やモール類に至るまでまるで新車のような美しさを保っているのだ。さっそくオーナーを直撃して詳細を伺ってみることにした。

現在61才の新井さんが、このFC3Sを手に入れたのは1年前のことだという。
「たまたまインターネットで三重県のショップにこのクルマがあることを知って、すぐに埼玉県から現地へ向かいました。88年式前期最終モデルのGTXグレードで、走行距離1万7800kmのワンオーナー車。もちろん安くはありませんでしたが、若いころからずっと欲しいと思っていたクルマだったので、一大決心で購入することにしました」

たしかに前期ワンオーナーの低走行車とは、この機を逃したらまたと出会えそうにない出物ではある。とはいえ80年代スポーツカーといえばほかにも選択肢があるはずだが、新井さんがそこまでFC3Sにこだわったのはどんな理由だったのだろう?

「キッカケをたどっていくと、小学生のときに見たマツダ・コスモAPということになりますね。もともと機械好きでクルマの仕組みなどを調べるのが楽しみだったのですが、コスモに搭載されているのが世界でも珍しいロータリーエンジン(以下RE)ということに興味を持ったんですよね。中学生になってからは、図書館で学術書を借りてREを勉強していた記憶があります」

なるほど。となれば、免許をとったらやはりRE搭載車が欲しかったはずだが、意外なことにこのFC3Sが新井さんにとって人生初のREマシンなのだという。

「最初の愛車はアメリカに留学していたときのフォード・マベリックですが、帰国後に日本の免許を取得して欲しいと思っていたのがFC3Sでした。何度もディーラーで試乗もさせてもらったのですが、予算的にどうしても無理で断念してしまいました」

「その時に買ったのはホンダのプレリュードで、その後は仕事の都合で海外生活を長くしていた影響もあって、帰国後にはフォード・マスタングGTにターボとNOSを追加したマシンでドラッグレースを楽しんでいた時期もありました。紆余曲折はありましたが、退職を機に第2の人生をスタートさせるにあたり、FC3Sが改めて欲しいと思って探していて、めぐり逢ったのがこの個体だったわけです」と新井さんは約40年越しの思いを実現した経緯を説明してくれた。

FC3S型のマツダサバンナRX-7のデビューは1985年。ハコスカの連勝記録にストップをかけたことで知られる名車サバンナRX-3の血統を受け継ぐロータリーエンジン搭載のスポーツモデルで、RX-7シリーズとしては2代目のモデルとなる。

新型プラットフォームにより初代のSA22C型から一新されたボディは、リヤサスペンションに独立懸架方式のセミトレーリングアームマルチリンクを採用。フロントブレーキには日本車としては初となる対向4ポットキャリパーを装備していた。

インタークーラーターボ付きの13B-Tエンジンはフロントミッドシップに搭載され、理想的な50:50の重量配分を実現。新井さんの愛車である前期モデルのカタログ最高出力は185ps、最大トルクは25kgmと謳われていた。

そんなFC3Sの魅力を、新井さんはこう語ってくれた。
「なんといっても直線基調のスタイルがいいんですよね。人気としては後期モデルなのかもしれませんが、個人的には後期テールの方が好みですが、バンパーやドアのモールも前期(黒いモール)はスタイルが引き締まって見えるのがいいんです。このGT-Xはもっともスポーツ寄りのグレードで、ビスカスLSDとアルミボンネットを装備しているんですよ」

それにしても新井さんのFC3Sは、まさに珠玉といえるほどの素晴らしいコンディション。純正シートにはヤレも見られず、純正オーディオや各種スイッチはしっかり機能するだけでなく使用に伴う文字のかすれなどもほとんどない。
前オーナーが新車当時に追加したオプション類も装着されているが、なかでもハッチバックのダンパー部の照明はかなりのレアものといえるのではないだろうか。

「イベントやミーティング参加で、この1年間での走行距離は500kmくらいです。購入してから自身で手を加えた部分は、ダッシュボードのトレー部分の補修です。カスタムとしてはツライチスタイルを狙ってホイールを変更しましたが、当時モノにこだわってエンケイのRP01を選びました。サイズはオプションとして設定されていた16インチ。タイヤは純正採用されていたポテンザRE-71の最新モデルRE-71RSを組み合わせました。そのほかマフラーも当時モノのHKSリーガルなんですよ」と、新井さんは笑顔で補足を加えてくれた。

そんな新井さんの愛車は、このイベントにゲストとして来場していた土屋圭市氏の目にも留まり、みごとトロフィーまでゲットする結果となりました。

さて最後にお伝えしたいのは、新井さんが現在準備を進めている魅力的なプロジェクトについて。
「じつは来年3月のオープンに向けて、クルマ好きが気軽に立ち寄れるカフェの準備を進めているところなんです。店名は“12マイル”で、場所はさいたま市緑区になります。店内にはクルマの展示スペースも予定していて、このFC3Sも展示候補のうちの1台です」というから、機会があれば改めてお店にも遊びに行ってみたい!

取材協力:ディーズガレージ

(⽂: 川崎英俊 / 撮影: 金子信敏)

[ガズー編集部]

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