RB26DETTエンジンの末裔、ミッドナイトパープルⅢのボディカラーを纏ったスカイラインGT-R(R34型)
1989年に登場したBNR32型の日産・スカイラインGT-R。「ついにGT-Rが復活する!」。当時の熱狂ぶりは凄まじいものがあった。昨日のことのように記憶している方も多いだろう。このクルマが登場したことで、日本のチューニングシーンは飛躍的な進歩を遂げたことは間違いない。それはレースシーンにおいても同様だ。当時の全日本ツーリングカー選手権「グループA」において、1990年~1993年に掛けてスカイラインGT-Rが29戦29勝したことは今や伝説だ。
こうして、RB26DETTエンジンを搭載した第2世代と呼ばれるスカイラインGT-Rはもはや神話へとなりつつある。今や、その影響力は日本に留まらず海外へと波及している。そして皮肉なことに、日本から次々とスカイラインGT-Rが海外へと流出しているのだ。この現状に危機感を感じているGT-Rファンは多いのではないだろうか。
深夜のパーキングエリアの片隅に、パープルメタリックのBNR34型スカイラインGT-Rが羽を休めていた。いわゆる「ミッドナイトパープル」のボディカラーを纏った個体だ。適度にローダウンされた車高、フロントインタークーラー。カーボンボンネット。ゴールドにペイントされたホイール…。女優がいくら変装して野暮な眼鏡を掛けたとしても、その滲み出るオーラで人目を惹きつけてしまうという話を聞いたことがある。こういう雰囲気は狙って放てるものではないし、隠そうとしても否が応でも気に留めさせるだけの「何か」を秘めているのだ。
30代というオーナー氏に話し掛けてみると「このR34、実は2台目なんです」と答えてくれた。アスリートのように引き締まった体躯の男性だ。これまで、トヨタ・マークⅡツアラーV(JZX90)やBNR32型のスカイラインGT-Rなどを乗り継いできたというオーナー氏。1台目のBNR34型スカイラインGT-R(以下「GT-R」)はベイサイドブルー。言わずもがな、鮮やかなブルーメタリックだ。これはトップシークレットによってチューンされた個体だったという。現在の愛車となっているミッドナイトパープルのGT-Rはふとした出逢いだったようだ。
「ミッドナイトパープルⅡのGT-Rは300台限定モデルでした。僕のGT-RはミッドナイトパープルⅢになります。これは2000年1月~3月末までの期間限定販売だったんですね。期間が短いこともあり、どうやら190台くらいしか生産されていないらしいんです」。つまり、目の前にある個体はその中の貴重な1台というわけだ。このミッドナイトパープルⅢは色合いもカラーコードもミッドナイトパープルⅡとは異なる。無論、BCNR33型に採用されていたミッドナイトパープルとも異なる。光の当たり具合で色彩が変化する妖艶なマジョーラカラーだ。この個体はホイールが交換されているが、ホイールやウィングの可変部分がシルバーとなっているのもこのボディカラーを持つGT-Rの特徴だ。
夜のパーキングエリアが画になるこの個体は現オーナー氏で2代目。ワンオーナー車で14万キロ走破した個体とは思えないほど美しい状態が保たれている。購入時はフルノーマルだったが、現オーナー氏によってあくまでもさりげなく、そしてセンスよくモディファイが加えられている。取材の合間も、道行く人がこのGT-Rを眺めていく。夜のパーキングエリアが画になるこの個体は現オーナー氏で2代目。ワンオーナー車で14万キロ走破した個体とは思えないほど美しい状態が保たれている。購入時はフルノーマルだったが、現オーナー氏によってあくまでもさりげなく、そしてセンスよくモディファイが加えられている。取材の合間も、道行く人がこのGT-Rを眺めていく。
気になったのでモディファイされた箇所を聞いてみた。TOMEI製M7655タービンキットが組み込まれ、ARC製フロントインタークーラーが目を惹く。その他、EARLS製オイルクーラー、REIMAX製等長フロントパイプ、TOMEI製チタンマフラー、Mine’s製カーボントランクスポイラー、トップシークレット製リアディフューザーおよびカーボンボンネット、ホイールはADVAN製Racing RG(ゴールド)など、多岐に亘る。愛車のコンディションを維持するため、Nutec製エンジンオイルを3,000kmごとに交換しているという。
オーナー氏曰く「これは手に入れるのに苦労しました」と語る、すでに絶版となっているガナドール製ドアミラーはインターネットオークションでようやく入手できた。部品代とミッドナイトパープルⅢにペイントする費用などを含めると、結果として10万円を超える出費となったそうだ。しかし、オーナー氏が理想のGT-Rを創りあげるためにも外せないアイテムなのだ。
率直な質問をぶつけてみた。R35型GT-Rの存在は気にならないのだろうか?「もちろん興味はあります。でも、私は3ペダルMT車が好きですし、そこにこだわりたいんです。増車できるなら欲しいですが、乗り替えてまで手に入れたいとは思わないです」と言い切る。希少価値の高いクルマだけに、昨今の著しい相場の値上がりも承知しているが、断固として手放すつもりはないようだ。「これを手放したら、もう2度と買えませんから」。確かにその通りだと思う。
「実は購入当初、それほど思い入れがあったわけではないんですけれど…」と語るミッドナイトパープルⅢだが、今ではこのボディカラーにも深い愛着がある。幸い、BNR34型GT-Rの部品は欠品になっていないようでひと安心とはいえ、この個体に元々装着されていた純正部品は大切に保管してある。年齢を重ねていったとき、ノーマルに戻して乗ることを想定しているからだ。
200台にも満たないミッドナイトパープルⅢのボディカラーを纏った日産・スカイラインGT-R。その中の1台は、若きオーナー氏に溺愛され、チタンマフラーからあの澄んだRB26DETTエンジンが奏でる直6サウンドを響かせているに違いない。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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