特別なボデイカラーのbBで広がる新たな世界と素敵な出会い

  • GAZOO愛車取材会の会場である香川県の『道の駅 恋人の聖地 うたづ臨海公園』で取材したトヨタ・bB Zマジョーラ Xバージョン(NCP31型)

    トヨタ・bB Zマジョーラ Xバージョン(NCP31型)


20世紀最後の年、2000年に発売された箱型コンパクトカーのトヨタ・bB。正式発表の場は、同年1月に幕張メッセで開催された東京オートサロン会場であり、発売当初からカスタム好きの若者をターゲットにしていたことでもよく知られている。

当時のヴィッツなどと同じプラットフォームをベースに、背の高いシンプルなボックス型ボディを採用していたbBは、実際のところ白紙のキャンバスのようにカスタマイズ欲をそそる存在として人気を獲得。
アフターパーツメーカーがさまざまなアイテムで、ユーザーの想いに応えただけでなく、当のトヨタも、ピックアップスタイルの『オープンデッキ』グレードを設定するなど、遊び心に溢れたモデルを展開してきた。

その一例とも言えるのが、ボディ色が変化して見える、いわゆる“マジョーラ”カラーを採用したモデルだ。2000年12月に発売された特別仕様車。当時、ラインアップされていた全グレードを対象に設定され、2001年3月までという短い期間に限定して生産された、今となっては極めて希少な一台である。

ちなみに“マジョーラ”とは、日本ペイントの塗料の商標名で、光の当たり方や見る角度によってグリーンやパープルなど、玉虫のように色味が変わって見えるのが特徴。
トヨタの外板色としての正式名称は“エメラルドスペクトラシャイン”で、期間限定の特別仕様車とはいえ、かくも奇抜なカラーをトヨタが初採用した事実からも、当時のbBのキャラクターや立ち位置が窺い知れる。

今や貴重な存在となった初代bB(NCP31型)の特別仕様車『Z マジョーラ“Xバージョン”』を愛車として所有する『buuu』さん。このクルマは、なかなかの偶然が重なったことで所有するに至ったらしく、その経緯を語ってくれた。

「実は今のbBを所有する前も、後期型のbBを持っていまして、もうやり切ったと言えるくらいカスタマイズを楽しんでいました。僕は10代からずっとクルマいじりが好きで、当時はエアロパーツとかホイールとか、とにかく付けたいものは全部付けるといった感じで、カスタマイズしていたんです。けれど、年齢とともに考え方も変わってきて、買い替えを意識し始めていました。ただ、買い替えるとしても“やっぱりbBが良いな”と思っていたんですけどね」

「そんな時に、この純正マジョーラのbBが個人売買サイトに出ているのを見つけて、これは珍しい! ってテンションが上がりまくりました。けれど、どこから出品されているか場所もわからなかったので、最初はそこまで現実的には捉えてなかったんです。そんなある時、後輩が『知り合いがやっている高松のカフェに行ったら、あのマジョーラのbBが置いてありましたよ!』って教えてくれたんですヨ。話を聞いたら、カフェを経営されている方自身が売りに出していたクルマだと分かったので、後日伺って譲ってもらう運びになったんです」

クルマ好きたるもの、普段からチェックしている中古車の話を『こんなクルマがあってさ〜、でもさ〜』などと、仲間に話すのは日常茶飯事だったりするが、buuuさんの場合は奇遇にも本当に購入に至ったケース。
外板色だけでも十分過ぎるほど個性をアピールできるbBを手に入れたことで、再びbuuuさんのカスタム熱が燃え上がったことは言うまでもない。

「ただ、10代の頃のようにゴテゴテさせたくはなかったので、統一すべきところは統一させようと、アメリカっぽさを意識しながら少しずつカスタマイズを楽しんでいるところです。改めて、自分はbBの全体的なカタチが好きなんだなと再認識したので、それを崩さないように、カッコ良く仕上げていきたいですね」

フェンダーに取り付けられているクロームのモールは、何を隠そうトヨタの純正オプション。マジョーラカラーと組み合わせると、これまた他ではそうそう見られない個性が発揮される。ちなみに、今後はもう少しだけローダウンをさせて、17インチのワイヤーホイールと組み合わせるのが理想形だそうだ。

インテリアは全体的にホワイトで統一させているが、実は白いオーディオパネルもトヨタの純正オプション。当時開発をしたメーカーのデザイナーさんも、さぞカスタマイズが好きなお方だったのではないだろうか。
シートカバーもホワイトにブルーのステッチが入るアイテムをあつらえて、個性を高めている。

ちなみに、今回の撮影会に同行してくれた彼女さんと出会ったのも、クルマがきっかけとのこと。共通の知人に紹介され、buuuさんが彼女にウーファーを譲ってあげることになったのが最初の出会いだそうだ。
彼女さんも自分のクルマをカスタマイズするほどのクルマ好きだが、もちろんbBに乗ってデートに出かけることもよくあるそう。カメラを向けると弾ける笑顔に、二人の仲の良さがダダ漏れていた。

一方、buuuさんが男のひとり時間を楽しむのが、趣味のブラックバス釣りに出かける時。bBのラゲッジルームには、これまた純正オプションのボードが備わり、広い荷室を間仕切る棚のようにセットされている。釣りの道具を準備する時、立ったまま作業できるので、とても楽なのだそうだ。

「あと、これもたまたま見つけたんですけど、マジョーラカラーのミニカーがあったんです! これは『俺が買わずして誰が買う!』と思って、即ゲットしました(笑)」と言いながら、大切そうに見せてくれたミニカー。buuuさんにとって、想い出深いアイテムのひとつとなっている。

最近はSNSを通じて、地元のクルマ好きと繋がり、自らミーティングを主催することもライフワークにしているというbuuuさん。参加してくれた人や、場所を提供してくれた人に嫌な思いをしてもらいたくないと、挨拶やゴミ拾いなど、基本的なことを大切にしながらクルマ好きとの繋がりを楽しんでいるそうだ。

「多い時は50台くらい集まります。僕はジャンルに縛られるのは嫌なので、車種も年代も問わずオールジャンルで楽しめるイベントにしたいなと、いつも考えています。そんなに『クルマが好きなら仕事にすれば?』と周りから言われることもあるんですけど、好きなことを仕事にしちゃうのはちょっと違うかなとも思うので、これからもクルマはあくまで趣味として接していきたいですね。とりあえず、このbBのカスタマイズはまだ完成形ではないので、ぼちぼちマイペースで楽しんでいきます」

ずっとクルマを愛し続けてきたからこそ、年齢以上に成熟した考えと落ち着きを身につけたbuuuさん。
クルマ趣味を理解し、いつも寄り添ってくれるパートナーにも恵まれ、まさに順風満帆。オーナーのbuuuさんはもちろん、香川のクルマ好き達をハッピーにしてくれるマジョーラbBは、今日も元気に讃岐路を走っている。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 西野キヨシ)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:道の駅 恋人の聖地 うたづ臨海公園 (香川県綾歌郡宇多津町浜一番丁4)

[GAZOO編集部]