目指すは還暦GRヤリスオーナー!? おしどりクルマ好き夫婦が歩んできたハードなカーライフ【取材地:北海道】

「この前に乗っていたクルマは9年間乗り続けたので、このヤリスも9年間は乗りたい。そこからもう1年経って10年になれば、ちょうど私が還暦になるんです。そうして60才になった時にもヤリスに乗っていれたら、ちょっとカッコいいと思いませんか?(笑)」
そう話すのは、こちらのトヨタGRヤリス(GXPA16)のオーナーである丸田よし乃さん(51才)。トヨタ・ランドクルーザープラドに乗る夫の敦士さん(46才)と一緒にクルマ好きのご夫婦として撮影にお越しいただき、2人が我が子のように可愛がっているGRヤリスをそばに、夫婦がこれまで歩んできたカーライフをお話いただいた。

2人が初めて顔を合わせたのは2003年、場所はかつて北海道の札幌市から南に位置する白老郡で営業していた白老カーランドというミニサーキットだった。
そのころ、よし乃さんが乗っていた愛車はダイハツ・ムーヴ。サーキット向きとは言えない軽ワゴン車を駆り、週2回はサーキットを走って、その様子を自作のウェブサイトにアップするクルマ好きの女性アマチュアドライバーというような活動を行っていたそうだ。

「10代のころ免許を取って初めて買ったのは軽自動車の三菱ミニカです。それまでクルマに興味があったわけではなかったのですが、乗り始めてから運転することに楽しみを感じるようになりました。ドライブも好きだし、かわいいウインカーとか自分でいいと思ったパーツをつけてアレンジしたりして楽しむのが好きでしたね。当時よく見かけたウルトラマンのカラータイマーみたいなランプを付けたり、キャブがカブったときには自分で調整して直したりもしていました」

「そのあとに乗ったのはダイハツのミラ・ルージュ、初めてサーキットに行ったのが次に乗り換えたムーヴでした。仲の良かった友人に誘われたのがきっかけで『ムーヴみたいな普通のクルマに乗ってる一般人もサーキットを走れるんだ!』と感動しました。そこからは誰かと競走するというよりは、自分がどうやったら速く走れるかを考えながら、サーキットに行って試すのが好きでした」

当時はSNSやブログが流行するよりも前の時代。そのころのよし乃さんはIT関係の職場に勤務していたこともあり、自分のウェブサイトを作って、タイヤやパーツなどを変えて走った様子を毎回レポートするような形でアップしていたという。

一方そのころ、敦士さんは地元北海道の土木関係の企業に就職後、転勤先の東京で過ごす日々を送っていた。当時の愛車はトヨタ・チェイサー(JZX100)だ。
セダン系のハイパワー車に憧れ、免許を取って初めて買ったGX81型のマークIIからステップアップし、98年式のチェイサーを新車で購入。チューニングした愛車でサーキット走行なども楽しむ日々を過ごしていたという。

そして2003年、北海道の本社から地元へ戻ってくるように連絡があったことが、2人にとっての大きな転機となる。

手塩にかけて育てたチェイサーと一緒に北海道へ帰ることを決め、地元の近くで走りを楽しめるサーキットを探していた敦士さんが、白老カーランドをホームコースに走るよし乃さんのウェブサイトを見つけてコンタクトをとったことをきっかけに、2人は一緒にサーキットを走ることに。そして自然と仲が深まっていっていき、2005年には晴れて入籍することとなったのだ。

2人の関係が続いていくなかで、カーライフの在り方も少しずつ変化していく。最初は2人でサーキットを走ることが多かったが、次第によし乃さんがドライバー、敦士さんがメンテナンスなどのサポートという、夫婦で役割を分担するような二人三脚での活動になっていったそうだ。

よし乃さんはムーヴからトヨタ・ヴィッツRSターボ、IQ、そしてヴィッツRS G’sと3台を乗り継ぎ、さらにATVという四輪バギーを使ったオフロードレース活動もスタートする。

「ATVは2006年からこのGRヤリスを手に入れる2020年まで、ずっと続けてきました。知り合いがレースに出ているのを初めて見に行ったときはちょうど雨で『こんなドロドロになって辛いことをよくやるな』と思って見ていたのが正直な感想でした。だから、最初は全くやるつもりはなかったんですが、この人(敦士さん)と今のチームのオーナーがどうにか私を出場させようと色々と準備を始めて…。でも気づいたら私もサーキットを走るのはどうでもよくなって、ほとんど趣味はATV一本というように、どっぷり浸かることになりましたね(笑)」

ちなみに敦士さんは結婚後少し経ってからチェイサーを手放し、トヨタ・ランドクルーザーへ乗り換え、よし乃さんがオフロードを走るATVを会場まで運搬するためのキャリアカーとして大活躍。本格的に妻をサポートする体制へと変化を遂げた。

「最初にサーキットを走ったときみたいに全然うまく乗れなかったATVも、やり始めたら少しずつだけど上達していくのがとても楽しかったんです。みんなに追いつこうと必死になって、サポートのおかげもあって続けることができました」
そうしてよし乃さんは北海道ATV協会が主催する年間シリーズの『HOKKAIDO ATV CHAMPIONSHIP RACE』にて100 OPENクラスに参戦。年齢・性別に関係なく参加者がいるなかで、2015年から2018年までのシリーズチャンピオンを獲得するほどの腕前となった。

このようにATVレースで結果を残すことができ、ある程度の区切りがついたと感じつつあった2019年。友人の誘いで久しぶりに十勝スピードウェイを走ることとなり、当時乗っていたヴィッツRS G’sでオンロードのジュニアコースを攻めると、ATV一本だったときには薄れていたクルマ熱が再燃!!
ちょうどそんなタイミングの年末に発表されたのが、トヨタ・ヤリスをベースにWRC(FIA世界ラリー選手権)に参戦するためのホモロゲーションモデルとして作り上げられたGRヤリスだった。

2人が乗るGRヤリスは上位グレードのハイパフォーマンスモデル。当初は500万円弱という価格に尻込みしていたそうだが、国内初の公式発表のタイミングとなった東京オートサロン2020で催されたGRヤリススペシャルミーティングに参加したことをきっかけに、購入を決意した。

「開発者の齋藤さんやテストドライバーの石浦さんなどの苦労話や、表に出せないような裏話も聞かせてもらい、最後はお土産までもらいました」
ミーティングでの興奮が冷めやらぬまま北海道に帰ると、1月中にはGRガレージ札幌厚別通にて正式注文。納車日は2020年9月30日と、北海道で一番目の納車という記念すべき1台にもなったという。

妻のよし乃さんがオーナーとして平日の通勤に使い、休日にはサーキット走行までオールラウンドに使用するため、納車からおよそ1年の間でGRヤリスの高いスペックを最大限に活かすためのファインチューニングを施してきた。

ノーマルで272馬力というスペックは日常では持て余すほどのため、エンジン系のカスタムは最小限。マフラーのみをエッチ・ケー・エスのスーパーターボマフラーへ交換し、サーキットでの温度トラブル回避するためにトラスト製オイルクーラーを追加してある程度だ。

サスペンションは、もっと柔らかい足が好みというよし乃さんの意見を押し切って、『サーキットを走るなら』と敦士さんが選んだクスコのスポーツS。
ホイールも「昔からレイズが好きで、チェイサーのころからボルクレーシングを選んできた」という敦士さんのこだわりを反映。普段は同ブランドのZE40を履いているそうだが、今回は撮影ということもあって、サーキット仕様のときに使う18インチのTE37を装着してきた。

インテリアには水温や油温を管理するための最小限のメーターを追加。デフィのスマートアダプターによって、スマホに各データを一括表示できるようにしている。
ブーストメーターを支えているのはよし乃さんがムーヴ時代から『メーター支え係』として行動をともにしてきた愛着のあるぬいぐるみ。当時かわいらしさに手に入れたという、アニメ『母をたずねて三千里』に登場するアメデオというキャラだ。

エンブレムの横に配置されたハートマークもよし乃さんがヴィッツに乗っていたころから付けている愛着のあるパーツだという。
このように、2人の好みがそれぞれうまい具合にマッチしたカスタマイズが施されている丸田さん夫婦のGRヤリス。
メンテナンスを敦士さんが担当するという関係はいまだ続いていて、よし乃さんはもっぱら洗車担当。クルマに関しては二人の財布の紐を共有し、このヤリスを積極的にイジりたい敦士さんが次につけるパーツをプレゼンし、その内容が良ければよし乃さんがOKを出す、というルールのおかげでクルマについてケンカすることもないそうだ。

軽自動車でサーキットを攻めることから始まり、荒れ地をバギーで走破するという普通のクルマ好きよりもちょっとハードなカーライフを歩んできたよし乃さん。しかし、GRヤリスの購入にあたっては、衝突防止装置などを加えた安心パッケージの装備を強くお願いしたという。
「このGRヤリスをずっと大事に乗ってあげたい、という気持ちからですね。あと9年、還暦を過ぎても乗り続けていたいので」
先が長く感じるその夢も、これまでよし乃さんが困難を乗り越えて結果を出すにつながってきた努力と実行力、そして敦士さんの力強いサポートが変わらずあれば、決して難しいことではないはずだ。

(文 : 長谷川実路 / 撮影 : 平野 陽)

[ガズー編集部]

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