はじめての愛車に名車中の名車『スカイラインGT-R』を選んだ、若きオーナーのクルマ生活ことはじめ

  • GAZOO愛車取材会の会場である西京極総合運動公園で取材した日産・スカイラインGT-R(BNR32型)

    日産・スカイラインGT-R(BNR32型)


国産スポーツカーの黄金期と言われる1980年〜1990年代において“最強”という名を欲しいままにした『スカイラインGT-R』。レースの世界では圧倒的な強さを誇り、自動車専門誌の最高速テストやドラッグレースなどでも驚きの速さを見せつけた。その存在感は今なお色褪せることなく、世界中のクルマ好きを虜にしている。

今回ご登場いただくのは、そんなGT-Rに魅了された21歳の若きオーナー『よっぴぃー』さん。美しく磨き上げられた純白のR32スカイラインGT-Rは1994年式。「自分よりも9歳も年上なんですよ」と話す。

クルマを好きになったキッカケは、幼年時代に自宅にあったフォルクスワーゲン・ポロだった。物心もつかない頃から、その質実剛健なドイツ車の造りに惹かれ、漠然とした憧れが芽生えた。祖父が乗っていたメルセデス・ベンツ(W202型)や、BMW 323i Mスポーツ(E46型)といった輸入車も印象深く、自然と欧州車への関心が高まっていったという。

しかし、小〜中学生と成長するにつれて、クルマの興味についても変化が訪れる。自分が将来、ステアリングを握るであろう現実的な選択肢として、国産スポーツカーを意識し始めたのだ。

「自宅の駐車場が狭いこともあり、5ナンバーサイズがちょうどいい。でも、ひととは違うクルマに乗りたいって漠然と思っていました。そんなことを考えつつ中古車雑誌やフリーペーパーなどを見ていたら、だんだんRX-7(FC3S型)やインプレッサ(GC8型)、そしてスカイラインGTS-tタイプM(HCR32型)といった、国産スポーツモデルに惹かれていきました」

特に憧れを抱いたのがスカイラインGTS-tタイプM(HCR32型)。6気筒エンジンである点や特徴的なフロントマスクに魅了されたが、その頃に知り合った周囲のクルマ好きから『せっかくスカイラインを買うなら、GT-Rにした方が良い』とアドバイスを受けることもあったそうだ。当時はまだ、GT-Rの中古車相場もそれほど高騰していなかったのだ。

そんなよっぴぃーさんだが、運転免許を取得してはじめて購入したクルマはシビックタイプR(FL5型)だった。新車で手に入るスポーツモデルとしては妥当な決断とも言えるだろう。ただ当時はコロナ渦の最中。注文は入れたものの納期は未定という状態だった。

「実は、シビックタイプRは注文したものの、クルマは手に入れていないんです。なので0.5台目といった感じですかね。納期未定のまま1年待ち、ようやく納期が判明したところさらに1年半掛かることが分かりまして…。さすがにこれ以上は待てないとキャンセルをしました」

図らずして、クルマ選びのリスタートを余儀なくされた彼。子どもの頃から興味があったこともあり欧州スポーツカーも検討したという。

「997型のポルシェ前期や祖父が乗っていたBMWのM3(E46型)も考えましたが、故障した時のことが気になって。万が一、エンジンブローしたら修理費用も高額なので維持できないだろうと断念しました」

そして、シビックタイプR(FL5型)の変わりに彼の元にやってきたのは、1994年式のスカイラインGT-R(BNR32型)だった。

「いろいろ探し回りましたね。専門店でリフレッシュ済みのGT-Rを買おうと名古屋まで足を運んだものの、予算が足りずに断念したり…。しかし、偶然にも自宅からクルマで10分ほどのクルマ買い取り店で、このGT-Rを見つけたんです」

ブレーキやホイールはノーマルで、リヤウイングがない状態。コンディションは決してよくはなかった。ただ、下まわりを覗いたらサビもなく、R32にありがちなダッシュボードの浮きもなかった。これなら購入してもいいかなと心が揺れたという。その日はいったん帰宅し、じっくりと考えた末に契約に至ったという。

「実はYouTubeの日向坂46チャンネルで、グループの女の子がクルマを買う企画があって、そこにこのGT-Rが映っていたんですよ。見覚えがあるGT-Rだなと思ったのですが、ドンピシャでした。なんだか運命的なものを感じてしまい、それも購入を決めた理由のひとつです」

紆余曲折しながらも念願の愛車を手に入れた彼だが、入手した当日にネオクラシックカーの洗礼に晒されることになる。

「納車された日、どんなクルマか知るためにちょっとアクセルを踏み込んでみたんです。そして自宅に帰ったら、ラジエターから冷却水がパーッと吹き出してきて…。ラジエターのアッパータンクが割れていましたね。実は前のオーナーさんは10年で8000km位しか乗っていなかったそうなんです。急にエンジンを全開にされて、クルマが驚いちゃったんでしょうね。納車そうそうにレッカーを呼ぶハメになりました」

そう笑って話すよっぴぃーさんだが、トラブルはそれに留まらない。ラジエターの他にも、インジェクターからの燃料漏れやサスペンションブッシュの亀裂、イグニッションコイル不良などなど、トラブルが相次いだ。

「ある程度、リフレッシュが必要なことは想定していましたが、まさかここまで手が掛かるとは思いませんでした。そこで、せっかくならばちゃんと直そうという気持ちになり、10年間交換されていなかったタイミングベルトや、アイドラプーリーもすべて新品に交換しました。またクラッチのマスターシリンダーやハイキャスのホース、エアコンのコンプレッサ-などもリフレッシュしています」という。

初めての愛車がトラブル続きでは心が折れそうなものだが、よっぴぃーさんはあくまで前向きだ。

「自分が言うのも何ですが、やっぱりGT-Rって名車じゃないですか。だから乗らせてもらっている、というくらいの気持ちでいます。自分が所有している限りは、できるだけ好調を維持したいし、見た目もキレイにしたいですね」

ボディはピカピカになるまで磨き上げ、機関系についても日産ディーラーで入念なメンテナンスを実施。整備記録はすべてパソコンで管理しているそうだ。また、コンディション維持のため、消耗品や補修部品は先回りして確保。トラブルが起きやすいエアコンのアクチュエーターや、中古のタービンもすでにストック済みだという。

購入してから1年ちょっとしか経っていないが、カスタマイズも順調に進んでいる。知人から譲り受けた、スカイラインGT-R(BNR34型)の純正18インチホイールやブレーキ、インタークーラーを流用し、ヘッドライトもN1タイプへと変更。灯火類もLEDバルブに交換するなど、オリジナルを尊重しながらアップデートを施している。
「R34純正ホイールのセンターキャップも新品を入手しました」

「サイズ感がちょうどいいですね。5ナンバー車ではないけれど、ボディが小さいので駐車場にも余裕で入る。クルマは古いけど、型落ちであることはまったく感じません」と話すように、今では高いパフォーマンスと実用性を併せ持つR32に惚れ込んでいる。RB26DETTエンジンのスムーズな回転フィールやサウンド、長距離でも疲れにくいパッケージも、実際に乗って初めて理解できたという。

富士スピードウェイで開催されているGT-R乗りの祭典『R'sミーティング』に遊びに行ったのも良い思い出。このクルマを通じて世代を超えて仲間ができ、幅広い交流が生まれたそうだ。
「同年代のR乗りは少ないけど、GT-Rだからこそ繋がれる世界がありますね」と話すように、このクルマは単なる移動手段ではなく、人生の輪を広げてくれる存在なのだ。

「壊れることもあるし、それこそレクサスRC Fやポルシェ997などが気になったこともありました。でも乗り換えるかというと、そういう気分にはなりません。購入を決断して良かったと思っています。今後はエンジンをオーバーホールして500㎰位の仕様にしたいですね。またオールペンにも興味があります」と話してくれたよっぴぃーさん。

現在の走行距離は11万6000km。資産価値が高まり、保存モードに入っているオーナーも決して少なくないなか『GT-Rは走ってナンボ』の姿勢を貫き、街乗りからイベントまでフル活用している姿は、眩しく感じてしまうほど。
若きオーナーの手で蘇る名車、R32スカイラインGT-R。走る歓びと人との繋がり、そのすべてを乗せて、よっぴぃーさんはこれからも走り続けていく。

(文: 石川大輔 / 撮影: 清水良太郎)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:西京極総合運動公園 (京都府京都市右京区西京極新明町32)

[GAZOO編集部]