孫とのドライブに向けて見た目も中身も磨き上げる。人生3台目のR31スカイライン
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日産・スカイライン(R31型)
1970年代初頭の国産車で、圧倒的な人気を誇っていた車種と言えば日産・スカイラインだろう。当時、国内レースで無敵の強さを誇ったスカイラインGT-Rは、多くのクルマ好きにとって憧れの存在であった。
しかし、排気ガス規制とオイルショックがその地位を揺るがす。規制をクリアできないGT-Rは姿を消し、スカイライン人気の根幹となっていたレースでの活躍も激減してしまったのだ。
1980年代に入り、排気ガス規制やオイルショックの影響が薄れ、再び高性能な市販車が、市場を賑わせるようになると、高性能GTの本家となるスカイラインもハイパワーモデルを登場させたが、かつてのような圧倒的な人気を復活させるまでには至らなかった。これは速さだけでなく、高級さや豪華さがクルマに求められるようになったという時代背景も関係しているだろう。
そんなハイソカーブームの真っ只中となる1985年に、7代目スカイラインがデビューを果たす。多分にハイソカー要素を取り入れたことで、スカイラインの熱狂的ファンからは猛反発を受けたが、1987年のマイナーチェンジでは、グループAホモロゲーションモデルとなる『GTS-R』グレードを800台限定で設定するなど、スカイライン本来の魅力を強調。第二世代GT-R復活の架け橋としての役割を果たしたモデルとなった。
スカイラインGTS-V(R31型)を、25年ぶりに愛車にしたという『さんいちろう』さん。「自分の人生で3台目のR31スカイラインになります」とおっしゃるように、これまでのクルマ人生で、過去にもR31スカイラインを2回愛車にしていたことがあるという。
歴代の愛車遍歴を伺うと「学生時代のアルトワークスにはじまり、AE86レビン、そしてR31スカイラインを2台乗り継いで、R32スカイライン、70系ランドクルーザー、そして現在のR31スカイラインとなります」というお答えが。
R31スカイラインが全7台中3台を占める以外は、現在52歳というさんいちろうさん世代のクルマ好きにとって“走りが良いクルマ”を乗ってこられてきたご様子だ。
R31を2台乗り継いだ理由を伺うと「1台目のR31スカイラインは、シングルカムだったんです。結婚して子供を授かり、AE86レビンだとやっぱり不便なんで、4ドア車にしようと選んだので、シングルカムでも問題ないだろうと思っていたのですが、やっぱり乗ってみるとパワーが欲しくなっちゃったんです。それでツインカムターボのR31スカイラインに乗り換えたというわけなんです」
ちなみに、実は家族のために仕方なく4ドアを選んだのかと思いきや「R31の4ドアハードトップのスタイリングが前から好きだったんです」と、さんいちろうさんにとってはR31スカイラインに乗るちょうど良いキッカケだったのかも知れない。
2台目のR31スカイラインも、当然同じ4ドアハードトップ。というより、ボディ色も黒/銀のツートンと、1台目とまったく同じ車両を選んだという。
「実は妻には内緒で、1台目から2台目のR31スカイラインに乗り換えたんです。ボンネットを開けなきゃ、見た目はほとんど同じなので、バレないと思って」
奥様が本当に買い替えたことに気づかなかったのかどうかはともかく、さんいちろうさんは、パワフルになったR31に満足…するはずだったのだが「とにかくよく壊れる個体に当たってしまったようで、オーバーヒートやエアコンの不調など、故障続きで家族からは当然大不評でしたね」
結局、修理に追われる日々に嫌気がさしたのであろう。R32スカイラインへと乗り換えることとなったそうだ。
そんなご家族にとっては少々(?)ネガティブな印象もあるR31スカイラインを、2年前に再び手に入れたというさんいちろうさん。
奥様は猛反対だったそうだが「自分のヘソクリ以外の貯金を、妻がすべて管理するってことで、なんとか了解してくれました」と、なかなかの厳しい条件付きながらも、どうにか了解を得たという。
そうまでして、なぜ再びR31スカイラインに乗りたかったかと言えば、現在の愛車となる1989年式スカイラインGTS-Vツインカムが程度極上の低走行車だったから。
手に入れた時の走行距離はなんと2万5000kmと、34年が経過したクルマとしては驚くべき低走行車。内外装のコンディションも、走行距離に見合うとても良い状態だったそうだ。
しかし奥様からは、角張った白いボディ形状からなのか、修理が多かったクルマのイメージが払拭されていないのかはわからないが、いまいち不評だったとのことである。
そんなR31スカイラインを手に入れるにあたり、もうひとつ奥様は条件を課していたそうで、それは『私が定年を迎える65歳まで、クルマの買い替えは禁止』というものだったそう。
こちらに関しては「コンディションが良いとはいえ、古いクルマですから絶対にトラブルは発生するじゃないですか? 妻が65歳までクルマを買い替えてはならないと言っているんですから、壊れても堂々と(笑)修理して乗り続けることができます」と、さんいちろうさんにしてみれば、ある意味ありがたい条件だったようだ。
さんいちろうさんにとってR31スカイラインは、趣味のクルマというよりも通勤に使う日常の足がメイン。「片道20kmの通勤なので、オドメーターはこの2年で4万kmを超えました」と、旧車として考えるとなかなかハードな乗り方をされていらっしゃる。とは言え、もともとのコンディションが良かったからか、現在のところ大きな不具合は発生していないという。
基本的にはオリジナルのコンディションを保ちつつ、少々のカスタマイズも楽しまれているご様子。ホイールに関しては、元々メッシュホイールが好きだったそうで「マフラーをフジツボ製の車検対応デュアルマフラーに、ホイールもスターロード製に交換しています」とのこと。
「当時、オプション設定されていたBBS製の15インチが欲しかったんですが、今となっては、あっても程度が悪いものばかりで、他のメッシュホイールを探すことにしたんです。けれど、今時15インチホイールというのは、軽自動車用がほとんどで、なかなかR31にフィットするものが見つかりませんでした。そこで見つけたのが、スターロード製のグロースターでした。サイズのバリエーションが多くて、欲しいと思っていた7.0J-15でオフセットが+20mmというサイズがあったんですよ! スターロードさんに直接問い合わせをした時、電話対応してくれたのは、恐らく社長さんだったと思うんですが、希望サイズを伝えたら『安牌だねぇ〜』なんて反応してくださったり(笑)。そうして取り寄せて、無事に履かせることができたんです」
「フットセレクターがまだしっかり機能していて、それならばと、足まわりはノーマルをキープしています」
ちなみにフットセレクターとは、ショックアブソーバーの減衰力を室内から調整できる装備のこと。センターコンソールに設けられたダイヤル式スイッチにより、ソフト、ミディアム、ハードの3段階調整が可能。そのショックアブソーバーが抜けずに機能しているのも、現在でも4万kmという低走行車ならではだ。
さんいちろうさんのR31のトランスミッションはATとなる。購入時はMTに載せ替えようと思っていたそうだ。
MT需要の高いR31だけに、専門店には合法的な載せ替えメニューが用意されており、さんいちろうさんも、そのメニューを施してもらう予定だったそう。
「ちょっと仕事で左足を痛めてしまいまして、今はだいぶ良くなったんですが、クラッチペダルの操作が辛くなってしまったんです。そんなこともあってMT化は断念した、というか、今にしてみればATで良かったという感じですね」
ATとの組み合わせでも、RB20DETの直列6気筒ならではのフィールをとても気に入っていらっしゃるという。「角張ったデザインのピラーレス4ドアハードトップのスタイリングと共に、直6のエンジンフィールは、自分にとってはR31スカイラインになくてはならない魅力といえますね」
そんなエンジンフィールを維持していくべく、メンテナンスにも余念がない。実は取材時がちょうど車検時期で、取材の日程に合わせて整備工場への入庫日を調整してくださったそうなのだが「今回の車検では、タイミングベルトやウォーターポンプの交換をやってもらうことになっています。これからは不具合が出る前に、いろいろと予防整備をしていこうと思っているんですよ」と、語ってくれた。
「今年の冬には初孫を授かる予定なんです。R31スカイラインにベビーシートを付けて、ドライブしたいですね」というさんいちろうさん。
奥様との約束で、少なくともあと13年、65歳まではこのR31に乗らなくてはならないワケだが、R31スカイラインとの付き合いは、まだまだその先も続いていきそうだ。
(文: 坪内英樹 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:徳島中央公園 (徳島県徳島市徳島町城内1-番外)
[GAZOO編集部]
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