所有34年。スバル アルシオーネとのカーライフは、僕の人生を彩る「ライフワーク」
1980年代まで多く生産されていた「ウェッジシェイプ(くさび形)」のクルマ。
横から見ると、先端が尖った「くさび」に見えることからそう呼ばれています。ランボルギーニ カウンタックやランチア ストラトスなどのスポーツカーに多く、空気抵抗の軽減を目的としています。
今回は、この「くさび形」のスタイルで知られる名車・スバル アルシオーネを所有する五条銀吾さんが主人公。愛車とのエピソードはもちろん、長年所属しているオーナーズクラブへの想いも伺いました。
――このアルシオーネはいつから所有していますか?
1993年から乗っているので34年目に入りました。実は1台目のアルシオーネがもらい事故で廃車になってしまったので、2台目のアルシオーネなんです。年式は1985年式で、走行距離は30万キロ走っています。
――走行距離が歴史を物語っていますね!なぜこのクルマを選んだのですか?
最初はスズキ アルトと日産 スカイライン(R30)に乗っていました。でもその2台とも不慮の事故にあったこともあり、次のクルマは安全性に優れた4WD、ノッチバッククーペという条件で探したらアルシオーネくらいしかなかったんです。
――当時、アルシオーネに惚れ込んだというより条件で選んだことが意外です
アルシオーネ中心の生活になってからは、魅力を知るほどに惚れ込んでいきました。家族には不評だったのですが(笑)。
――五条さんが感じる、アルシオーネの魅力は何だと思いますか?
粋なデザインですね。もともと直線的なデザインが好みですし、アルシオーネの機能美あふれる無駄のない造形に惹かれました。現存台数がほぼ皆無と思われる純正コンペティション・ステッカーはアピールポイントですね。
ただ、特殊なデザインなのもあって部品が入手しにくく、エアサスなどの部品も現代より耐久性がなかったので、寿命が短く高額です。しかも日本では8000台しか売れていない…いわゆる「不人気車」と感じている人も多いかもしれません。
このようにハードルの高い部分は多いですが、オーナーが少ないゆえに、オーナー同士の結束が強いのも魅力のひとつかもしれません。
――希少なアルシオーネ、実際に所有していかがですか?
ただこれまで何度か、レッカー移動が必要になるような故障を経験しました。幸いにも毎回、交通の妨げになるようなこともなく、積載が楽にできる状態で止まってくれています。長年連れ添っているから、気を遣ってくれているのかなと思ったりします。
2002年から2009年にかけて大規模なリフレッシュを行い、今では快調です。レガシィ用ピストンの使用や完全バランス取り、フライホイール軽量化、インプレッサ用ターボに換装、インタークーラー増設などを、京都府にある主治医のショップで行いました。
――徹底的ですね。他に手を入れた部分はありますか?
他にはPCD140の15インチホイール、マフラー交換。サスペンション、ストラットタワーバーは他車種からの流用です。ラジエーターシュラウドは自作です。
――五条さんが所属されている、アルシオーネのオーナーズクラブはどんなクラブなんですか?
アルシオーネ オーナーズクラブ「XAVI(クサビ)」といいます。
お互い助け合う、困っているオーナーに対して見返りを求めず助ける。これが、クラブとしてあたりまえのように行っている活動です。また、2代目のSVXのオーナーズクラブ、レオーネのオーナーズクラブ、昭和スバルを主体としたミーティングとも交流しています。
――クラブのなりたちを教えてください
きっかけは1997年、インターネットの黎明期でした。当時大学生だったオーナーズクラブの創始者が、個人のホームページを開設しました。そこにアルシオーネのオーナーが集まるようになり、7人ほどのオーナーたちがやりとりしていることを知って、私も仲間に入れてもらったんです。
1997年にメーリングリストができ、メンバーが30人ほどに急増。これに伴いオーナーズクラブ化の機運が高まったことを受け、翌年の1998年にオーナーズクラブが正式に発足しました。翌1999年には初の全国ミーティング(以降5年に1回開催とのこと)を開催することができました。
――今まで印象的だった出来事はありますか?
たくさんありますが、2015年のデビュー30周年記念イベントを開催した際に、ゲストとしてアルシオーネの開発を担当した高橋三雄さんと碇穹一さんをお招きしたことでしょうか。貴重なお話をたくさんしていただきました。
高橋さんの「レオーネベースの当時では高出力とは言えないエンジンをどうやってカバーするか。空気抵抗を減らしてカバーしていく」などのお話が印象的でした。アルシオーネの一つひとつの部分にアイデアが盛り込まれていることに感動しました。
――開発に関わった方と直接会えるなんて夢のようです!
アルシオーネのデザインを手がけた碇穹一さんは、当クラブにも加入してくださいました。2016年に逝去されるまでの短い期間でしたが、お世話になりました。人懐っこい人柄で、私とは同じ地元だったので親近感もありましたし、素敵な方でしたよ。
――その後のクラブの様子はいかがですか?
現在200人以上のメンバーがいて、新メンバーもここ3、4年で増えています。これからもポジティブに楽しく、アルシオーネを後世に残す活動を継続していけたらと思います。2025年はデビュー40周年というアニバーサリーイヤーです。9月開催を目指して全国ミーティングの準備を進めています。
――わぁ、それは楽しみですね!
先日は、アメリカ人のアルシオーネオーナーのご子息たちが夏休みを利用して来日してくれたんです。日本滞在中のスペイン人オーナーも一緒に「三か国ミーティング」を開催しました。クルマ談義をしたり、日本食を楽しんだりと本当に楽しいひとときでした。
スペイン人の彼は、1980〜1990年くらいのクルマが好きで、母国では自分でクラブを作っているんですよ。
――素敵な時間だったことが伝わってきます。愛車同様に、オーナーズクラブも五条さんにとってかけがえのない存在ですね
クラブの先輩方がいなかったら、私の「アルシオーネ ライフ」はとっくに終わっていたと思います。アルシオーネは希少車ゆえに仲間がいなかったので、共感しあえる仲間を見つけた安心感は大きかったですね。
オーナーズクラブに加入したことをきっかけに、地元の旧車ミーティングの運営やサポートにも携わるようになりました。2015年からは地元の旧車交流会を主催。2018年からはサクラモータークラブの役員として、サクラオートヒストリーフォーラムというミーティングの運営に携わっています。
――最後に、アルシオーネとの今後の展望をお願いします
月並みですが、修理不能な環境になるまで一緒にいたいと思う次第です。そして、嫌がりつつも所有を許してくれている家族に感謝しています。
アルシオーネは、スバルで唯一のリトラクタブルヘッドライトをもつクーペです。デザインゆえに専用部品も多く、部品調達にも苦労するはずだったところを先輩方のおかげで中古部品を共有して維持できています。
しかし、部品供給は正直厳しい状況です。アルシオーネは北米でヒットしたので、海外から取り寄せすることも多いですが、この先安心という保証はありません。部品の問題もクラブで解決していけたらという思いがありますね。
今や「ライフワーク」ともいえるアルシオーネとのカーライフを過ごしている五条さん。SNSでの情報発信ももちろんですが、リアルな交流も大切にしていらっしゃり、国境を越えた交流のエピソードも素敵でした。
五条さんが所属しているオーナーズクラブも新規メンバー募集中だそうです。ぜひアクセスしてみてくださいね。
【Instagram】
Gojo Gingo(五条 銀吾)さん
【X】
五条銀吾さん
【オーナーズクラブ】
XAVI(クサビ)~SUBARU ALCYONE OWNERS’ CLUB~
(文:野鶴美和)
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