「人生で初めて欲しいと思ったクルマ」バラードスポーツCR-Xが繋ぐクルマ好きの輪

  • ホンダ・バラードスポーツCR-X


漫画“サーキットの狼”を読んだことに影響され、気づけばスポーツカーに憧れるクルマ好きになっていたというオーナー『オハケン』さん。

そんな彼にとって印象的だったのが、まだ運転免許を持っていない高校生の頃に見た、とあるCMだったという。
サロンミュージックの音楽をバックに、切り抜きの写真を使い、止め絵でポップに進行していく初代ホンダ・バラードスポーツCR-Xのコマーシャルムービー。それを見た当時のオハケンさんは、ディーラーへと出向いてCR-Xのカタログを手に入れるほどに憧れを抱いた。

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xのリア

だが、そこからしばらくは憧れのままという月日が流れていった。やがて大学生となり、そこでオハケンさんを直撃したのは、アイルトン・セナとホンダF1の全盛期であった。地上波でF1が放送され、その中継を見るにつれて、気づけば自然とホンダ党に育っていったそうだ。

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xのエンブレム

オハケンさんの初めてとなった愛車は、バラードスポーツCR-Xよりも手軽に購入できたという後継モデル、通称サイバースポーツと呼ばれるEF型の2代目ホンダ・CR-Xだった。

「その時に購入したのは1.5リッターの方で、モデル末期に出た“リミテッドエディション”という一番安いモデルでした」

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xのエンジンルームとオーナーさん

そして大学を卒業し、農業関係の仕事に就いたというオハケンさん。26歳でご結婚され家庭を持つに至るが、それからもずっと自宅にはホンダのクルマが愛車としてあり続けているという。

「結婚してからは、趣味のクルマと家庭と通勤に使うクルマは完全に分けるようになりました。家のクルマはCR-V、オデッセイ、フリードと乗り継いできましたね。その中でもオデッセイは家族で遠出する時にもよく使ったので、20万キロを超えるほど走りました」

いっぽう、オハケンさんが休日に乗る趣味のクルマは、2代目CR-Xを手放してからは、外車を中心に様々なメーカーを行ったり来たりしていた。

「まずは角ばっているボディのフィアット・パンダの初代型。これも趣味と言いつつファミリーカーでもあったんですけどね。次に10年くらい乗ったアルファロメオ・156はスタイリングが好きで購入した完全に趣味のクルマでした。ただ、これが気難しいクルマで、オイル漏れする頻度が高く、電装系のトラブルでエンジンが止まってしまってJAFを呼んで助けてもらうなんてこともありました(笑)。けれど、これらの経験でクルマの調子が崩れるということに耐性がついたので、古いクルマでも恐れず乗れるようになった気がします」

次にオハケンさんの趣味の愛車となったのはマツダ・ロードスター。人生初のオープンカーに乗ってみたいという気持ちで、2リッターエンジンを搭載した3代目モデルのNCEC型を選んだそうだ。

  • ファット・パンダ
  • アルファロメオ156

そうしてNC型ロードスターに乗っていた2020年、ついに現在の愛車であるバラードスポーツCR-Xを手に入れるキッカケとなった出来事が生まれる。

「先祖から代々続いている土地に家があって、道路を挟んで向かいには兄貴の家が建っているんです。兄貴も外車を乗り継ぐようなクルマ好きでガレージを持っていますね。ウチはもう少し狭い屋内ガレージなんですけどね。そんな環境なんですが、ビールがたくさん入った冷蔵庫がウチの車庫にあって、兄貴もビールが好きだから夜は飲みながら二人で話すことも多くて」

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xのサイドデカール

「兄貴も私がバラードにいつか乗ってみたいと思っていることは知っていて、そんなことを話しているうちにインターネットで奈良県の中古車屋さんに良さそうなバラードがあると話題になったんです。兄貴からも人ごとだからと、気軽に『見に行けば?』と勧められ、酔ったままの勢いで翌日の来店予約をしたんです(笑)」

  • ホンダ・バラードスポーツCR-XとPIAAのフォグランプのカバーを持つオーナーさん

そして和歌山県から隣県へと、バラードスポーツCR-Xの現車確認に向かったオハケンさん。その場には奥様も同席していたという。

「理想の前期型ではなく後期型だったけど、ボディもキレイで程度もそこそこ。生で見るとやっぱり欲しいなあと心の中で思っていたら嫁さんが『欲しいんやろ?』と。だから『欲しいです』と正直に答えました」

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xの運転席

これまでも、オハケンさんのクルマ好きな性格を知り、趣味は趣味だからと認めてくれていたという奥様から返ってきたのは、『好きにしなよ』という、愛情ある深い一言であった。

こうして身近な二人から背中を押されるカタチで、オハケンさんが人生で最初に憧れた1台である、バラードスポーツCR-Xのオーナーになることが決まったのだ。

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xの前期型に換装したヘッドライト

CR-Xの購入後、オハケンさんがまず着手したのはフロントフェイスの前期化だ。いわゆる奥目と呼ばれるリトラクタブルヘッドライトが被さるような特徴的なスタイリングを実現するためにヘッドライトなどの周辺部を移植し、前期型のフロントフェイスへ変更した。

また、走行に支障はないものの、頻発していたマイナートラブルは信頼できる付き合いの長い整備工場へ依頼し、その都度メンテナンスをしているという。

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xのエンジン

「浜名湖で開催されている“昭和のホンダ車ミーティング”に行けたのも良かったですね。SNSで知り合った人に誘われて行ったんですが、そこで10数台のバラードオーナーと知り合えて『こういう不調が出ているんです』と相談したら、すぐにココをこうしたら良いと教えてもらって、パーツまですぐに手配してくれたんです」

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xの履くCF48ホイール

オハケンさんの装着している無限製のCF48ホイールや、フロントバンパーなどもそれら有志の方々から譲ってもらったものだと言う。

「普段からパーツを融通してもらってお世話になっているから、今の季節になると“みかん”をお送りするんです」と、和歌山の土地柄らしく、みかん農家の兄のもとで収穫された有田みかんを送るのが恒例となっているのだとか。

  • ホンダ・バラードスポーツCR-Xの運転席に座るオーナーさん

この見た目をキープしたまま、維持し続けていきたいと話すオハケンさん。バラードスポーツCR-Xオーナー同士の強い絆のおかげで、これから先も末永く愛車ライフを送っていけることであろう。

  • ホンダ・バラードスポーツCR-X

(文:長谷川実路 / 撮影:清水良太郎)

※許可を得て取材を行っています
第四回 昭和の乗り物大集合in片男波海水浴場2024
取材場所:片男波海水浴場(和歌山県和歌山市和歌浦南3丁目1740)

[GAZOO編集部]

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