比較テストで分かった、無料カーナビアプリの実力(後編)

前編ではナビの設定における機能的特徴や設定、ルート設定を実際に行いその違いをチェックしてみました。
比較テストで分かった、無料カーナビアプリの実力(前編)

後編となる今回は、目的地設定後、ルート誘導や徒歩での使用、そしてデータ通信量などをチェックします。

シンプルか、それとも充実か? 案内でもナビの個性が現れた

地図表示はシンプルなほうが好みという人と細かく描かれていたほうがいいという人で好みが別れると思いますが、「Appleマップ」と「Googleマップ」はシンプル、「Yahoo!カーナビ」と「TCスマホナビ」が建物まで細かく描かれていて対照的。スケールに関しては、「Yahoo!カーナビ」と「TCスマホナビ」は画面の縮尺を任意に設定できますが、「Appleマップ」と「Googleマップ」はできないので遠くまで地図に表示したいという人にとっては物足りなく感じるかもしれません。 「Appleマップ」は交差点拡大図や通行レーン案内はなく、「Googleマップ」はあるけれどシンプルな案内に留まるので据え置き型カーナビを基準にすると慣れが必要(なるべく簡潔に必要最低限の情報を伝えるという考え方には即している)。「Yahoo!カーナビ」と「TCスマホナビ」は細かい交差点拡大図などを用意ししっかりサポートしてくれるもので、特に市街地で初めて通るわかりにくい道路でも曲がる場所を間違えにくい安心感があります。
また、右左折時などの音声案内に関しては、「Appleマップ」がやや不明瞭な音声で違和感がありましたが、その他3つのアプリに関してはどれも聞き取りやすい自然な音声です。ちなみに以前は交差点名や左右折時の音声案内をしなかった「Googleマップ」ですが、昨年夏のアップデート以降は対応しています。
シンプルながらわかりやすいのが「Googleマップ」、車載ナビのような充実した交差点案内拡大図を必要とするなら「Yahoo!カーナビ」や「TCスマホナビ」が魅力ですね。好みに応じて選ぶといいでしょう。

Appleマップ Googleマップ Yahoo!カーナビ TCスマホナビ
ルート案内
道路名称表示 なし あり なし あり
交差点名称表示 あり あり あり なし
交差点の右左折案内 あり あり あり あり
レーン案内 なし あり あり あり
音声の聞き取りやすさ※ 不自然さが拭えない 聞き取りやすい 聞き取りやすい 聞き取りやすい
地図の拡大・縮小 あり なし あり あり

※筆者の所感です。

徒歩モードは便利に使えるか?

徒歩で目的地へ向かう際にも使えるのはスマホのナビアプリの便利なところ。その時の違いも比較してみました。
「Yahoo!カーナビ」はクルマで使うナビに特化しているので、残念ながら徒歩モードはなし(別アプリの「Yahoo!地図」には徒歩用の道案内があります)。「Appleマップ」は徒歩モードにしても地図の表示データがあまり細かくなく、徒歩で使うにはやや心もとない印象です。
実用性が高いのは「Googleマップ」と「TCスマホナビ」。「Googleマップ」は自分の向いている方向が地図上に表示されたり、曲がる場所ではアラームを鳴らして知らせてくれたりするのが便利。情報量が多く、曲がる場所の案内もわかりやすいです。
「TCスマホナビ」はノースアップやヘディングアップのほかに2Dと3Dが切り替えでき、3Dにすると建物のグラフィックが忠実で施設名も多く表示され、より道に迷いにくい案内となり好感が持てました。 曲がる場所が分かりやすい「Googleマップ」に対し、「TCスマホナビ」は高精細グラフィックで自分のいる場所がよくわかりました。周囲の状況は把握しなくてもいいからとにかく目的地まで行きたい、という使い方なら「Googleマップ」がマッチしそうです。

データ通信量が少ないナビアプリは?

今回のテストでは94.5キロ・4時間を実際に走り、その際のデータ通信量を計測してみました。
もっとも多かったのは「Yahoo!カーナビ」の62.5MB。次いで「TCスマホナビ」60.9MB、「Googleマップ」30.4MB、そして「Appleマップ」の12.4MBです。
「Appleマップ」は地図がシンプルなこと、そして渋滞情報の送受信をしていないことが通信量が少なく済む理由と思われます。渋滞情報を多くやり取りしている割には「Googleマップ」の通信量が少ないのも、地図がシンプルだからでしょう。
いっぽうで「Yahoo!カーナビ」や「TCスマホナビ」のデータ量が多かった理由は、地図が細かくてグラフィックが美しいからと思われます。
ちなみに「Googleマップ」は事前にルート設定をしておくことでオフラインでのナビ利用が可能。ただし、オフライン利用中は渋滞情報が反映されません。

  Appleマップ Googleマップ Yahoo!カーナビ TCスマホナビ
データ通信料 12.4MB 30.4MB 62.5MB 60.9MB

※あくまでも今回のテストにおけるデータです。使用環境により異なります。

その他、注目の機能や特徴は?

衛星写真やストリートビュー(道路周辺を写真で確認できる機能)などでビジュアル的に街を見ることができて道案内以外でも活用できる独自機能を盛り込んでいるのが「Googleマップ」。
いっぽう「Yahoo!カーナビ」では、「運転力診断」という機能が特徴的です。ナビゲーションによる誘導で移動を終えた後にタップし別画面へ移動すると、運転中のデータを解析して加速の安定性や減速の安定性、ふらつきなどを点数で表示。運転操作を振り返り、今後の運転上達に役立てることができます。
また、安全運転に影響をあたえることもある気象の状況を確認できる「雨雲レーダー」や、ナビの操作をおこなうため専用リモコン(別売)を用意しているのも独特。ドライバーをサポートしようという配慮を感じます。
「TCスマホナビ」はナビアプリ上から予約制駐車場の検索や予約サイトへの移動ができたり、周辺の多機能トイレ情報を確認できるなどの便利な独自機能を搭載。災害時に実際に通行実績のある道を教えてくれる「通れた道マップ」も心強い独特の機能です。

「Yahoo!カーナビ」はカーナビ特化型だが、運転操作指南まで含めてドライバーをサポートしようという考えだ
「TCスマホナビ」の立体的で精密なグラフィックはインパクトがある。ただし、人によっては情報が多すぎてわずらわしいと感じるかもしれない。
Appleマップ Googleマップ Yahoo!カーナビ TCスマホナビ
地図デザイン
3D表示 不可
アイコン・文字サイズ変更 不可 不可 不可
昼夜の背景色調整
ユニークな機能 
  特になし 航空写真、ストリートビュー、インターネット検索との連携 運転力診断、きせかえボイス 予約駐車場サービスとの連携、通れた道マップ、多機能トイレ情報

スマホのナビアプリにはそれぞれ個性がある

実際に複数のナビアプリを同時に使ってわかったのは、それぞれのナビアプリごとに個性があるということ。
「Appleマップ」は最低限の道案内だけに特化した印象。そのぶん動作が軽く、通信データ量が少ないのがメリットと感じました。「Googleマップ」は簡単な操作とシンプルかつ最小限の案内画面が特徴で「多くの案内情報はいらないから気軽に目的地まで案内してほしい」というユーザーに適していると感じました。操作や情報量が少なく簡潔だから、ナビ画面を見る余裕が少ない運転初心者にも向いています。また、スマートフォンに慣れ親しみ車載カーナビをあまり使ったことがないという人は特に使いやすいと感じるはずです。

いっぽうで詳細な交差点案内に情報量の多さを求めたり、検索ルートの選択や設定の細かさを重視する人には「Yahoo!カーナビ」や「TCスマホナビ」が魅力的。より多くの情報を知りたいベテランドライバーや車載カーナビを使い慣れた人、設定を好みにしてナビを自分流に使いこなしたい人と相性がいいでしょう。両アプリとも車載カーナビの高度な機能をスマホへ移したような感覚を受けますが、音声検索を重視するなどよりスマートフォンのインターフェイスを前提に作られているのは「Yahoo!カーナビ」で、より車載カーナビに近い位置にあるのが「TCスマホナビ」といえます。

スマートフォンのナビアプリは無料のものと有料のものがあり、今回試した「Appleマップ」「Googleマップ」「Yahoo!カーナビ」、そして「TCスマホナビ」はすべて無料で利用可能。またグルメ検索などもおこなえる「NAVIRO」、オフラインで使えることを特徴とする「MAPS.ME」なども無料なので、気軽に試すことができます。古地図上に現在地を示す「こちずぶらり」など個性的なアプリもあり、状況に応じて使い分けるのもいいでしょう。
スマホのナビアプリはバージョンアップが頻繁におこなわれ、より便利になるだけでなく時には新機能が追加されることもあります。今後はさらにユーザーの利便性が上がっていくことでしょう。

今回比較したアプリのダウンロードはこちら

※AppleマップはiPhoneの標準搭載アプリのため、Androidにはダウンロードできません。

iPhone版
Android版
iPhone版
Android版
iPhone版
Android版

[ガズー編集部]