速すぎず、派手すぎず、ちょうどいい。20年寄り添い続けた『スカイラインGTS-tタイプM』のある暮らし

  • GAZOO愛車取材会の会場である『米子駅前だんだん広場』で取材した日産・スカイラインGTS-t タイプM(HCR32型)

    日産・スカイラインGTS-t タイプM(HCR32型)


最高峰のGT-Rを筆頭に、パフォーマンスグレードから普及グレードまで多彩なラインアップが用意されていた日産スカイライン(R32型)。
なかでも手軽さと高性能を武器にしたFRターボモデルのスカイラインGTS-tタイプM(HCR32型)とともに、20年にわたって走り続けているのが『masaya_typem』さんだ。

「大学生の頃はNAのスカイラインGTSタイプSに乗っていたんです。でもターボ車が欲しくなり、就職を機に乗り換えたんです。タイプMのスタイリングも気に入っていたとはいえ、当初はこんなに長く乗り続けるとは思っていなかったのですが…扱いきれないほどではない、速すぎない性能と燃費のバランスは、ゆるく乗り続けるにはちょうど良かったんですよ。走りの性能を求めれば、シルビアやRX-7などの方が楽しめそうですから、言い方は悪いかもしれませんが、スポーツカーとしては中途半端なところが逆に乗り続けられた理由なのかもしれませんね」

masaya_typemさんが、タイプMに乗り換えた理由のひとつがターボチャージャーを搭載していること。しかし、スカイライン好きのオーナーさんに多い“レースきっかけ”からオーナーになったのではなく、GTSタイプSに乗っていたからこそ、ターボモデルにも興味が湧いたのだとか。
「自分は子供の頃からクルマ好きだったわけではないので、生まれる前にこのスカイラインがレースで活躍していたことなどはあまり興味がなかったんです。どちらかと言えば、大学に入って周囲からの影響や、ゲームからクルマに興味を持ったタイプなので、ターボを搭載していても付き合いやすいタイプMが好みのど真ん中だったんです」

購入時は走行距離6万8000kmのワンオーナー車で、コンディションも抜群だったというmasaya_typemさんのタイプM。
搭載されるエンジンは最高出力215psのRB20DETであり、280psまで引き上げられたRB26DETTを搭載するGT-Rと比較すれば性能的には大人しくなっているが、それでも標準車の中ではトップクラスの性能。R31型の最高峰モデルであったGTS-Rよりも5psほど最高出力が高められていたのだ。
そんなエンジン本体に関しては、オーバーホールなどは行っていないものの、消耗品となるセンサー関連はリフレッシュ済み。大きなトラブルや不安もなく、日常でも乗り続けられるコンディションをキープしているという。

エクステリアに関しても、フロントバンパー以外は購入時のままでタイプMオリジナルのスタイリングをキープ。ボディは純正カラーでリペイントが行われているため、経年を感じさせないほど美しいコンディションが維持されている。

「同じスカイラインとして、GT-Rに興味がないと言えば嘘になりますが、やっぱり5ナンバー車でFRという、付き合いやすいパッケージを持つタイプMの方が自分にはしっくりくるんですよ。だからバンパーはGT-Rルックですが、ボディをワイド化したりGT-Rグリルに変更したりといったイジり方は考えていませんでしたね」

この年代のクルマを得意としているプロショップを紹介してもらい、足まわりのブッシュ交換からアライメント調整までしっかり行った甲斐もあって、ハンドルを取られるようなストレスもないという。
また、結婚してファミリーカーとしても活用するようになったため、エアコンもしっかりと効くように3年ほど前に刷新。猛暑でも気軽に出掛けられるように手を加えている。

長距離の移動でも不安がないのは、日頃からこうしたメンテナンスやアップデートをしっかり行っているからこそ。常に安心して楽しめるように整備に予算を振り分けているというわけだ。

とは言っても、自分好みの愛車へと仕立てるためのカスタマイズも行われている。特に運転席まわりは、赤ステッチのステアリングやシフトノブ、シフト&サイドブレーキブーツでコーディネート。NISMOのホーンボタンはレアな旧ロゴタイプをセットするなどしてスポーティさを高めている。

「シートは、ホールド性がイマイチなタイプMの純正シートから、GT-R用の純正品に交換しています。このシートは今のようにGT-R人気が過熱する前に購入したので5000円ほどで購入したものなんですよ。最近は、会社の後輩と一緒にサーキットに行くことが増えたので重宝していますよ」
ちなみに、後席にはチャイルドシートを完備しているものの、リヤシートの狭さに加えて、息子さんはタービンの音を怖がってしまっているそうで、家族で乗ることは少ないという。

ボディのリフレッシュと共に、フロントフェンダーに貼られたエンブレムはNAモデルに装着されるブルーに変更。もともと付いていたターボモデル用のレッドエンブレムはセンターコンソールに残している。

「フロントを修理してもらった際に、フェンダーのエンブレムをブルーに交換して、スポーティな主張を抑えてもらったんです。それに合わせてブレーキキャリパーもブルーでペイントしました。スカイラインですと赤に塗る人が多いかと思うんですが、エンブレム同様にあまり主張しすぎず、シルバーのボディに溶け込むようなシックなビジュアルにしたことも、飽きずに乗り続けられる理由ですね」

製造から32年。メーターの数字も20万kmに到達したタイプMながら、その走りに一切の不安はない。
「広島で行なわれた取材会は、気付くのが遅くなって参加できなかったんですよ。その時に後輩が出ていて、ちょっと羨ましいなって思っちゃって。境港とか松江とかドライブに来ることもあるので、鳥取は距離的にもちょうど良いし、タイプMも絶好調なので“このチャンスを逃してはいけない!!”と、今回は越境して参加させてもらいました」と、自宅のある広島から250kmの距離を快適にツーリングして参加してくださった。

「乗りはじめた頃は、こんなに長く乗り続けるなんて思っていませんでしたよ。どこかで『スカイラインならR34セダンとかに乗り換えるだろうな』って。けれど気付いたら20年、メーターの数字も20万kmを指しています。他に乗りたいと思えるクルマにも出会わなかったし、ちょっと興味を持って試乗したクルマもピンとこなくて…。現代のクルマはスゴイって感じますが、本当に欲しいと思えるクルマに出会うまでは、まだまだ乗り続けていくんだろうなって思います」

直6ターボ、5ナンバーのFRクーペ。そして、当時ならではのスタイリングと4隅が認識しやすいコンパクトなボディ。masaya_typemさんが求めるすべてが詰め込まれたスカイライン タイプMは、単なる移動ツールではなく、カーライフを彩る主役として、これからも緩やかに走る楽しみを満喫させてくれる存在でありつづけるだろう。

(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:米子駅前だんだん広場(鳥取県米子市弥生町2-20)

[GAZOO編集部]