西部警察スタイルのスカイラインER34で後輩の遺志とともにカーライフを歩む
クルマに興味を持つようになったキッカケは?と問われたら、最近ではアニメやゲームが入口になっているケースも多いようだが、昭和世代ではTVドラマに映る派手なアクションが印象に残っている人も少なくないのではないだろうか。
中でも激しいカーチェイスはもちろん爆破や横転も当たり前だった石原プロ制作ドラマは、当時の大人から子供までがTVに釘付けになるほど人気を集め、その影響を多大に受けて育ったという人も珍しくない。
1998年式の日産・スカイライン 25GTターボ(ER34)に乗る鹿野さんも、そんな石原プロ作品に熱中して育ったひとりである。
スカイラインとしては10代目となるER34型は、R31までのイメージを踏襲した直線的なボディラインを採用し、先代モデルのR33と比べてボディの高剛性化などが図られている。
2ドアと4ドアのボディがあり、2リッターから2.5リッターまで4種類の直列6気筒エンジンが搭載されていた。
最上級モデルであるGT-Rの人気高騰を受け、現在ではスタンダードモデルとなるER34、HR34などもプレミア価格で取引される人気車種となっている。
そんなER34にオリジナリティ溢れるカスタムを施しながら愛車ライフを満喫しているのが鹿野さん。その特徴はR30型スカイラインを印象付けるツートンカラーやこだわり抜いたパーツ群、そして何よりも目を引くのがオーナー共々なりきった『西部警察』スタイルだ。
「免許を取る前にTVで見た大都会や西部警察で、丸ふたつのテールライトが印象的だったんですよ。調べてみたら『スカイライン』というクルマだということが分かって、免許をとったらすぐにスカイラインを手に入れました。ただ、当時は中古車の回転サイクルが早くて6年落ちだったジャパンは見つけられず、代わりに手に入れたのが1982年式スカイライン2000GTターボ(HR30)でした。それ以来ずっと日産車に乗り続けているんですよ」
HR30に続いて手に入れたのは西部警察の劇中車としてもお馴染みの2ドア2000RSターボ(DR30)で、その後も1989年式2000GT-Sターボ(R31)を乗り継ぐなどスカイラインでのカーライフを満喫していたそうだ。
そして、そんなスカイライン漬けのカーライフを目にした会社の後輩が影響を受けてスカイライン2000GT(HR34)を新車で購入し、たびたび一緒にツーリングなどにも出かけるなど新なカーライフの1ページも楽しむことができたという。
しかし、結婚して子供が生まれたのを機に子育てしやすいミニバンへと移行するのはよくあることで、鹿野さんにもそのタイミングが訪れ、後輩からは「僕はスカイライン一本で行きますよ」と冷やかされたりしていたのだとか。
そんな鹿野さんのカーライフに転機が訪れたのは、順調にスカイラインファンへと成長した後輩の訃報を耳にした2004年。志半ばでスカイラインと別れることになってしまった後輩の意志を継ぎ、再びスカイラインを手に入れることを決意したという。
当時はまだまだ中古市場にコンディションの良い車両も多く残っていたこともあり、9軒の中古車ディーラーをまわってフルノーマル走行4万6000キロの車両を見つけて購入。それが現在の愛車である。
スカイラインを手に入れてからは、若くして亡くなってしまった後輩の思いと、ミニバンへと移行していた数年間のブランクを埋めるように、ドライブからサーキット走行までカーライフを存分に楽しむ日々を過ごしたそうだ。
次なる転機は購入してからノーマルで4年ほど乗り続けたところで、もらい事故によってボディにダメージを負ってしまった時。その時にふと思い出したのがスカイラインに対する自身の価値観だったという。
スカイラインを知った当初はジャパンに憧れていたものの、その後2台乗り継いだR30は原点にして最高のクルマであったという。
その思いを改めて形にしたいと考え、R30のイメージカラーでもあるレッド×ブラックのツートンカラーでリフレッシュ。さらにボディカラーに加えサイドには『GT-TURBO』のレタリングも施してDR30風のスタイリングへとアップデートを果たしたというわけだ。
「15年くらい前にこのボディカラーに塗ってもらったんですが、知らない人が見たらDR30と勘違いされることもありますね。実際に塗ってもらう前にプラモデルでこのカラーリングを試してみたんですが、これがイメージとピタッとはまって。事故の時の嫌な印象もあったので、純正色で塗り直すのではなくイメージチェンジしたのは正解だったと思います。ちなみにこのツートンカラーは赤と黒って表現されることが多いんですが、本当は赤とダークブルーなんです。光を当てた部分がうっすら青っぽく光るのが正解なんですが、なぜか黒っていう人が多いんですよね(笑)」
ボディカラーやサイドのデカールだけでなく、リアウイングもDR30を忠実にイメージさせるポイント。DR30用のパーツを用意してER34のボディサイズに合わせてバランスを整えながら加工したという逸品。ボディカラーとともにDR30のイメージを強調するアクセントとしてもこだわっているのである。
もちろんスカイラインと出会うきっかけとなった石原プロ作品も大好物だという鹿野さん。当時モノのグッズやノベルティ収集はもちろん聖地巡礼も欠かさない。
北海道の小樽にあった石原裕次郎記念館をはじめ、各地に存在するロケ地などを愛車のスカイラインで訪れているのだとか。撮影当日もコスプレで登場してくれるなど、スカイライン愛、そして作品愛に溢れていることが窺える。
ここまで愛情を注いでいるスカイラインだけに、機関系から駆動系に至るまでしっかりとメンテナンスに力を注いでいる点も見どころ。特にエンジン周りは2年ほど前に20万キロ近く走行したことを機にフルオーバーホールが行われている。しかも中途半端な作業ではなく、金額度外視で新車レベルまで引き戻すことを前提に、新品で出るパーツはすべて交換されているという。中にはマフラーや足まわりなど純正パーツが手に入らないため社外品を使用している部分もあるが、25年経過したマイナス点はすべてリフレッシュされているといっても過言ではない。
「作業はHR31に乗っていた頃からお世話になっているディーラーでお願いしましたが、本来なら新車を勧められそうなところ快く引き受けてくれたんです。当時の担当さんが店長になっていたこともあるのかもしれませんが、打ち合わせから作業まで半年以上かけて付き合ってくれました。その結果、エンジンのオーバーホールだけでなく電装系やハーネス、リレー、タービンなどの補機類、ハブベアリングやデフまわり、ハイキャスユニットまですべてが新品に入れ替わっています」
ちなみにリフレッシュ作業ではエンジンを降ろし、足まわりの部品もはずしているものの、塗り替え前のボディ色であるライトニングイエローは敢えてそのまま残している。というのも、このボディカラーは亡くなった後輩が所有していたHR34とおなじ色だから。
外装こそDR30風にアレンジされた鹿野流スタイリングにカスタムされているが、今も後輩とともにカーライフを歩み続けていることを表すポイントというわけだ。
ちなみにレッドは色が褪せてしまいやすいこともあり、オールペンを施工したタイミングが15年ほど前のため、3年ほど前に改めてレッドの部分を補修しているのだとか。その甲斐もあって特徴的なツートンカラーが際立ち、鹿野さん自身もさらに愛情が増しているという。
「3年前にボディを塗り直し、2年前にフルオーバーホールを完了したので、しばらく手をかける必要がないかなって思っています。ここまでやれば今後25年くらいは問題が起きないのではないですかね。とは言っても、これからは無理させず動態保存させていくつもりです」
経年とともに純正パーツが手に入りにくくなるのは仕方のないこと。しかし、自身に加えて亡き後輩の想いも重なった愛車だからこそ長く乗り続けて行きたいと考え、オールリフレッシュした鹿野さんのスカイラインはこれからも走り続けていく。
取材協力:大磯ロングビーチ(神奈川県中郡大磯町国府本郷546)
(⽂: 渡辺大輔 撮影: 中村レオ)
[GAZOO編集部]
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