「10年経っても最高のコンディションで!」。人生初の愛車、ホンダ・シビック タイプR(FD2型)は家族の一員となった

人生初の愛車を迎える瞬間がある。生涯、二度と訪れることはない機会であり、特に思い入れのある1台を手に入れられた感動は、何ものにも代え難いはずだ。

今回は、ホンダ・シビック タイプR(FD2型)をファーストカーに迎えた、25歳の男性オーナーを紹介したい。今回のオーナーは、以前にも公開させていただいたホンダ・NSX(NA1)と同一人物である。彼は、ファーストカーであるこのシビックと、増車されたNSXを家族でシェアしながらカーライフを楽しんでいるという。オーナーが所有するシビック タイプRは2009年式の最終型。現在、2オーナー目の個体だ。走行距離は約6万キロを刻んでいる。

初代シビック タイプRの登場は1997年。NSX、インテグラに次いでシビックに追加されたタイプRの「EK9型」は、ホットハッチとして今もなお多くのファンを魅了している。オーナーの「FD2型」は、シリーズ3代目となる。2005年にフルモデルチェンジされ、3ナンバーのスポーツセダンとして生まれ変わったモデルだ。

ボディサイズは、全長×全幅×全高:4540x1770x1430mm。2リッターのDOHC i-VTECエンジン「K20A」は、吸排気効率・圧縮比の向上を追求。さらにヘッドポートの高精度な平滑化や、吸排気管の曲率変更で流体抵抗低減をめざし、最高出力225馬力を発生する。「究極を求める姿勢こそホンダ」と思わせてくれる、こだわりが結集された1台だ。

「エンジンの吹け上がりがすごく良くて、レブリミットの8400回転まで気持ちよく回ってくれます」。

と、オーナー。まずはシビック タイプR(以下、シビック)を選んだ理由を伺ってみた。

「シビックはテレビのCMで目にしてから気になる存在だったんですが、実際に試乗してみたことが選ぶ決め手となりました。実は、他メーカーのディーラーの比較用としてシビックの試乗車が置いてあったんです。これは乗るしかないと思いましたね。他メーカーのクルマは、安定して速く、良いクルマだと思いました。でも、シビックは乗った途端『楽しい!』と感じましたし、尖っているところにも惹かれました。もちろんスタッフの皆さんは自社のクルマを推すんですが、もうシビックしか見えませんでした(笑)。この試乗がなければ、もう1台の憧れだったスカイラインGT-R(BNR34型)を購入していたかもしれません」。

声をはずませるオーナーの様子は、まるでシビックにふれた瞬間のときめきや感慨を追体験しているようだ。そして話の流れは購入の経緯へと移行する。

「高校時代からのアルバイトで貯めた資金を使いました。厳密には入社1年目の冬のボーナスが支給された時点で購入したのですが、初めての愛車を一括で購入するという目標を達成できました。入社1年目にクルマを買って維持するのはこんなに大変なんだと思いましたが、それでもずっと乗っていこうと決めたんです」。

念願のシビック タイプRを実際に所有してみて気づいたことはあったのだろうか?

「オーナーとなってじっくりと付き合っていくうち、このクルマの良さを感じられるようになってきました。ブレーキは、純正でbremboが入っていて効きは抜群です。アイポイントも高く、視界は良好です。けれど、乗り心地は非常に硬いと思います。試乗したときは少し硬い程度かと感じましたが、所有してさまざまな場所を走ってみると、脚の硬さを実感しますね。高速でも跳ねるし、一般道での硬さもすごい。さすが、シビックは脚の硬さが日本一と呼ばれるだけあるなと思いました。しかし、コーナリングはしなやかです。なにより、NSXとは異なり、エンジンがフロントにあるので安心感がありますね(笑)。FFなので、前で回っているタイヤから動きを把握しやすいです。その点、NSXはフロントに何もないので、浮き上がるような不安感をおぼえてしまいます」。

オーナーの愛車遍歴はシビックとNSXの2台だが、人生観を変えたクルマは、他にも存在するのだろうか?

「この2台ですね。確かにNSXの存在は非常に大きいですが、クルマ本来の楽しさはシビックが教えてくれました。ピュアスポーツなのに気軽さを感じられ、軽いフィーリングですごく乗りやすいです。トルクも豊かで、街乗りや渋滞だって平気です。そして4人乗りなので、職場の同期を乗せて出かけることも多いのですが、そういう機会の中で知り合えた仲間もいます。それはシビックがあったからこそできた仲間と言っても過言ではないですね」。

サーキットでの走りが一級品でありつつ、街乗りも難なくこなせる懐の深さをあらためて実感しながら、オーナーのシビックを再び眺める。ほどよく落ちた車高、艶消しのホイールは純正オプションのBBSホイールだ。オーナーに、この個体を選んだこだわりを伺った。

「ボディカラーはチャンピオンシップホワイトにすると決めていましたが、シルバーも造形がキレイに出るので正直迷いましたね。内装はソリッドブラックです。もう1パターンのTYPE Rレッド&ブラックのツートンが一番人気なんですけど、私は飽きのこないベーシックな色と意識してこちらを選びました。そして、純正オプションのBBSホイールを装着している点も重要です。こうして理想の組み合わせを持った個体が出てきてラッキーでした」。

オーナー自らモディファイを加えた部分はあるのだろうか?

「この18インチのBBS鍛造ホイールは、純正オプションとして前オーナーが装着していたものです。ちなみにサイドステップも純正です。オリジナルのスタイルが気に入っているので、交換したい部分を最小限に留めてコツコツとモディファイしました。手に入れてからは、無限製のリップスポイラー、Modulo製のビームライト、ホンダツインカム製のリアディフューザーパネルとマフラーを追加しています。ディフューザーとマフラーのツラが決まっているところが気に入っています。今後はサーキット走行を予定しているので、コンピュータにも手を入れてみたいですね」。

FD2型のシビック タイプRが生産を終了してから10年近くの年月が経つが、部品供給の現状はどうなのだろうか。

「部品は豊富で、シビック(FD1型)との共通部品も多いですよ。K20A型はタイミングチェーンなので、タイミングベルトの交換も不要です」。

オーナーにとって信頼できるショップやメカニックはいるのだろうか?

「シビックを迎えた頃からずっとディーラーです。担当セールスのMさんもクルマが好きで、私のシビックのことをよくわかってくれていますから安心して頼れます。それに、前回のNSXの記事も読んでくれていて、わざわざ電話までかけてきてくれたんですよ」。

憧れのクルマ、ホンダ・NSX(NA1型)が家族の一員となって教えてくれたこと
https://gazoo.com/ilovecars/vehiclenavi/180203.html

信頼できるディーラー、そしてスタッフとの付き合いは、オーナーが愛車を所有するうえで大きな安心材料になるだろう。時には意見してくれることもあり、頼もしい存在だといえそうだ。オーナーと担当セールスの間柄も、よき仲間であることが感じられた。

最後に、このシビックと今後どのように接していきたいかを伺ってみた。

「可能な限り手元に置いておきたいですが、もしかすると結婚や出産のタイミングで手放す日がやってくるかもしれません。4人乗りという強みに期待を抱いたりもしますが、とにかく今はこのシビックと思いきりカーライフを楽しみたいと思っています。10年経っても『なぜこんなにキレイなの?』と驚かれるくらいのコンディションを保ちたいですね」。

冒頭でもふれたが、オーナーは父親と愛車をシェアしている。このシビックもNSXも、彼の父親は大変気に入っているのだという。

「実家へ帰省したときによく乗り換えています。父は普段、オデッセイに乗っているのですが、仕事へ出かけるときはシビックの場合が多いです。やはり軽快さと安心感のあるところが好きなようですね。私よりもアクセルペダルを踏み込みますし(笑)」。

親子のコミュニケーションにも一役買っているというシビック。NSXとともに家族の一員として、これからも可愛がられることだろう。クルマを通して、オーナーとその家族の笑顔が見えてきた気がした。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]