全日本ラリー参戦車のアルトワークスと共に走り続ける先に見据える夢とは
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スズキ・アルトワークス(HA36S型)
近年、日本のラリーファンは急速にその数を増やし続けている。実際にラリージャパン2024では、沿道からの応援まで含めて延べ54万人を超えるファンが詰めかけ、モータースポーツ史に残る賑わいを見せていたほどだ。
そんな日本のラリー文化を支えるもうひとつのレースが『全日本ラリー選手権』。1980年から続く由緒正しいこのレースは、日本各地を転戦することで、北は北海道、南は九州まで各地のファンを楽しませてくれている。
そんなラリーの世界に魅せられて、ラリー一色のカーライフを楽しんでいるのが2015年式スズキ・アルトワークス(HA36S型)のオーナー『よっしー♪』さんだ。
よっしー♪さんが所有するこちらのアルトワークス。なんと、2016年にクスコジュニアラリーチームから『YHGd高崎くす子アルト』の名で全日本ラリー選手権に参戦し、番場選手がステアリングを握った本物のラリーマシンだ。
2017年の新城ラリー終了後に販売され、一旦は他のオーナーの手に渡ったものを2022年に手に入れたというのがオーナーとなった経緯。そのためラッピングやデカールをはじめ、駆動系やサスペンションなども当時のまま残されている貴重な一台となっている。
そんな貴重なアルトワークスを受け継いだよっしー♪さんとラリーの出会いは、2004年に開催された第一回ラリージャパンにまで遡るという。
「北海道で行われたラリージャパンを生で見て、その迫力に圧倒されたのがラリー好きになるキッカケでした。その後、全日本ラリーのギャラリー友達やレプリカ友達、関係者と交流が増えていくとともに、オフィシャルとして手伝いはじめたことで、今ではクルマ趣味はラリーを軸に回るようになってしまいました。でも、そんなコネクションがあったからこそ、本物のラリーカーを手に入れることができたんですよね。このクルマは先の売却時に北海道のオーナーさんの元に行ってしまったのですが、その後改めて売却する話が持ち上がったという情報を聞いて、すぐに購入しました。ラリーにハマるキッカケとなった北海道で、本物のラリーカーを手に入れたのは何かの縁なのかもしれませんね」
本物のラリーカーと言っても、全日本ラリーに出場する車両はすべて一般車と同じ車検に通っていることがレギュレーション。そのため外観こそ派手に彩られているが、エンジンルームはノーマルの状態をキープしている。
ちなみに当時このアルトが参戦していたクラスは、排気量1600㏄以下の2WD車両とAE車両で競われるJN-1クラス。改造範囲が狭いこのクラスでも、スイフトスポーツやデミオ、フィットなど排気量に勝るクルマがライバルとなると、やはりハンデは大きく、最高順位は3位だったそう。それでも唯一の軽自動車であったことを考えると立派な成績と言えるだろう。
装着されているマフラーも、もちろん車検対応。その他、ラリーでのハードな走行に晒されたブレーキ関係は車検に合わせてオーバーホール済みで、今後は足まわりやLSDのオーバーホールもしていく予定だという。
ボディに貼られたデカール類は、基本的には当時のままを残しているが、リヤウインドウに貼られているドライバー名は自分の名に変更している。
競技車両として生まれたラリーマシンだけに、飾っておくだけではもったいないと考え、国内Bライセンスを取得したよっしー♪さん。その際、走らせることを考えたタイヤは、調達しやすくコストパフォーマンスも考えて、ダンロップ製のディレッツァZⅢをセレクトしたという。
ちなみに、競技志向はもともとカプチーノでジムカーナ競技に出場していた奥さんからの影響も強く、ご夫婦揃ってモータースポーツ好きというから、このアルトワークスが持つ本当の価値を楽しみ尽くしているとも言えるだろう。
ちなみに、ディープなラリーファンであるだけはなく、アルトワークスにも深い思い入れを持っている。
「アルトワークス自体は初代からC系、H系と歴代モデルを乗り継いでいて、HA36Sにも乗ってみたいなって思っていたんですよ。そんな時にこのクルマに出会えたのはまさに運命です。これまでも、スターレットやヴィッツのラリー車にも乗っていたことがあるので、アルトワークスとラリー車という“合わせ技”が効いたこのクルマのキャラクターは、まさに自分のクルマ趣味の総括になる感じですね」
「足まわりやデフ関連は、市販パーツとしてラインアップされているものとは違ったスペックになっていると思われます。特にファイナルは大幅にローギヤード化されているのかな? 低回転での瞬発力はあるのですが、トップスピードの伸びがなく、セントラルサーキットのストレートでもメーター読みで140km/h出ないくらいですから。でも今後、このクルマでジムカーナの地方選に参戦する予定ですので、このファイナルのギヤレシオが活きてくるんじゃないかな」
全日本ラリー選手権に出場していた本物のラリーカーということで、その派手なスタイリングは目立つこと必至。そのため普段使いはあまりせず、日曜朝の峠ツーリングやミーティング、モータースポーツでの活用がメインとなっている。
デカール類は今後も残していく予定だが、紫外線などで劣化しはじめている部分もあり、同様のデザインで作り直すか、自然なエイジングとして、このままの風合いを楽しむかは考えどころだという。
競技車両らしく、フロア下にはセーフティ21製のスキッドプレートや燃料タンクをカバーするアンダーガード等もしっかりと装着されている。そのためラリー本戦で使用されていたにもかかわらず、フロア周りのダメージはほとんど見当たらない。現在もクスコではこのアンダーガード類が販売されており、このクルマに装着されているのが、そのプロトタイプとなっている可能性も高いという。
セーフティ21製のロールケージも、万が一のクラッシュでもドライバーとコ・ドライバーの安全を確保するため、サイドクロスバーまで頑丈に加えられている。
ここまでロールケージを本格的に組まれてしまっていると、乗り降りが面倒に感じてしまうかもしれないが、逆にその面倒さによって本物のラリーカーであることが感じられ、優越感を味わうことにも繋がっているという。
バケットシートは大きなヘッドガードが付いている競技向けアイテムが装着されていたが、公道走行がメインということで通常タイプのバケットシートに交換。よっしー♪さんが手を加えた数少ないポイントのひとつである。
ルーフライニングには、2022年のラリージャパンから会場で出会ったドライバーのサインを集めている。オジェやラトバラ、勝田貴元選手、モリゾウ選手といった世界的なドライバー達の豪華サイン群は、ラリーファンとしてのお宝度もアップ。本物のラリーカーであるとともに、一生涯の記念としても貴重な一台に進化しているというわけだ。
ご夫婦揃ってモータースポーツ、特にラリーに熱中するよっしー♪さん。ラリージャパンには2022年から欠かさず足を運んでいるという。
「全日本ラリー選手権のお手伝いは、今年も三河湾に続きラリー飛鳥など、行けるところはこのアルトワークスで自走して出向いています。加えて、ラリージャパンは必ず夫婦で観戦に行くのがライフワークになっていますね。今後もラリージャパンが継続し続けて欲しいのはもちろんですが、全日本ラリーもラリージャパンに負けないくらい盛り上がって欲しいなとも思っています。そして、ゆくゆくはこのアルトワークスでラリーにも出られれば…なんてことも思い描いているんですよ」
ラリーに熱中し、ひと昔前はラリーレプリカを一から作っていたこともあったというよっしー♪さん。その集大成として幸運にも手に入れることができた『YHGd高崎くす子アルト』は、まさに夢のクルマでもある。
しかし、手に入れたことで夢が完結したのではなく、手に入れたからこそ広がる夢もある。ジムカーナへの参戦を足がかりに、ラリーへの出場という新たな夢を実現するため、よっしー♪さんとアルトワークスは走り続けるのである。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:米子駅前だんだん広場(鳥取県米子市弥生町2-20)
[GAZOO編集部]
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