1/200台の限定車でNB型にカムバック!2001年式マツダスピード ロードスター(NB8C型)

歴代マツダ ロードスターには、カタログモデルをベースに販売された特別仕様車や限定車が数多く存在する。そのなかで、今回は2代目マツダ ロードスターをベースとした希少な限定車「マツダスピード ロードスター」を所有する34歳の男性オーナーが主人公だ。

マツダスピード ロードスターは、かつて存在していたマツダのモータースポーツ部門を担う子会社「マツダスピード」の名を冠した限定車として2001年5月に発売。生産された台数はわずか200台だった。

ロードスター(NB8C型)の「RS」をベースに、マツダスピード専用エアロパーツ・専用排気系パーツ・特別仕様のインテリア・専用チューニングの足回りなどを装着。専用ボディカラーの「スターリーブルーマイカ」がより存在感を引き立てる。ボディサイズは全長×全幅×全高:3955×1680×1235mm。排気量1839cc「BP-VE型」直列4気筒DOHCエンジンが搭載され、最高出力は160馬力を発揮。6速MTのみの設定になっている。

オーナーのマツダスピード ロードスター(以下、ロードスター)は、現在所有しているスバル レガシィB4 に増車するかたちで2020年9月に迎えられ、およそ8ヶ月が過ぎたところだという。「家族の協力や奥さんの理解があって維持できている」と感謝の言葉をまじえながら、大切な愛車を紹介してくれた。

この個体は2001年式。記録簿によると3オーナー目となるらしい。オドメーターは現在11万キロを刻んでいる。オーナーは通勤の足として乗っているそうだが、納車後からはすでに1万キロを走行していた。オーナー曰く「仕事が終わってまだ明るいときは、オープンドライブを楽しむこともあります」という。

オーナーの幼少時代を尋ねてみると、意外にもそれほどクルマ好きではなかったという。

「友人にもクルマ好きはいたかもしれないですが、私もさほどクルマが好きではなかったので、話題になることもなかったんだと思います」

では、オーナーがクルマ好きになったきっかけとは?

「スバル インプレッサ WRX STiバージョンVI(GC8型)を所有したことがきっかけでした。免許を取得して最初のクルマは、たまたまスバル インプレッサ スポーツワゴン(GF型)だったんです。ところがもらい事故で廃車になってしまい、次は思いきってインプレッサ WRX STiバージョンVIにしました。見た目のかっこよさから選んだクルマでしたが、実際に乗ってみるととにかく速くて、加速のGでシートに体が押しつけられる体験が忘れられません。“クルマってすごい!“と感動した初めてのクルマです。それ以来、クルマを購入するときはWRXを基準に選んできました」

人生観を変えたクルマは、過去に所有していたインプレッサ WRX STiバージョンVI。そんなオーナーの愛車遍歴を伺ってみた。

「インプレッサ WRX STiバージョンVI所有当時は20歳だったと思うんですが、維持費で給料がほとんど飛んでいました。その後、故障が続いて手放してしまいましたが…。当時はクルマの知識があったわけではないので、適切なメンテナンスはできていなかったかもしれません。その後はダイハツ ミラ バンに乗っていましたが、スポーツカーの楽しさが恋しくて1台目のマツダ ロードスターRS(NB8C型)の初期型を購入しました。WRXと異なる魅力が多くて楽しかったですね。10年近く乗っていたと思います。それからスバル レガシィB4(BE型)に乗り換えました。レガシィB4はフルチューンに近い状態まで手を入れたので、レジャー専用として温存し、通勤用にスズキ アルトワークスを増車したところで転勤が決まり、通勤にクルマは不要なので売却しました。転勤が終わって帰郷し、再び通勤用としてスズキ アルト バンを増車しましたが、やはり普段でも楽しいクルマに乗っていたいと思い、このロードスターを増車しました。アルト バンは今、弟に乗ってもらっています」

同じスポーツモデルでもWRXと異なるキャラクターのロードスターには、オーナーが初めて出会う魅力があったという。

「ロードスターはシンプルさが魅力ですよね。電子制御も必要最小限ですし。NB型はABSが付いているものの『操作している!』という実感と喜びが、WRXよりも強く感じられます。1800ccという排気量に物足りなさはありません。限定モデルである点も魅力的ですよね。それほど多くのクルマに乗っていたわけではないですが、理屈抜きに運転していて楽しいクルマです。ロードスターだけのフィーリングってあると思いますね。なにしろ、交差点を曲がっただけでも楽しいと思えるんですから(笑)」

ロードスターは4世代あるが、NB型以外のモデルに興味は?

「NA型には興味があります。いつか運転してみたいと思っていますが、私はNB型が好きですね。ちなみにNA型やNB型に乗ったオーナーさんとすれ違うと、手を上げて挨拶してくれるかたが多いんですよ」

NA型とNB型にはベテランオーナーが多い。クラシックカーに通じる“味”や個性を持っているロードスターは、古き良き自動車文化を知っているオーナーたちに今も愛され続けているのかもしれない。続いて、このロードスターと出会った経緯を伺った。

「転勤が終わって帰ってきてから、弟としょっちゅう『またロードスターに乗りたいね』と話をしていたんです。レガシィB4も納得のいくところまでチューニングできたので、温存を兼ねて増車することにしました。ロードスターに乗るなら限定車のマツダスピードが良いと思っていたので、時間が掛かっても良いのでなんとか探してほしいと中古車店にお願いしたんです。しかし希少車のため、過去半年以上は出てきた履歴がありませんでした。店側からも相当な時間が掛かると聞いていたので覚悟していましたが、その後、なんと2週間で業者オークションに出品されたんです!」

半年以上も出てこなかったクルマが出てきたということは、同じように探していたライバルも大勢いたのでは?

「店側からは3人くらいで競り合ったと聞いています。予算ギリギリだったんですが、なんとか競り落としてもらえました。もし競り落とせなかったら10周年モデルの限定車を狙おうという話にもなっていたんですが、無事に手に入れることができて本当にうれしかったですね。やはり『マツダスピード ロードスター』という響きは魅力的です」

念願のロードスターを手に入れたオーナー。このクルマでもっとも気に入っている点はどこなのだろうか?

「マツダスピードならではの装備ですね。マフラーもそうだし、限定色のブルーもとても気に入っています」

では、オーナーなりにこだわっているポイントは?

「納車されてから、職場の駐車場を日陰ができる場所に変えましたね。直射日光がライトに当たって黄ばむのを防ぐためです」

購入当時から施されていたモディファイはあったのだろうか?

「オートエクゼ製のラムエアインテークとタワーブレースセット(前後)、CUSCO製の車高調、ロールバーも入っていました。足回りはショップでオーバーホールして仕様変更をしてもらっています」

“運転していて楽しく、見た目はスマートでこだわりを感じる仕様に”がモディファイのテーマだというオーナー。主治医であるショップ「テクニカルファクトリー ブラインド」のアドバイスを受けながら、弟さんと一緒にモディファイを楽しんでいるそうだ。現在の仕様を伺ってみた。

「外装は、幌が破れていたのでロビンスオートトップ製の幌に交換。スタッドレスタイヤと夏用タイヤを履き分けるため、夏用タイヤをエンケイ製のホイールに組み込みました。CUSCO製の車高調は乗り味が硬すぎたのでTEIN製に交換しました。内装は、ナルディのステアリングとダックスガーデンのアルミペダルとフロアマットは納車のお祝いとして家族からのプレゼントされたものです。それから、Defi製の3連メーターを追加しました。ロールバーのパッドが劣化していたので、新たに巻き直してもらいました。冷却系は、ラジエーターが劣化していたのでコーヨーラド製のアルミタイプに交換。一緒にHPI製のオイルクーラーも装着しています」

今後のモディファイの予定は?

「フルバケを入れたいのと、年式が年式だけにリフレッシュもこまめにしていきたいです。主治医であるブラインドさんは、コンピュータのセッティングも含めて本当に乗りやすくしてくださいますし、トータルで頼りにしています」

最後に、これからこの愛車とどう接していきたいか伺った。

「古いクルマなので“維持をしつつ弄りたい”ですね(笑)。カーライフにおいては、レガシィB4 が壊れたらスバル車に乗る予定はないですし、趣味で乗るのはこのロードスターを最後に卒業するつもりで接していこうとは思っています」

2台のスポーツモデルを所有するという理想的なカーライフを送るオーナー。そこには“人生最後のスポーツカー”という決意もあった。

そして、今回のインタビューにはオーナーの弟さんも同席してくれた。マツダ RX-7(FD3S型)を所有している弟さんとの仲の良さは取材中の会話だけでなく、2台とも鮮やかなブルーのボディカラー、そしてホワイトのホイールで統一されていることからも伺えた。兄弟同士、もっとも身近なライバル関係というより、同じ趣味を楽しみ、共有する仲間のような関係なのだろう。

たった200台の中からオーナーのもとに嫁いだ幸運な1台。オーナーはもちろんのこと、弟さんや主治医などの強力なサポートを得ることで、これからも深く愛されていくのだと確信した取材だった。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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