【世界の愛車紹介ドイツ編】ニュルブルクリンクでの走行を楽しむためにチューニングした完全合法仕様のBMW MINI
『モスキート』。
ドイツ在住のベン・プレストさんがそう名付けた愛車は2007年に新車で購入した BMW MINI R56クーパーSだ。
まず目に飛び込むのはそのド派手なカラーリング。自動車メーカーが開発車両を公道で走らせるときに行うカモフラージュにインスピレーションを受け、ラッピングショップと何度も試行錯誤をしながらデザインした。
BMW MINIは、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)が2000年まで製造・販売した流れを引き継ぐ形で2001年よりBMWが生産・販売を行なっている。今回登場するR56は、その2世代目のモデルとなる。ドイツでは2006年から発売が開始され、日本では2007年3月2日から発売されている。
ベースとなるR56クーパーSのスペックを見てみよう。全長3745mm/全幅1685mm/全高1430mm/ホイールベース2465mm/トレッド F:1455mm R:1460mm。車重は若干重めの1210kg。コンパクトな5ナンバーサイズだ。エンジンは直列4気筒1598ccターボエンジンで184psを発揮。キビキビと走るコンパクトスポーツマシンだ。
MINIと言えば、市販されているサードパーティのカスタマイズパーツが多い一方で、最上位のスポーティグレードとしてJCW(ジョンクーパーワークス)がラインアップされていることから、JCWのパーツやアクセサリパーツをチョイスするユーザーも多い。ただ、ベンさんが新車で購入した2007年当時はその頃にはまだR56系のパーツが少なく、また、ベンさん自身がニュルブルクリンクやサーキットでの走行を楽しみたいと考えていたことから、MINIのワンメイクレース「MINI チャレンジ」用のパーツを購入して大改造計画を開始した。
MINIチャレンジとはドイツを中心に開催されていたBMW MINIのワンメイクレースで、ディーラで販売される専用キットを装着することで、オーナーが愛車でレースへ参戦できた人気のシリーズだった。
この『モスキート』号、ロールケージを張り巡らせた風貌から見てもさぞかしハードチューニングを施したモンスターマシンなのだろうと思いきや、実はエンジンはノーマルのままなのだそう。ホイール、リアディフューザー、リアウイング、フロントスプリッター、サスペンション、MINIチャレンジ用ブレーキキットなど、限られた仕様変更だ。
友人のプロのレーシングドライバーから、「あえてエンジンは(馬力を上げずに)ノーマルのままで練習を重ねる方が運転技術の向上につながる」とのアドバイスを受け、エンジンを触るのは最後と決めているそうだ。
非常に厳格であることで有名なドイツの車検システム(TUV)だが、ベンさんはどのようにクリアしてきたのだろう?
「直接TUV検査官のアドバイスを受けながら、パーツを装着するごとに検査を繰り返しました」と誇らしげに語るベンさん。現在の状態になるまでに、ざっと1年半もの時間を費やしたそうだ。その履歴を示す書類や領収書のファイルはとても分厚く、忍耐とかかったコストがしのばれる。
ニュルブルクリンクのノルドシュライフェが大好きなベンさん。この愛車はまさしくその大好きなニュルを楽しく走るためのとっておきの自慢の一台なのだそう。安全を第一に考えてFIAのホモロゲーション入りのロールケージやレーシングシートを入れるという熱の入れようだ。運転席までまだ手が回らないと笑うが、助手席のフットレストはベンさんの力作だ。
まだまだ『モスキート』号の完成までには時間が必要だが、手塩にかけて少しずつ進化する愛車の成長が愛おしくて仕方がない様子だ。さすがに『モスキート』号での毎日の通勤は厳しいことから、普段の移動用のクルマはMINI Oneディーゼルを、またハイスピードドライブ用にはBMW M3 セダンE90 individual仕様を選択する。
ドイツで最も物価が高い都市に住んでいるベンさん。かなり贅沢な趣味なのでは? との問いに、「僕は独身だし、週末にカートに乗りに行く以外はクルマが唯一の趣味だから許されるでしょ?」と笑うベンさん。
隔週の水曜日のアフター5には郊外のスーパーマーケットの広大な駐車場にMINI仲間と集い、愛車談義に花を咲かせるのが楽しみで仕方がないという。年齢や性別を超えたMINI好きの愛車はチューニングありなしに関わらず、各オーナーの思いが詰まったものばかりなのだそう。このグループの仲間とMINIの世界的なミーティングに参加したり、はたまた200数十台が参加する大きなツアーを自分たちで企画をしたりと思い出は尽きない。そんなミーティングのときに作ったステッカーが『モスキート』号のボディには大切に残されている。今も仲間と休暇を合わせ、のんびり景勝地へドライブに行くのを楽しみにしているそうだ。
ライター:池ノ内みどりドイツ在住のモータースポーツジャーナリスト。DTMやFIAユーロF3、フォーミュラE、ニュルブルクリンクやスパ・フランコルシャンなど、ヨーロッパ各地の24時間レースといったメジャーレースはもちろん、VLN(ニュル耐久レース)や欧州内のGTシリーズも取材や撮影を行う。
撮影:ファビアン・キルヒバウアー高校卒業後、ドイツ有名カメラマンのアシスタントを経て2006年より独立。現在ドイツ大手自動車メーカーをはじめ、自動車関連の撮影を中心に、ポートレートやドキュメンタリーの撮影も行う。
[ガズー編集部]
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