遊ぶために働いていてダッジ・ラムバンで趣味を楽しむ
日本車よりもひとまわり大きく見た目も迫力満点のダッジ・ラムバンRV SHUTTLE(以下ラムバン)で趣味のキャンプやジェットスキーを楽しんでいるという鹿児島県在住の堀口良拓さん(44才)。積載能力も高くポーターとしての役割を担うクルマは日本車の中にも存在するが、堀口さんがあえてアメ車のラムバンを選んだ理由とは? 早速その答えを伺った。
愛車ラムバンとは
「もともとアメ車の旧車が好きでしたし、ジェットスキーを引っ張るためにも使えて趣味のキャンプにもちょうどいいんですよ」という堀口さんの愛車ラムバンとは一体どんなクルマなのか。
ラムバンは、アメリカの自動車メーカーであるクライスラーが展開するブランドのひとつ『ダッジ』から発売された貨物バン。
1970年にフルサイズバンの「トレーズマンバン」として販売を開始し、貨物モデルや乗用モデル、ボディサイズなどによるラインアップや名称の整理が行われたものの、基本的な設計はほとんど変えずに2003年まで生産が続けられたロングセラーモデルだ。
エンジンやボディサイズも多種多様に存在し、その積載能力を活かし仕事用としてはもちろん、堀口さんのようにポーターとして活用する人や趣味グルマとして愛用するオーナーも多いという。
そのなかでも堀口さんが所有するダッチ・ラムバンRV SHUTTLEは、角ばったグリル&ライトで迫力のあるフェイスリストが印象的な1992年製だ。
かっこいいし、リビングのような空間もある
「結婚して秋田からこの鹿児島に来るまでは、自分でクルマ屋を開業していたくらい昔からクルマが好きでした。特にアメ車以外にもフォルクスワーゲンが好きなので常に1台は持つようにしていて、今もVWタイプⅡピックアップトラックを持っています。いろんなクルマに乗りましたが、所有歴はアメ車が一番多いかもしれません。ラムバンに乗る前もフォードのエクスプローラーを新車で買って10年乗っていて、友達が欲しいと言うのでエクスプローラーを譲ってこのダッチのラムバンにしたんですよ。6年くらい前の話になりますが、アメリカで買うとお金がかかるので国内で探しました。納車されたばっかりの時は『俺のクルマカッコいー』って思いましたね(笑)」
そんな堀口さんは、この型式のラムバンならではの個性がとても気に入っているという。
「昔のアメ車って今にはない形がいいですよね。迫力あるフロントフェイスをはじめ、全体的なスタイルも好きだし、外装が純正オリジナルカラーなままなのも気に入ってます。あとはラムバンの中でも古い型なのであまり日本で走っていないんです。人と被りたくないのでその点もいいなと思っていますね。基本は中古で購入した時のままなんですけど、ヘッドライトのレンズは車体に合わせた旧車っぽい色のものに変えています。あと正面やジェットに描かれたピンストライプは知り合いにやってもらいました」
「ホイールは22インチのものとこの15インチのものが付いてきたんですけど、15インチの方を愛用していて、アメ車はケツ上がりのほうがかっこいいので後ろのタイヤの方が扁平の厚いものを使ってます。ちなみに後ろはトレーラーを引っ張るときに沈み込まないように純正でエアサスがついているんですよ」
そして堀口さんがラムバンを選ぶときにこの車体を選んだ理由のひとつが、左側にあるセカンドドア。「左側にドアが付いている個体は珍しいんですよ。なのでわざわざこの左ドア付きを選んだんです」とこだわりポイントでもあるそうだ。
またハイルーフボディで内装などがカスタムされたコンバージョンモデルということもあり、青を基調とした内張りやシートカバーで統一され、温かみのあるウッド素材の窓枠やドア周りパーツが映える車内は、手作り感と豪華さが感じられる広々としたリビングのような空間となっている。
「シートは対面にもできるしベットにもできます。ガレージでみんなでバーベキューをしたときは部屋にもどらずそのままこのラムバンで寝てしまうこともありますよ。なんとなく昭和のスナックって感じがいいですよね。それとこのクルマって7人乗りなんですけど、実際はほとんど奥さんとふたりでジェットスキーやキャンプに行くので、後ろに人を乗せることはあまりないんです(苦笑)。背面は観音開きで使い勝手がよくて、キャンプの荷物は基本ここから出し入れします」
「車内では購入後に唯一いじっているのがコレ。象牙でできているシフトノブだけは僕が牙を削って加工したワンオフものです!」この象牙のシフトノブがあるだけで、もとのインテリアデザインと相まって運転席全体がワイルドな雰囲気になるのだから、その演出効果はバツグンだ。
正直に好にきなことを楽しむ
この日は奥様も取材に同行して撮影にご協力いただいた。その奥様も堀口さん同様ジェットスキーやキャンプが趣味で、多い時は毎週このクルマでジェットを引っ張り、ふたりで乗りにいったりキャンプをしたりと楽しんでいるという。
ちなみに堀口さんは結婚して鹿児島にくる前は14、5年秋田に住んでおり、ジェットスキーはその頃から趣味として楽しんでいたそうだ。
そんな堀口さんがラムバンを維持していくために気をつけているのが、土地柄ならではのガレージ内の湿気対策だという。
「乗らないときは常にガレージにいれているんですけど、鹿児島は梅雨が長いので365日エアコンをつけているんですよ。まあ、旧車を扱うならそれくらいは当然なのでなんとも思わないですけどね。ガレージの中には他にも3台のジェットスキーと軽トラを置いています。軽トラは近場に出かけるときに使ったり、ルーフテント仕様にしているのでキャンプするときにも使っているんですよ」
堀口さん写真提供
「旧車を扱うなら湿度管理は当然」と言い切るところに、堀口さんの好きなものに対する妥協のなさが伺える。
そんな堀口さんに今後のことについて伺うと、その好きなことに対する妥協のなさを裏付けるような返答がかえってきた。
「今後やってみたいことですか? これまでもやりたいことは我慢しないで全部やり通してきたので、あとは仕事するだけですね。みんなは家族のためとかいうけれど、僕は遊ぶために働いているので。仕事もいまはスナップオンの営業なんですが、元々は好きな工具メーカーで自分が欲しいから始めたようなもんです。だから自分のためにやっているけど、好きだからこそ、その本気度がお客さんに伝わってる部分もあると思っています」
「やりたいことは全部やってきたのであとは仕事するだけ」と言い切れるのは、堀口さんが自分の好きなことに正直に生き、そしてそれを貫くための努力も惜しまず人とのつながりも大事してきた何よりの証拠だろう。
この日も、仕事仲間でもあるチューニングショップ部動屋の神之田代表が、堀口さんの撮影があると聞きつけて1時間半以上離れた出水市から様子を見に吉野公園を訪れ、楽しそうに談笑していたのが印象的だった。大好きな旧車のアメ車で、趣味のジェットスキーを引っ張るためにも使えてキャンプにもちょうどいい。そんなラムバンは自分の好きなものに対して妥協しない堀口さんらしい愛車だといえるだろう。
これからもきっとポーターとしての役割はもちろん、堀口さんにとっての居心地のいい場所として大切にされていくに違いない。
取材協力:鹿児島県立吉野公園
(文: 西本尚恵/ 撮影: 西野キヨシ)
[GAZOO編集部]
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