名車が名車で在り続けるために必要なことをフェアレディZ専門店から探る

神奈川県の相模原市にZ32型の日産・フェアレディZのみを取り扱っている「Zone」(ゼットワン)というショップがある。特定の車種のみを取り扱う専門店は数多くあるのだが、Z32型のフェアレディZ専門店はここだけと言えるくらい数少ないのではないだろうか。旧車や趣味性が高いクルマにおいて、もはや専門店の存在は切っても切り離せない関係となっているが、今回はその内情を掘り下げていきたいと思う。

1989年にデビューしたZ32型フェアレディZは、日本のメーカーで初めてエンジンの出力が280馬力に到達したクルマだ。本来は300馬力で発売しようとしたところ、当時の運輸省(現・国土交通省)の指導により280馬力に抑えられたという話がある。このZ32型フェアレディZの280馬力が基準となり、長きにわたる自動車メーカーの自主規制が始まったのだ。Z32型フェアレディZは、デビューの1989年から2000年にわたって10年以上も生産されるロングライフモデルとなった。フルモデルチェンジを待たずに生産終了となったため、フェアレディZは一時的に絶版車となった。その結果、新型モデルの登場は、2002年まで待つこととなる。バブル期の恩恵を大きく受けたZ32型のフェアレディZは、当時としても先進的な技術や装備を採用した車種で、専用設計の部分も多い。それ故に整備性の悪さなどを生み出す要因となっているのだが、豊富な知識と独自のノウハウを蓄積している専門店であれば、各トラブルにも適切に対処できるというわけだ。

以前は、とあるフェアレディZ専門店で働いていたZone代表の小村氏。50台近くもの在庫車両を持ち、好調な販売台数を記録していたそうだが、その後、この専門店は無くなってしまう。それでもフェアレディZのお店を続けたいという思いから、小村氏は独立を決意。2007年にZoneを立ち上げた。Z32に一本化したのは6年前。それまではZ33やZ34も取り扱っていたのだが、Z32への想いが強く、一本化に踏み切ったのだという。

前述の専門店は、多くの車両を販売することで利益を生み出す販売手法だったという。現在では良質なZ32が少なくなってきており、後世へ残す強い意志を持っていると判断したユーザーにのみクオリティの高いクルマを託したい、というのが現在の小村氏の考えであり、Zoneの揺るぎない方針でもある。19年もの間、プロフェッショナルとして活動している小村氏は、Z32型のフェアレディZのことを誰よりも知っているといえるだろう。その豊富な知識や経験を活かして、このZ32型を後世へ残すという使命を果たしたいそうだ。事実、小村氏は先頭に立って保存活動を推進していることは間違いない。

意外なことに、Zoneでは接客などの対応は基本的にメカニックが行っているという。これはメカニックが最もクルマの状態を把握していて、それを的確にユーザーに伝えることができるからだそうだ。職人肌であるメカニックの実直な対応に、当初はあまり売上が上がらなかったそうだが、ユーザーはその声に耳を傾けるようになり、次第に顧客数が増えていったという。

さらに、Zoneが提案しているリフレッシュなどのメニューも魅力的だ。特にリフレッシュが施された下回りの美しさは、新車と見間違えるレベルとなっている。このようなメンテナンス、リフレッシュが行われている間、その作業内容を小村氏がデジカメで撮影し、オーナーが自分のクルマが現在どのような状況なのかを逐一把握できるようにしているのもポイントだ。本来、このような作業の様子はあまり見られるものではなく、クルマが出来上がっても、事細かに過程を見られるかどうかはショップ側の判断に委ねるしかない。このように、自分のクルマの現状や変更点を知ることができれば、オーナーにとっても大きな安心感に繋がるだけでなく、深い愛着を持つ要因ともなりえるはずだ。

Zoneの整備は一見すると過剰なものと捉えられてしまうかもしれないが、これには理由がある。長く大事に乗ることを目的としているから、先に起こるトラブルを予想した上で予防的にメンテナンスを施しているのだ。初期投資は大きくなるが、後になって想定外のコストがかかりにくい。この行為を先延ばしにすると、不具合や不安要素を抱えたまま乗り続けて、クルマを手放すといった結末になりかねない。長い目で見ても、この方がオーナーだけでなくクルマにとっても幸せではないだろうか。

Z32のトラブルはボディのサビだけでなくさまざまだ。生産されて長期間経過しているため、経年劣化によりあらゆる部分がトラブルを発生させる要因になっているそうだ。電装系ではセンサー類、駆動系ではプロペラシャフトやトランスミッション、足回りではブレーキがリフレッシュの必要となっている場合が多いという。Zoneでは多くの部品の在庫を抱えており、これらのトラブルに対処するほか、スカイライン GT-R用など、日産の他車種からの流用も多く行っている。

中古車の販売については高年式で状態のいい個体を選りすぐり、それを大事に扱ってくれるオーナーへ届けるという方針だ。そのためクルマを販売する際は、購入を希望するユーザーと小村氏自身が面談をした上で判断し、売るかどうかを決めるのだそうだ。クルマは基本的に個人から買い取ったもので、前オーナーの方と直接やり取りを行って買い取っている。クルマを手放すのは一大事なことであり、本当は所有し続けたいという気持ちがあっても、やむを得ない場合もある。さらに、このような趣味性が高いクルマであれば、自分の所有していたクルマを次のオーナーにも大切に乗ってもらいたいという感情を抱くのはごく自然なことだろう。クルマのため、そして前オーナーと未来のオーナーのためを思い、小村氏はあえて手のかかる方法をとって中古車の販売を行っている。

現在の在庫車両の中でひときわ美しい個体があったので紹介したい。2000年式というZ32のほぼ最終型で、走行距離も41,190㎞と少ない。さらに屋内保管されていたことから塗装の状態も良く、レアなオプションである本革シートの状態も最高だ。劣化が早いゴム製のモール類も無交換で新車さながらの状態だった。このような個体はもうほとんど無いだろうと小村氏は語る。

平成14年にはキル・ビルの撮影でフェアレディZを貸し出したそうだ。そのときにタランティーノ監督と撮った写真が飾ってあった。他にも学ドリ、スピードマスター、レスキューフォースといった映画で車両提供を行ったそうだ。

趣味性が高く、生産されてから時間が経ってしまったクルマは、ディーラーでのメンテナンスでは不十分となってしまうことが少なくない。さらにメーカー側はパーツを生産中止にしていく中で、個人だけで部品を保管していくというのも限界がある。オーナー同士が強く結束することでパーツなどの管理をすることも多いが、それも趣味の領域を出ない。そこで専門店の存在が必要となってくるのだ。いつまでもそのクルマを最高の状態で乗り続けたい、少しでも状態のいいクルマを未来へ残したいという、強い思いを持つ人が多いクルマほど、こうした専門店が生まれる要因といえるのかもしれない。

オーナーとショップが二人三脚となって、今あるクルマを大切にすることで名車達はこれからも名車で在り続けることができるのだ。名車を過去の遺物とするのではなく、これからも語り継がれ、楽しみを与えてくれる存在でいるためには、オーナーやショップが良好な関係を築き個々の力を増幅させることが必要なのだろう。そうすることで時にはメーカーを動かすきっかけになることもあるのだから。

店名:株式会社Zone(ゼットワン) 
住所:〒252-0243 神奈川県相模原市中央区上溝2346-19 
TEL:042-703-6670 FAX:042-703-6671 
営業時間:10:15〜18:30 定休日:木曜日

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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