父の面影が残るN-WGN。親子の思い出を乗せて走り続ける
「N-WGNは2年前に亡くなった父のクルマなんです」と話すのは小澤さん。寡黙な人だったというお父様が残したクルマを、何故か手放すことが出来ずに自分で修理をしながら乗り続けているとのことです。
その理由は「なんとなく」とのことでしたが、そこにはしっかりと親子の絆が垣間見えました。
小澤さん×N-WGNのカーライフをお届けします。
――どんなお父様だったんですか?
クルマ好きでしたね。僕が覚えているだけでも、カローラGT、グロリア、セドリックなど色々なクルマに乗り継いでいて、どちらかというとスポーツカーが好きでした。
若い頃は、よく峠を走りに行っていたみたいで、学生の時に僕が「榛名山を走ってくるね」と言うと、「頂上から降りてくる時は気をつけろよ。路面が逆カントだからな」とボソッと助言してくれたことがあったんです。親父……、めちゃくちゃ走り込んでいるじゃないか……と、驚いたのを覚えています(笑)。
幼い頃はお父様と一緒にドライブに行くことが多かったそうで、「ちょっとドライブいこうか」と誘われてクルマに乗ると、片道4時間をかけて名古屋まで連れていかれたこともあったといいます。まだ帰ってこないと心配しているであろうお母様に、外郎をお土産に買って帰ったのは良い思い出だとのことでした。
「とにかく、親父のドライブは長距離ランが多いんです。仙台とか岩手とか。ちょっとドライブじゃないんですよね(笑)」とのことです。
――ドライブ中は、何を話すのですか?4時間もあったら、大盛り上がりですね!
あのクルマかっこいいなとか、自分ならホイールを変えるなとか、そのくらいです。父は口数も少ないので、話し込んで盛り上がるとかそういうのは無かったです。
ただ、そのシーンとした車内が心地良いんですよ。エンジン音とか、路面の振動とか、そういうのを感じるのが好きだったんです。父の影響もあってか、僕もクルマ好きですしね!
クルマ好き少年だった小澤さんは、それから何十年かして自動車メーカーで働くことになります。きっかけは、中学校の時に友達とホンダディーラーで見たNSX。こんなにもかっこいいクルマが日本にあったのか!と感動し、日本の自動車メーカーに就職することを決意したのだとか。
小学校の卒業文集に「イタリアに行ってフェラーリに入社したい」と書くくらい、スーパーカーのようなクルマを作っている会社に就職したかったという小澤さんは、子供の頃からの夢が叶い、現在はとても充実した日々を送っているそうです。
――クルマ好きのお父様なら、小澤さんが自動車メーカーに就職して喜んだのでは?
「そうか」という素っ気ない答えが返ってきただけでしたよ。子供を褒めるとか、一緒に喜ぶとか、そういう人じゃないんです。もともと、僕が自動車メーカーに就職したいと言った時も、「お前みたいなバカが出来るわけねぇだろうが!」と言われたくらいですから(笑)。
――なるほど。私なら、もういいよ……恥ずかしいよ……と言われるくらい喜んでしまいそうです(笑)。
昭和の親父って感じの人ですからね。言葉や感情で表現とかはなかったんですけど、今思えば、これが親父なりの祝福の仕方というか、関わり方だったのかなと思うことがありまして。
――なんですか?
僕が就職したメーカーのクルマに乗るようになったんです。今までスポーツカーばかり乗っていたのに、急にミニバンとか軽自動車とか乗るようになっちゃって。
「ふ~ん、今度新しいの出るのか?ちょうど乗り換えるから、お前の所から買うかなぁ。気になってたしな。まぁ、オートサロンでたまたま見かけたしな。それで、ちょっと良いかもと思ったんだよ。たまたまな」とか言うようになったんですよ。
今まで、僕が働いている自動車メーカーのクルマに乗ったことなんてなかったのに!
――きっと、それが小澤さんに対する、お父様なりの愛情表現だったのではないでしょうか?
そうかもしれないです。それまでスポーツカーばっかり乗ってたのに、オデッセイにエアロとホイールつけて乗ってたなぁ。一緒にモーターショーに行って見たエリシオンも、フルエアロで乗ってましたよ。
そのあと、プレステージに買い替えて、50歳くらいでバモスに乗って。60歳でN-WGNに乗って亡くなりました。思い出すと、死ぬまで僕が就職したメーカーのクルマに乗ってたな。
最後のお父様の愛車となったN-WGNの走行距離は5万5000kmで、お父様は6年間ほど乗っていたそうです。サイドステップやホイールを擦っていたので綺麗に塗装し、シートヒーターがついてなかったため、レカロシートを装着したそうです。コンセプトは「通勤快速」で、通勤しても疲れない&快適であることに重きを置いているのだとか。
――自分のクルマもあるのに、なぜN-WGNに乗ろうと思ったのですか?
クルマに乗ると、近くで見守ってくれているような気持ちになるんですよ。
ん~、例えるのが難しいんですけど……。
初めて免許を取って親父をクルマに乗せたことがあるんです。その時、危ない!とか、何やってんだ!とか言うわけでもなく、ただ黙って隣に座って見守ってくれていたんです。その時の感じと似ているかな。ただ、側にいてくれるような、そんな感覚です。
なんとなく。そう、なんとなくです。
今後は少しでも長く乗れるように、レストアをしながら走り込むということです。
「N-WGNに乗ると、これが不思議と親父のことをふと思い出すんですよね」と話す小澤さん。小澤さんとN-WGNの走行距離は、お父様面影を乗せてまだまだ伸びていきそうです。
〈SNS〉
小澤 直也さん
(文:矢田部明子)
[GAZOO編集部]
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