初愛車として選び38年を共にしてきた『史上最強のスカイライン』。その「かわいい」ポイントとは?

世界的な絶版国産モデルの人気高騰を受けて、以前に比べると名車&珍車(!?)を街中などで見かける機会も増えてきている。この愛車広場の記事を楽しみにしていただいている方のなかにも、そんな昭和〜平成の絶版車オーナーを夢見ているひとがいるかもしれないが、そこで心配なのがトラブルや維持費なのではないだろうか。

今回お話をうかがったのは、群馬県の渋川スカイランドパークで開催された『オータムフェスティバル2021』に参加していた、1983年式の日産スカイラインターボRSオーナーの吉原和彦さん。なんと新車で購入して以来乗り続けてきたワンオーナー車で、愛車とともに歩んできた38年間のエピソードは、旧車に興味を持つクルマ好きにとって、とても興味深いはずだ。

現在56才の吉原さんのクルマ人生で、最初の愛車となったのがこのスカイライン。購入したキッカケは、知り合いのディーラーマンからの勧めだったという。

「18才で免許をとってクルマを探していたところ、ちょうど家族のクルマでお世話になっていた日産ディーラーの担当さんがやってきて『これがいいんじゃないか』と勧められたのがデビューしたばかりのターボRSでした。当時"日本で1番速いクルマ"という売り文句が購入の決め手になりましたね」

やはりいつの時代も、若者のクルマ選びで重要なポイントとなるのが“速さ"や“メカニズム"、“スタイル"などのスポーツ要素ということか。そんなわけで、まずは若き日の吉原さんが選んだスカイラインターボRSとはどんなクルマなのかを簡単に紹介しておきたい。

『ニューマンスカイライン』『鉄仮面』などともと呼ばれるR30系は、スカイラインシリーズの6代目として1981年に登場。そのトップスポーツモデルとして1983年に追加されたのがターボRSだ。搭載されるエンジンは、2ℓ4気筒DOHC4バルブターボのFJ20ET。最高出力190psは歴代スカイラインで最高となることから、ターボRSには“史上最強のスカイライン"のキャッチコピーが与えられている。
ちなみに吉原さんの乗るのは前期型で、"鉄仮面"の愛称で知られる後期モデルとはフロントマスクとテールデザインなどが異なっている。

このDR30スカイラインターボRSの登場で、日産はハコスカ以来となるワークスでのレース復帰を果たしているが、奇しくも吉原さんが日産ファンとなったのも少年時代に見たレースがキッカケだったという。

「たぶん小学生のときだったと思いますが、テレビで中継されていた日本グランプリが日産車に憧れるようになったキッカケだったと思います。黒澤元治選手がドライブしていた黄色いR382が、なにしろカッコよかったことを覚えています」

その後は当時ブームとなっていたスーパーカーを、カメラを持って追いかけていたというが、時とともに吉原さんの憧れの対象はレーシングドライバーへと移り変わっていったという。その対象はというとDR30購入後はシルエットフォーミュラやグループAで活躍した“日本一速い男"星野一義選手、そして現在は“ドリキン"土屋圭市選手だ。

「ビデオマガジンでの陽気なキャラクターとドリフトのカッコよさで好きになってから、土屋さんが参加するイベントをこのDR30で追いかけ続けています。このイベントに参加することにしたのも、もちろんゲストとして土屋さんがやってくるからでした。基本的には雨天走行をしないのですが、土屋さんに会うためならしかたありませんね」と、この日の朝は雨天だったにもかかわらず参加したとのこと。

そんな吉原さんの愛車に加わり続けているのが、ルーフの内張やステアリングなど合計5ヵ所の直筆サイン。リヤシートも土屋氏オリジナルの大判タオルで飾るなど、車内は土屋圭市一色という状態になっている。

吉原さんの愛車へのこだわりは、オリジナルのスタイルをキープすること。直射日光を避ける車庫保管で雨天走行も避けながら維持されたボディは、フェンダー類は再塗装しているものの、ボンネットやルーフ、トランクは新車からのものとなっている。ディッシュタイプの15インチアルミホイールももちろん純正で、センターキャップもすばらしいコンディション。リムのガリ傷などもまったくない状態だ。

そんななかでこだわりを持って投入されている社外パーツは、柿本改のマフラーとインテリアのアクセントにもなっているレカロのリクライニングタイプシート、アナログカセット対応のオーディオユニットくらいとなっている。

現在走行距離は24万km。好調を維持し続けるためのポイントや苦労について尋ねてみると、吉原さんは次のように答えてくれた。

「古いクルマには共通だと思いますが、やはり一番苦労しているのはパーツがどんどんなくなっていることですね。メンテナンスはすべてディーラーで行っていますが、新車から37年間、すべての点検と修理の記録を残しています。こうすることでどの部品をいつ交換したのか把握できるので、トラブルを未然に防げているのかもしれません」

「あっ、こんなものもすべてありますよ」と披露してくれたのが、37年分の自動車税納税証明証だった。

これまでの大がかりなメンテナンスとしては、90年に駆動系のリフレッシュとしてミッションオーバーホールとクラッチ交換、デフをニスモ製のLSDに変更。2000年にはエンジンのオーバーホールを行い、2年前にはタービン交換とエアコンの修理を行っている。

なかでもエアコンの修理はかなり大変だったようで、コンプレッサーはリビルド品が入手できたがホース類は廃番となっていたため、使えそうな汎用ホースで対応している。
「ディーラー経由の紹介でしたが、腕のいい電装屋さんのお陰で直りました。といっても年式が古いので、今のクルマみたいには冷えないんですけどね(笑)」

そんな多少の不都合も笑って語ってくれた吉原さん。
37年間も乗り続けるスカイラインターボRSの魅力とはなんなのか。
「ひと言で言うなら、今のクルマにはない“味”なんですかね。たとえばエンジンは最低でも3分間は暖機するようにしていたりと、手間は掛かるのですが、それがまた可愛いというか。単なる機械ではない人間くささのようなものを感じるんです」

「クルマと会話する」とはよく使われる言葉だが、旧車は気温や天候などによる影響が顕著に出やすいもの。それを「かわいい」と感じられる気持ちの余裕も、オーナーには求められるということだろうか。
年々維持は大変になっていくだろうけど、これからも40年、50年を目指して名車スカイラインターボRSとの日々を重ねていっていただきたい。

取材協力:ディーズガレージ

(⽂: 川崎英俊 / 撮影: 金子信敏)

[ガズー編集部]

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