RAV4 カスタムフリークがたどりついた“快適で利便性のいい愛車”

雪深い東北地方では、実用性を重視してRV車やSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)を選択するひとが少なくないという。
海外で高い人気を誇り、2018年から日本国内でも車種ラインアップに復活した5代目RAV4に乗る八木橋さんも、路面状況を選ばない走行性能に魅力を感じてこのクルマを購入したというオーナーのひとりだ。

八木橋さんがクルマに興味を持つようになったのは、中学から高校にかけて『頭文字D』などのクルマ漫画を読み耽り『湾岸ミッドナイト』などのゲームに登場する派手なスポーツカーをカッコいいと感じるようになったのがキッカケだという。
しかし、そうは思いつつもそれはあくまでも漫画やゲームの中の話であって、自分の愛車をカスタムするようになるとは思ってもいなかったそうだ。
「専門学校に通っていた頃は軽自動車を購入して移動手段として使う一般的なカーライフを送っていたのですが、同じ学校の友人がドレスアップしたミニバンに乗っていたんです。そういうのを見ているうちに、自分もやってみたいなと思うようになって、自分のクルマにもエアロパーツを装着してみたのをキッカケにどんどんのめり込んでいきました(笑)。僕の中で、カスタムといえばスポーツカーというイメージがあったから、身近にあるクルマでもカスタムしていいんだ!って新たな世界を発見した感覚でしたね」

昔から、まわりの友達に勧められて色々な趣味に挑戦してきたという八木橋さんだが、唯一長くハマったのがクルマのカスタムだったという。
「この趣味の不思議な魅力は、カスタムを楽しむというのはもちろんのこと、実際にドレスアップしている人の話を聞いたり、雑誌を買ってきてカスタム方法について勉強する、いわば準備の時間も面白いところなんです」
そして、カスタムを施した後は達成感を味わうことができ、クルマへの愛着がどんどん増してくるところも良いと話してくれた。

「1番影響されたカスタムは、車高を低くして、大きく張り出したエアロを付けているオデッセイを見たときです。その当時はオデッセイってとても流行っていて、街中の至る所でよく見かけたんですよ。だけど、イベント会場で見たオデッセイは、僕が毎日街中で見かけるノーマル車とは違った個性があって、オデッセイなんだけどオデッセイに見えなかったんです。自分の好きなようにガラッと変えてしまえる、これぞカスタムの真骨頂だなと、あの時深く感じましたね」

そんな八木橋さんが、本格的なカスタムをしようと購入したクルマが「カスタムショップで見かけたUS仕様がどうしても忘れられず購入に踏み切った」という日産・フーガ(Y50)。
セドリック&グロリアの後継車種として2004年に登場したY50型フーガは、海外でも『インフィニティ』ブランドで販売されたプレミアムセダン。
「同年代のフェアレディZやスカイラインと共通のV型エンジンを搭載していて、部品も共通の部分があるので、乗り味はスポーティな感じなんです。見た目もさることながら走行性能も僕好みでした」と、顔一面に満悦らしい笑みが浮かぶ。

購入したフーガには前オーナーによってVIP仕様のパーツが沢山装着されていそうだが、八木橋さんはUS仕様のフーガに憧れていたため、徐々に自分好みに手を加えていったという。
もともと付いていた車高調、社外ホイール、社外グリルを取り外し、購入2年目にエアロパーツや4本出しマフラーを装着してワーク製19インチホイールに交換。
3年目にはリアのエンブレムとガーニッシュをインフィニティ純正パーツにしてホイールも1インチアップ。4年目はエアバッグ、アナログ時計、インフィニティ純正スカッフプレート、5年目はフロントグリルを社外品から純正後期用へと、カスタムを満喫してきたという。
「乗っている時よりも、部品を選んで変更するまでが1番ワクワクするんですよね。次はこれがいいんじゃないか?このカスタムをしたらどんな雰囲気になるんだろう?って考えるのも楽しいですしね。1番気に入っているのは、運転中に必ず目に入るインフィニティの純正エアバックかな」

と、ここまでフーガについて熱く語っていただいたのだが、八木橋さんが会場に乗ってきたのはトヨタ・RAV4(MXAA54)である。前置きが長くなってしまったけれど、これまでの愛車とはまったく毛色の違うクルマを選んだ理由を聞いてみた。
「代車でミニバンを借りたことがあったんですけど、あまりの実用性に驚いたのがRAV4購入を決意した理由ですね。荷物も沢山積めるし、車内は広く人数もたくさん乗れて快適。当たり前のことなんですけど、ずっとセダンに乗っていたというのと、カスタムに重点を置いていたので“利便性が良い”ことに無頓着だったんですよね。それが、代車のミニバンに乗ったことをキッカケに『クルマって本来こういう使い方をする人が多いんだよな』と思い出したと言いますか(笑)。あとは、道を選ばずに走れる所も良かった! フーガは車高が低かったので、あっ、ここはダメかも…なんてことはありましたから」

ちなみに、ミニバンではなくSUVのRAV4を選んだのは後者の理由が大きかったからだそうで、街中を気にせずに走れるだけではなく、海、山などのアウトドアも心置き無く行けるというのが決め手となったそうだ。
実際に乗ってみた感想は、目線が高くてかなり運転しやすかったとのこと。地域柄、冬の積雪量が多いので、日常生活には欠かせないと話していた。
「雪で滑ってしまって、単独事故を起こしたことがあったんです。それ以来、雪の上を走るのが嫌いだったんですけど、RAV4は雪が似合うクルマだと思うし、今は冬が待ち遠しくなっちゃいました(笑)」

RAV4を手に入れてからもフーガは所有し続けていて、1人でドライブを楽しみたい時はフーガに乗り、アクティブに行動したい時はRAV4に乗るという八木橋さん。用途も見た目も真逆のように思える2台だが、どちらも日本専売車種ではなく“アメリカの道路を走っている車種”というのが、USDM好きの八木橋さんが絶対におさえておきたいポイントなのだという。
「そこがこだわりなんですけど、実は僕、カスタムは卒業するつもりだったんですよ。これからどんどん環境も変わっていくし、そろそろなのかなぁと。でもね…インターネットを見ていたら、カスタムしたRAV4がカッコよくて、ホイールだけ変えてしまいました」
苦しげな言い訳をするオーナーを横目に車両をあらためて見ていくと…マフラーカッターが装着され、逆輸入のTRD製ラゲッジマットも敷かれていることに気づいた。

『これは?』という問いかけに、言葉を詰まらせながら話してくれた。
「あとひとつだけやろうと思っているカスタムがありまして…ヘッドライトをUSトヨタのRAV4みたいにしてみたいなと。言わないと分からないくらいの変化だから、完全に自己満足ですけどね(笑)。内装もUS仕様にしていきたいんですけど、僕が調べた限りではラゲッジルームのマットくらいしかUS部品は無かったんです。まぁ、あとはSUVが初めてなので、どんな風にするかですよね。ゴツゴツした感じにしつつ、コンセプトはUSが良いんだよなぁ〜」

おそらく、いや絶対に、八木橋さんはカスタムを卒業できないだろう。なぜなら、コロナということで自粛していたカスタムショーに『今年は行きたい!』と意気揚々と話していたからだ。
きっと、来年の今頃にはUS仕様のRAV4になっているに違いない。

取材協力:旧弘前偕行社

(文:矢田部明子 / 撮影:平野 陽)

[GAZOO編集部]