大学自動車部ってどんなところ? -九州大学編-
全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢部員をレポート。今回は、本企画初の九州上陸。九州エリアの大会で常勝チームの一校である九州大学自動車部を訪問。
★九州大学自動車部プロフィール
●部員数:男子23名 ※部員数は2014年11月現在
●部車:ホンダ・シビック EK49
三菱・ミラージュアスティ CA4A
●活動内容:毎週土曜日正午~夕方まで箱崎キャンパス内のガレージで活動。個人のクルマの整備や大会前は部車の整備を行う。走行練習は福岡県福津市にある「SPEED PARK 恋の浦」でジムカーナ、ダートトライアルともに実施。12月の「九州フェスティバル」をはじめ、学生だけのレースではなく社会人が主催するレースにも参戦して腕を磨く。
●活動実績:2014年度 第50回 全九州学生ジムカーナ大会 団体戦優勝
2014年度 第40回 全九州学生ダートトライアル大会 団体戦優勝
九州エリアの各自動車部も盛り上がってます!
福岡県西区にある九州大学。1949年に設置された国立大学で「九大(きゅうだい)」の愛称で知られています。2014年に大学本部が伊都キャンパスに移されるなど、これまで学生が多く学んでいた箱崎キャンパスから伊都キャンパスへの移転が着々と進んでいます。
今回伺った自動車部のガレージがあるのは、昔ながらの国立大学という雰囲気を色濃く残す箱崎キャンパス。福岡市の繁華街、博多駅からも地下鉄で数駅とほど近い場所にあります。
「自動車部は工学部の学生が多く所属していて、普段はみんな伊都キャンパスで学んでいます。なので週に1回、部活のために箱崎キャンパスに部員は集まるんです」と教えてくれたのは部長の梅井玲於奈さん。
これまで取材した自動車部のガレージというと、広い敷地を確保するためか大学敷地内の中でも端の方にあるケースが多かったものの、九大自動車部ガレージは正門をくぐった近くにあり、その点でもまずは驚きました。梅井さんに聞けば、ほとんどの学生はクルマ通学できませんが、自動車部の部員は部活動の一環ということでキャンパス内にクルマで乗り入れる許可証をもらうことができるそう。これは自動車部ならではの特権ですね!
訪れた取材日は生憎の天気…。「長崎は今日も雨だった」ならぬ「博多は本日豪雨でした」状態。レースだったら赤旗で一時中断(!?)くらいの雨量にも関わらず、ほぼ全部員が駆けつけてくれるなど手厚く取材班を迎え入れてくれました。
ガレージ内に腰を下ろし、まずは九州全域の大学自動車部について質問。というのも、この企画で九州の自動車部が取り上げられることは初めて。九大自動車部の話を聞く前に、九州全体の話を聞くことにしました。
すると梅井さんが適任者だと呼んでくれたのが、九州地区の学生大会の運営を行う九州支部 委員長の服部航さん。服部さんは九大4年生であり、もちろん自動車部に所属する部員です。「ジムカーナやダートトライアル、ラリーを行う全九州大会(以下、全九)には、九州にある16校の大学自動車部が加盟して参戦しています。来年はさらに1校の加盟が決まっているなど九州地域も盛り上がってますよ!」と服部さん。
福岡県内の大学自動車部同士でパーツのやりとりや情報交換もしていて、九大は特に九州工業大学や隣県の大分大学自動車部と仲が良いそう。九州地域の大学同士のつながりはとっても深いようです。
全九州大会は長年制覇も今年は唯一悔やまれることが…
九大自動車部は学部生16名、大学院生7名が所属。大学院生も活動に毎回しっかり参加していることが特長です。創部してからの歴史も長く、大学院生の積極的な参加は昔から続く伝統とのこと。3・4年生に、大学院生も加えたベテラン部員が1・2年生にクルマのことをレクチャーするという土壌が出来あがっているのです。
部員が日頃の練習の成果を発揮するのが全九です。ジムカーナ、ダートトライアル、ラリーの競技種目があり、それに向けた部車の整備をガレージで行います。ただし、ラリー用の部車はないため、参戦したい部員は個人のクルマでエントリーして戦っています。
レースで勝つため、九大ではダートラ隊長、ジムカーナ隊長などの役職を大会ごとに作ります。部長の梅井さんは「隊長と呼ばれるリーダー1名が、大会に向け部車の整備、エントリーなどをします。部長はそれらをバックアップするのですが、各大会についてはリーダーが指揮を執り整備や練習走行の日程などを部員に指示するんです」と話します。
走行練習は福岡県福津市にある「SPEED PARK 恋の浦」が舞台。部員数が多いので行けば貸し切りで練習できるそうです。同じ敷地内でダートラとジムカーナを練習できるのも利点。また、ドライバーは大会1ヶ月前にサーキットを貸し切って行なう選考会を経て決めます。学年関係なくタイムの速い順でドライバーを決める、まさにガチの選考会です!
全九は年3戦ありポイント制でシリーズチャンピオンが決まります。すでに卒業した先輩部員のさらに上の世代。いや、それよりもっともっと前からジムカーナ、ダートトライアルとも個人戦、団体戦でのシリーズ優勝は長きに渡り九大が連覇してきました。これこそ九大自動車部が名門と言われる由縁。ところが長く続けてきたダートトライアル個人戦の連覇を2014年に北九州大学のドライバーに獲られてしまったのです…。これには、遠方でレースがあると遠征費を負担してくれたり、帰省に合わせてよくガレージに遊びに来てくれるなどバックアップするOBからもハッパをかけられたそうで、「来年は巻き返したい」と部員の皆さんは雪辱に燃えています。
日本で一番硬派なクリスマスイベント!?
今シーズンこそ全九ダートトライアルでの個人優勝を逃しましたが、それでも九州の大会はやはり勝って当たり前で、それより上に目標は設定するのが九大自動車部の慣例。取材時に部長の梅井さんからよく聞かれたのが「七帝戦で勝つこと」でした。七帝戦は全国の7つの旧帝国大学自動車部が参加する大会で、正式名称「全国七大学総合体育大会」。七帝戦、七大戦とも呼ばれます。九大が主幹となった2012年大会では総合優勝を果たしましたが、他の大学が主幹となった大会で優勝することが大きな目標です。
七帝戦ではジムカーナ、ダートトライアルに加えてラリーも行われるなど、競技種目は主幹となる運営大学の方針により毎年異なります。たとえば2014年の大会主幹となったのは京都大学で、そこではジムカーナとSSラリーが実施されました。七帝戦では定期的にラリーが行なわれるのもポイント。ラリー用の部車を持たず、日ごろの練習量不足が否めない九大自動車部では、OBも練習に付き合ってくれるなどラリーに向けた練習を重ねるそうです。
七帝戦で行なわれる、通称「げんこつ」。これはクルマに関係なく行われる別名「第3の競技」と呼ばれるもので、閉会式後に部員の体力を競うユニークなもの。七帝戦に参戦したことのある学生ならほぼ全員が知っているハズです。今年は京都大学の時計台のまわりを走るシャトルランが実施され、なんと九大部員が自らの脚力で優勝! 毎年、持ち回りで優勝者が持ち帰れるカップがガレージに飾られていました。
さて、歴史が長い九大自動車部には、季節ごとにいろんなイベントがあります。その1つが卒業を間近に控える大学院生を祝う「3月の追い出しラリー」です。阿蘇山に近い場所にある九大の宿泊施設に宿泊し、夜な夜な計算ラリーをするというもの。全九のラリーではオフィシャルを務める大学院生ですが、その時ばかりは学部生がオフィシャルに早変わり。大学院生の部員がドライバーとなり最後のラリー走行を楽しむそうです。
また、クリスマスには豪華景品を用意した「クリスマス・ジムカーナ」なる硬派なイベントも毎年実施。トナカイが引くソリではなく、部車に乗り込み聖なる夜を祝います。
このように、気が緩みがちなオフシーズンにこそ、イベントを計画してドライビングテクニックを磨くのは全九や七帝戦での勝利のため。先に書いた、全九での連覇を逃したダートトライアルはこれまで十年以上、部車として走ってくれたレビンから変更し、来シーズンからミラージュアスティを部車にして活動するようで、その整備の真っ最中。雪辱に燃える九大のアスティが来シーズンは見られそうです!
関連サイト
【Twitter】九州大学自動車部(QUCC)
【HP】QUCC Web / 九州大学自動車部
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