クルマに興味がない人も惹きつけるアイテムを。『GORDON MILLER』の若きブランドマネージャーが想い描く世界観

東京オートサロン2022で、カーキやブラウンなどのアースカラーを採用したおしゃれなアイテムを展示販売するひときわ大きなブースが目に止まった。オールドテイスト感のある幅広い品揃えに魅了された多くの来場者で賑わっていたのは、大手カー用品チェーン『オートバックスセブン』が展開するプライベートブランド『GORDON MILLER(ゴードン ミラー)』だ。

オートバックスといえば、ホイールやタイヤ、洗車グッズからドリンクホルダーまでカー用品の販売や車両メンテナンスサービスなどを行っているカー用品店。クルマ好きなら一度は訪れたことがあるのではないだろうか。

そして、そのプライベートブランドとして2017年にスタートした『ゴードンミラー』。
ガレージを起点として広がるライフスタイルの提案というコンセプトのもと、カーゴボックスや折り畳みチェアなどアウトドアでも活躍してくれそうなアイテムから、ブルゾンやバッグなどのアパレル商品まで、カーライフと無縁な人でも思わず惹きつけられるほど充実したラインアップを誇る。

立ち上げからわずか数年で業界内外から注目を集める存在となったゴードンミラーは、どんな想いを、どんな人たちに伝えたいのか?
このブランドが目指す終着点は?
20代という若さでこのブランドのディレクターを務める猿渡大輔さんにお話を伺った。

「オートバックスが展開する事業なので『クルマを楽しむ人を増やす』というのがミッションの大前提です。じゃあ、そのためにはどうしていけばいいのか、ということを模索しながらブランドを作り上げていっています」

そう話しはじめた猿渡さんは、もともとアパレル業界の出身で、意外なことにその当時はクルマにはまったく興味がなかったという。

「僕自身も周りの友達もクルマにまったく興味がない人間ばかりでした。だからある意味、現代のリアルな20代に近いと思います。僕はかろうじて自分のクルマを持ってはいたので、今となっては同世代の中ではクルマに親しんでいたほうかなとは思いますけどね」

「そして僕や周りの友達のような人間が、もっとクルマとのエンゲージメントを高めていかなければいけない。そう思ったので、まずは素直にクルマ業界とかカー用品店にどうなってほしいかを、自分や周りの仲間目線で考えました」

「人生で最初に買ったクルマはパジェロミニです。海にはよく行っていたんですけど、当時はまだ安月給だったので、なんとか買えるクルマで最低限遊びにいけそうな…みたいな感じで選びました」

「で、そんな僕のクルマやレンタカーなどに、まったくクルマに興味のない仲間が乗った時に、みんな『クルマっていいな』と言うんですよ。じゃあ、どうして乗ってないんだろう?って考えてみると、クルマ業界側がそういうユーザーに歩み寄っていないのではないかと気づいたんです」

「例えばジョギングやランニングって、最近はオシャレで敷居も低くなった印象がありませんか? 『ジョギングをはじめた』と聞いても『スポーツに対して意識が高いんだね』とは感じないですよね。それって文化として成熟して浸透したってことだと思うんです。じゃあクルマはどうかというと、必要だから買うけれど楽しんでいるわけじゃないという人が多いと思うんですよ」

クルマに対する興味や関心の薄い環境にいた猿渡さんの目線でクルマ業界を見渡すと、クルマを持っていることやカーライフを充実させることがステータスだったひと昔前の感覚のままで、「世の中の変化に追いつけていない」と感じたのだという。
だからこそ、クルマに目線が向いていない人とクルマ業界とをつなぐ媒介としてゴードンミラーを機能させ、クルマをもっと身近に感じられるツールにしていきたいと考えているという。

では、実際にどんな商品を展開しているのか?
ゴードンミラーの商品ラインアップは現在300種以上。
「ゴードンミラーのコンセプトはガレージユースを充実させるところからスタートしているので、商品企画の際にも『これはガレージに置きたいと思うか』『クルマで使う時に便利か』という目線でチェックし、そこを起点に用品や服、クルマなど幅広く商品展開をしています」

「最初にラインアップしたのはスポンジやバケツなどの洗車ツールでしたが、特徴的なのは機能性を重視したアパレルです。例えばこのフリースですが、軽くて保湿性が高いだけでなく、車中泊のときでも寝やすいように、ウエストから下をナイロン製に切り替えることで服がもたつかないようにしたり服全体のボリュームを抑えたりしています。またパンツは運転中でも取りやすい位置にポケットを配置しています」

クルマに興味がなくても手に取りたいと思えるようなファッションアイテムにも、カーライフと繋がる工夫が盛り込まれているのだ。

そしてブース内に陳列されている商品群の中でも、特に目を引いたのが大小さまざまなサイズが存在する収納ボックス『トランクカーゴ』だ。
「車種や使い方を限定したくないし、そこに優劣とか良し悪しとかをつけたくないんです。そういう意味でもサイズのバリエーションを増やすのは大切なことかなと」

クルマに搭載するだけではなく、部屋やガレージ、アウトドアなどさまざまな用途で少しでも多くの人が使ってみようと思えるように多くの選択肢を用意しているというわけだ。

たしかにガレージワークやカーライフにおいて機能性は重要だが、ゴードンミラーの場合はそれらすべてのアイテムに統一感があり、他の商品とマッチするというのも重要なポイントと言えるだろう。
何かひとつ気に入って購入したら「あれもこれもぜんぶこのブランドで揃えたい」と思わせてくれるのだ。

さらに注目したいのが、ブース内に展示されていた2台のコンプリートカーの存在だ。これらはゴードンミラーのエッセンスが詰め込まれたオリジナルカーレーベル『ゴードンミラーモータース』として展開されている。

ベース車両はトヨタの200系ハイエースと日産NV200バネット。ハイエースはクラシックなイメージの丸目4灯に変更され、ピラーやサイドガーニッシュなども含めオリジナリティが強いカスタムカーに。
もう一方のNV200は『OLIVE DRAB』と『COYOTE』という独特な2色のカラーバリエーションが用意されている。

「フロントマスクを変えていたりボディカラーを独自のものに塗っていたりと、何かしらユニークさを持たせているのが特徴です。また、内装についてはどちらの車種も天然木を使い、機能面でも使いやすい極力シンプルな作りとなっています。この天然木を使用している点にこだわりがあって、長く乗って経年変化も楽しんでもらえたらと思っています」

テーブルやベッドなどの機能を備え、普段使いだけではなく車中泊やロードトリップも楽しめるように作り込まれている。

「それと、このゴードンミラーモータースの車両は新車提供のみのコンプリートカーで、持ち込み作業はやっていないんです」
新車であれば耐久性やバックアップ体制も万全なので、中古車よりも確実に長く乗り続けてもらうことができる。そうして長年に渡って使い込むことで"オーナーらしさ"を感じられる唯一無二の1台に仕上がっていく過程も楽しんでもらいたい…そこまで考えて展開しているオリジナルカーレーベルというわけだ。

ちなみに現在は『THE HOUSE GARAGE PROJECT』という規格住宅プロクエクトも進行中という。
「生活の中にクルマやガレージがどう関わってくるのかという視点で、ゴードンミラーが考えるガレージの在り方を表現したい」という想いの象徴だ。また2021年11月には東京・蔵前駅から徒歩数分の場所に初の直営店もオープンさせている。

カーライフという視点からだけでなく、幅広い世界観を持ったブランドとすることで、クルマ関係だけに収まらずさまざまなアプローチを試みるゴードンミラー。
クルマに興味や関わりのなかった人の心を惹きつけ、カーライフやガレージライフを楽しむことがあたりまえの文化をもっと浸透させていきたい。
そんな熱い想いを胸に、そのキッカケとなるアイテムを次々に生み出していくゴードンミラーから、今後も目が離せそうにない。

取材協力:ゴードンミラー

(文:西本尚恵/撮影:土屋勇人)

[GAZOO編集部]

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