跳ね上げ式ドアに憧れて購入したトヨタ・セラ。個性的な仲間達に囲まれて過ごした、27年の歳月。



今回取材させて頂いた「団長さん」はスーパーカーブーム ドンピシャ世代。そこまでクルマ好きというわけではなかったのに、昔からドアが上に開くランボルギーニ・カウンタックに憧れを抱いていたそうです。“クルマといったら跳ね上げ式ドアだろ”という刷り込みにより、絶対に跳ね上げ式ドアのクルマを愛車として迎え入れるぞ!と決めていたのだとか。

今回は、団長さん×セラ の お話をお届けします。

―――今まで沢山の方に取材をさせて頂きましたが、スーパーカー世代の方のほとんどが“カウンタックが好き!”とおっしゃるんですよ。

僕を含め、そう答える方は多いと思いますよ〜。なんてったって、カクカクした速そうな見た目で、何でかは知らないけど(笑)ドアが上に開くんですから。当時そういったクルマを目にすることがなかったから、跳ね上げ式ドアはかなりインパクトが強かったんでしょうね。

―――セラは、その憧れだったクルマというわけですね。

なんですけど、全体的に丸っこいからドアを開けると鈴虫みたいで、カウンタックとは“何か”違うんですけどね(笑)。まぁでも、上に開くという意味では同類だから、そこは良しとしています。

1990年3月から販売が開始されたんですけど、ベースグレードで160万円、上級グレードで約180万円を出して新車を買うお金が当時は無くてね。だけど、どうしても諦められなくて、中古車雑誌を眺めること7年。滋賀在住でしたが、大阪の中古車販売店で38万円のセラが出たので購入しました。

―――では、待ちに待っての購入だったんですね。実際に愛車にしての感想は?

う〜ん。暑かったね。

―――なんか、もっとこう……感無量です的なコメントはないですか?

あぁ!えっと……。いや、暑かったね(笑)。今年の夏なんて地獄ですよ〜?体がジリジリ焼かれていくのが分かるというか。加えて、坂道もかなり遅いし。だけどね、所有した嬉しさで、そんな些細なことは気にならないくらい素敵なクルマだったんですよ。

それよりも、個人的な感想ですが、アクセル踏むとトゥルルルって独特な音がすること、走り出しがスムーズなこと、エアコンから緩い空気が出てくる楽しさの方が重要だったんです。だからこそ、3年乗って白い煙を出して動かなくなった時、次の愛車もセラにしたいと思ったくらいですから。

―――ということは、今乗っているのは2台目のセラなんですね。

はい。下の子が産まれて、2代目も廃車になりかけたこともありましたが(笑)、何だかんだ人生の半分をこのクルマと過ごしています。

―――結局、廃車にしなかったのですね?

する予定だったんですけどね(笑)。そもそも、そういう流れになったのは、平成20年に妻から「今年でセラは廃車にする」と通告があったのが始まりなんですよ。

それで、ディーラーに行って廃車の相談をしていた時に、「下の子が物心つくまでは乗りたかったな」ってボソッと言っちゃったんです。そしたら、それを聞いていた妻が、次の日に車検を受けてきてくれるという奇跡が起こりました。多分、僕がすごく楽しそうに乗っていたのが、伝わっていたんじゃないかな。

部品が無かったり、新型車と比べると機能は全く充実していないけど、個性的で癖になるし、なにより同じセラオーナーとすごく仲が良いから、そのためにも乗り続けたいと考えているんです。だって、こんな変わったクルマに乗っている者同士、合わないわけがないですからね(笑)!

―――類は友を呼ぶというやつですか。

そうそう。今は大阪に住んでいるんですけど、突然「GWに大黒PAで集まるから来る?」なんて、Facebookで不特定多数に呼びかけがあったから7時間くらいかけて行ったら、「やっぱり来ると思ってた〜」なんていうやり取りはしょっちゅうです。子供が小さい頃は、2人を乗せてミーティングにもよく行きましたしね。

それこそ、去年は長野の女神湖でミーティングをしたんですけど、みんな乗り換えたりしているのに、それでも仲間に会いにやって来ますから。

途中まではオーナーズクラブの会則に、“ミーティングに参加できるのはセラオーナーのみ”という規約もあったんですけど、それじゃあみんなに会えなくて寂しいじゃないということで、その規約はいつのまにか形骸化していました(笑)。現存しているセラを眺めながら、こうだったね〜ああだったね〜と、思い出話に花を咲かせるのが楽しいんですよ。

毎年、四国から元セラ乗りオーナーが、日産・ホーミーに乗ってくるんですけど、集合写真はその屋根の上から撮るっていうのが定番になりつつあります。もちろん、セラ自体も好きなのですが、そういった繋がりを大事にしたいというのも大きいですね。

―――今後は、どういうふうに乗っていきたいと思っていますか?

無理をせずに、長く付き合っていけたらと思っています。なんてったって、僕には信頼できるセラオーナー達が沢山いますから。

ついこの間、走行距離が20万Kmを突破したと話してくれた団長さん。その時に、ふとこれまでの軌跡を思い出したそうです。お子様を保育園へお迎えに行った際、跳ね上げ式ドアだとチャイルドシートから降ろすのが楽で、意外と子育て世代に良いと感じたこと。

その子供達が大きくなって、大阪南港の方で免許取得の練習に付き合ったこと。無事に免許を取った後、旅行に行くからと貸したらバンパーに傷がついて帰ってきたことなど、今思えばどのシーンにもセラがいたと懐かしそうに話してくださいました。

そして、それはこれからも同じで、セラと一緒に人生を歩んでいきたいということでした。次の目標は30万Kmとのこと!セラライフを楽しんでください!

(文:矢田部明子)

MORIZO on the Road