世間的な評価は『マイナー車』でも、MS-6は家族みんなから愛される我が家のドリームカー
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マツダ・アンフィニMS-6(GE8P型)
1989年に始まったマツダの5チャンネル展開。各販売店のラインナップを揃えるべく短期間のうちに様々な車種が登場し、大半のモデルはその後のチャンネルの統廃合と共に短命で姿を消していったという経緯は、自動車ファンの間では知られた話である。
そんな中の一台、アンフィニ店にて販売されていた5ドアハッチバック車、アンフィニ・MS-6(GE8P型)に魅了され、24年という長きに渡り愛用してきたのが『べっきー』さんだ。
「最初の出会いは私が中学生で、松山の自宅から祖父が住む広島に帰省していた時のことでした。たまたま街角で目にしたリヤ一面に広がる真っ赤なテールランプに強烈なインパクトを受けました。祖父の影響で幼少期からクルマ好きではあったけれど、詳しい車種まで識別するほどではなく、その時はどこのメーカーの何というクルマなのか、ということまでは分かりませんでした」
「その後、高校生になった時、学校帰りにいつも立ち寄る本屋さんで1990年代のクルマを集約したカタログ本をパラパラ眺めていたんです。すると、私が衝撃を受けたそのクルマの写真が掲載されていて、マツダ(当時はアンフィニ)の『MS-6』という車名であったことを知りました。それを機に『運転免許を取ったらコレに乗りたい!』と思い始めるようになったんです」
べっきーさんの祖父は、手頃な価格の中古車を見つけては短期間で乗り換えを繰り返すという実践型のクルマ好きだったそうで、べっきーさんも帰省のたびに中古車雑誌で物件探しを手伝い、販売店巡りに同行するのがひとつの楽しみだったという。
もちろん、祖父の愛車候補を探す一方、MS-6の情報にも目を光らせていた。その後、20歳になったべっきーさんは運転免許を取得するため、祖父の資金的サポートのもと自動車学校へ入校することに。そして“すべて”が動き始めたのは、この時だった。
「その日のことは今でも鮮明に覚えています。祖父のクルマに乗って自動車学校で入校手続きを終えた帰り道、コンビニで買った中古車雑誌に掲載されていた一台のMS-6に目が止まりました。それまでも色々な物件を見比べていたけど、どれも程度がイマイチだった中、祖父も『これは良さそうじゃないか?』と二人で盛り上がり、その足でお店に行ってみようということになりました」
「実車の状態は予想していた以上に素晴らしくて、価格も予算内。これを逃すと後悔しそうな気がしたので、運転免許を取る前に購入を決めてしまいました」
典型的な隔世遺伝とも言うべきか、祖父の強力な後押しもあってMS-6の購入を決断したべっきーさん。しかし、ウキウキ気分も束の間。父親からは『学生の身分で何の相談も無くクルマを買うなど言語道断!』と猛説教を受けることに。
「父に怒られるだろうということは予想してはいましたが、それよりも、今このタイミングで買わなきゃという気持ちの方が強かったですね。大学生の甘い考えで、運転免許の取得費用を世話してくれたので、クルマの代金も祖父が助けてくれるんじゃないかな〜、なんて思っていましたが『お前が欲しいんだろ? だったら自分で買いなさい』と言われ、24回払いのローンを組みました」
「ただ、これには後日談があって、5回の支払いを終えて6回目の手続きをしようとしたところ、お店から“全額完済されています”との連絡が届いたんです。祖父が残債分を一括で払ってくれていたんですね。たぶん、私が本気でMS-6を手に入れたいのか、その本気度を試していたのだと思います」
こうして2001年に、自身にとって初めての愛車としてMS-6を迎え入れるという夢を果たしたべっきーさん。それから23年もの時間が経過し、購入時は6万2000kmだったオドメーターは、なんと47万kmを突破。
その間、大学生から就職、結婚と、自身を取りまく環境も変化を重ね、今では3人の子供を持つ良きパパに。MS-6も25万km走行時にはトランスミッションを交換したほか、腐食したマフラーや各ブッシュ類の交換など、手を加えていない部分は皆無と言えるほどのメンテナンスを繰り返してきた。
「現存するMS-6の大半は2リッターエンジン車なのですが、私のクルマは1800ccのV6エンジン車なので、機関部分の部品の手配には苦労が多いですね。整備は基本的に、今住んでいる大阪の関西マツダさんにお世話になっていますが、ディーラーでも入手が困難な部品も結構増えているので、それらについては私がインターネット経由で海外から取り寄せています」
「MS-6ってヨーロッパ、特にドイツでは高い評価を受けているんですよ(輸出名マツダ・626)。数年前に旅行で現地を訪れた時には驚くほどの台数が走っていて“これだけ走ってるなら、部品関係は当面大丈夫だろう”と、勇気づけられました。つい先日もECUがトラブって長期入庫となっていましたが、国内では補修品が無く、ネットで探していたところ、デンマークの業者さんが修復に応じてくれたおかげで無事、社会復帰することができました」
33年落ちという年式をモノともせず、普段乗りにガンガン使われているMS-6というのは、全国的に見てもかなりレアなケースであるはず。
しかも、べっきーさんがおっしゃる通り、2リッターのフラッグシップモデルならばまだしも、ミドルグレードとなる1.8リッターモデルが今でも現役で走っているというのは奇跡に近いと状況と言って良いかもしれない。
ちなみに、べっきーさん自身、最後に愛車以外の姿を公道上で見たのは6〜7年前だったという。「たまたま大阪の街中で見つけて、嫁と“おーッ!”って大騒ぎしましたね(笑)」
「このクルマは子供達もお気に入りで、出掛ける時はいつも家族5人一緒。国内では沖縄を除く全県を走破しました。移動は基本的には陸路で、たまにはフェリーも使うけど高速はできるだけ乗らずに、深夜に一般道を走って距離を稼ぐというパターンが多いです。5人分の居住空間がしっかり確保され、トランクにも荷物をどっさり詰め込める5ドアハッチバック車って本当に便利で、個人的にはもっと評価されても良いと思いますね」
そんなMS-6の長所、短所を知り尽くしたべっきーさんには、もう一台とんでもない隠しダマがあった。なんと、MS-6のベースモデルとなった、4ドアセダンのマツダ・クロノスも所有しているというからビックリである。
今となっては、クロノスを目撃することも皆無なので、そんな“レア姉妹車”を一手に所有する人こそ、滅多にいるものではない。
「2年ほど前に、エアコン関係の部品を探していた時に、たまたまネットでこのクルマと同じボディカラーのクロノスを見つけたんです。この先、色々と修理が必要な箇所が出てくるだろうから、MS-6の部品取り用として、まるっと1台持っておくのもアリかな? と思いまして。嫁さんに相談すると、とりあえず『みんなで実車を見に行こう!』という話になりました」
「幸運にもエンジンは私と同じ1.8リッターのV6で、エンジンをかけたら子供達が『パパのMS-6と同じ音がする!』と、ちゃんと音を聞き分けていたのには驚きましたね。嫁さんも『色が同じだからボンネットとか、使いまわしができるんじゃない?』と、購入に賛同してくれて、そのままハンコを押しました」
ちなみに、部品取り車であったはずのクロノスもナンバーを取得し、セカンドカーとして活躍しているという。
「そんなこんなで、もっとフツーに乗れるイマドキのクルマに乗ることを強要してくることもなく、修理代の出費を許してくれている嫁さんには感謝ですネ」
MS-6の車体にはヘコミや小キズも見受けられ、新車同然というワケにはいかないが、それらは西へ東へ、家族を乗せて走り続けてきた証。べっきーさんにとってMS-6は1990年代のマツダを代表する名作のひとつであり、リヤシートで笑顔を浮かべる子供達には沢山の想い出をもたらしてくれる、最高のドリームカーとなっているようだ。
(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:島根大学 松江キャンパス(島根県松江市西川津町1060)
[GAZOO編集部]
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