レパード、お前に会えてよかったよ
ディーラーで偶然見かけた中古車の2代目日産レパード(F31型)を購入して27年。エンジンブローなど数多くのトラブルを『壊れたら直せばそこは新しくなるだろう!』とポジティブに考えて乗り越え、現在は絶好調で美しい状態に仕上がっているという愛車を拝見。
『あぶない刑事』シリーズの劇中車として今でも40〜50代の方を中心に根強い人気を誇る日産・レパード(F31型)。柴田恭兵氏が演じるユージが華麗なドラテクで操るゴールドのレパードに憧れたオジさんは少なくないはずだ。
そんな2代目レパードに、度重なる故障を乗り越えながら27年間も乗り続けているという愛媛県在住の『レパおさむ』さん。
ご両親やお兄さんの影響でクルマ好きになったというレパおさむさんの初めての愛車は、新車で購入したトヨタ・スプリンタートレノ(AE101)。しかし3年目に不慮の事故では廃車となってしまってからは、戒めの意味も込めて1年間クルマを購入しなかったそうだ。
そしてちょうど1年が過ぎた頃、レパードとの運命的な出会いを果たすことに。
「『あぶない刑事』が好きだった兄の影響もあり、次に買うクルマはレパードがいいなと思っていました。そんな時、親のクルマで信号待ちしている時に、横にあった日産ディーラー中古車販売店に目をやると、奥のほうの壁際にレパードのテールランプが僅かにチラリと見えたんです。」
しかし、その日はGW中で店舗は長期休暇中。何か連絡する手立てはないかなと思っていたら敷地内に小さなポストがあり『気になるおクルマやお探しになっているおクルマがありましたら、備え付けの用紙にご記入の上ポストに投函ください』という案内があったそうだ。
すかさず『奥に止まっているレパードが気になるので、ご連絡をお待ちしております』とポストに投函してお店を後にすると、GW明け初日に、その日産ディーラー中古車店から自宅に連絡が。
「GW休暇に入る前日に下取りで入ったばかりの車両で、整備どころかプライスさえも何も決まっていない手付かずの車両との事。これを逃せば次はいつの事になるか分からないと思い、購入の意志があることを伝え電話を切りました。後日の連絡で提示された金額は本体48万円と今では考えられないバーゲンプライスで(笑)。もちろん即決で契約手続きに行きました」
1996年5月、チラリと姿が見えた偶然とレパおさむさんの行動力によって、彼とレパードの物語がスタートした。
レパおさむさんが購入したレパード(GF31)は1987年式でグレードはXS-Ⅱ、VG20ETエンジンを搭載した2000ccのオートマ車。購入時のレパードの状態は“中の下”という感じで、オートマの異常にエアコン故障、さらにはエンジン不始動(燃料ポンプ故障)など、しばらくは故障の連続だったという。
「正直、途中で相当気持ちが萎えましたが『壊れたら直せばそこは新しくなるだろう!』とポジティブに考えて諦めませんでした。そして故障も落ち着いた2002年に外装の全塗装を行い、その際にモールやその他の付属部品も新品に交換しています。」
オルタネーターやパワステの故障などを乗り越え、故障は一段落したので「ようやくパワーアップ系のカスタムに着手しよう!」と思った矢先の2004年にまさかのエンジンブロー。既に入手困難なパーツも多く、さすがに「廃車にして乗り換えようか」という考えも頭をよぎったという。
しかし、エンジン修理の依頼をした愛媛県にあるショップ『フィースト』によって窮地を救われ、その後もオートマミッションの故障を機に強化オートマへとステップアップするなど、さまざまな峠を乗り越えてきたという。そんな甲斐もあり近年は致命的な故障もなく絶好調だと満面の笑顔を見せてくれた。
そんな愛車の1番のお気に入りポイントはやっぱり苦労した思い出の大きいエンジンルーム。現在は純正の155psから320psほどまでパワーアップされた状態だという。
「エンジンが壊れてしまった時は既に新車発売から10年以上経っていたこともあって部品がいろいろなくてすごく苦労して…とにかくフィーストさんに直してもらって今の仕様になったので、気に入っています」
そして、パーツ探しで苦労した経験も経て、現在ではストックパーツを大量に保管し、レパードを走らせ続けるための準備も万全に整えているという。
もちろんエンジンだけではなく外装にも共に過ごしてきた月日の分だけ思い入れが詰まっている。ホイールは当時ショップで働いていた同級生にオススメされてから20年くらい履いているという当時モノのシュティッヒ製メッシュホイールを愛用。マフラーはレパードと基本設計がおなじR31型スカイライン用を流用し、出口部分の長さが合うように加工してもらったそうだ。
「前後のブレーキは、性能重視で他のクルマを流用しています。フロントはR33スカイラインのキャリパーにJZA80スープラのローター、リアにはZ32のキャリパーとローターと言った感じです。レパードは車重が1400kg以上あるのにブレーキがAE86と一緒くらいのサイズなので、交換してすごく変わりましたよ。制動力はもちろん、ペダルのカチッと感もアップしましたから」
さらにオーナーが嬉しそうにエピソードを語ってくれたのが、このゴールドのエンブレム。
「これ両方とも、全塗装した時に兄が外して裏側の元の色を剥いで金色に塗ってくれたんです」
一方、飛行機のコクピットをイメージして設計されたという運転席まわりは、レカロシートや追加メーターによってさらにスポーティさが増している印象だ。
「こだわりとしては、外からパッと見た時にノーマルみたいに見えることです。ごちゃごちゃしているのが嫌いなので。ただ、運転席にはレカロのフルバケットシートを装着しています。自分はドライブ中に休憩したりシートを倒したりすることがないのでフルバケの方が楽なんです。ちょっと腰痛持ちなのですが、このシートにしてから腰も大丈夫だし、700~800km走っても問題ないんですよね。うちはみんなレカロ好きで、兄のレパードも妻のクルマもシートはレカロなんです。ちなみに、助手席はランエボⅡの純正シートを流用して装着しています。」
そんなレパおさむさんは、19年前に入会したオーナーズクラブで、現在は会長を務めているそうだ。27年間もレパードと向き合い続け、良いところも悪いところも熟知しながら現在進行形で愛情を注いでいることを考えれば、とてもふさわしい役柄だろう。
「当時はまだ結成2年目で、僕が自ら『入ります』言うてた気がします。やっぱりレパード仲間は増えましたよね。コロナ禍以前は年1回お泊まりでミーティングも行っていました。土曜日はメンバーだけで集まり、翌日はオールジャンルのオープンミーティングという感じで、多いときには100台くらい集まったこともありましたね」と楽しそうに語ってくれた。
また、もうひとつ彼が嬉しそうに教えてくれたエピソードが、愛媛新聞に偶然載ったという出来事。
「ある日、松山市役所前で信号待ちしながらふと前方を見ると、テレビカメラがこちらを撮影しているような…その時は特に気に留めずにその日を過ごしたのですが、翌日に新聞を見ると結構大きな記事でデカデカと私のレパードが。ちょうど、真っ黒なボディに強烈な日差しが照り付けて反射して、いい感じで光っておりました(笑)。2003年7月8日に掲載されたのですが、私の誕生日が7月10日なので、ビックリなサプライズバースデープレゼントとなりました」
多くの仲間との出会いや、貴重な経験をたくさん与えてくれたレパードの走行距離は、購入時の5万6950kmから22万km手前まで伸びたという。
「妻よりも付き合いが長く、結婚して現在高校1年生になる娘が生まれてからも、数えきれない回数のドライブや旅行に活躍してくれました。最近は愛犬『夢女(ゆめ)』と毎週末に近場のドライブを楽しんでいますよ」
度重なる故障を乗り越え、オーナーとたくさんの思い出を紡いできた愛車レパード。レパードの物語は、これからも続いていく。
取材協力:萬翠荘(愛媛県松山市1番町3丁目3-7)
(⽂:西本尚恵 / 撮影:西野キヨシ / 編集:GAZOO編集部)
日産車を愛車として楽しむ
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