【クルマとお金】なぜ、クルマの税金はこんなに高いのか? ―日本の税制が抱える矛盾や問題―
前回、「種類や額はどれぐらい? ―自動車にかかる「税金」を知ろう―」では、クルマに9種類の税金が課せられていることをお伝えしました。では、なぜクルマには多くの税金があるのでしょうか? そこにはどんな理由があったのでしょうか? 今回は、クルマを所有する人に考えてもらいたい、矛盾や問題をお話しします。
200万円の新車を買うときの税金は35~40万円
まずは、9種類の税金をおさらいしながら、支払う税金の額を考えてみましょう。
日本でクルマに乗ろうとすると、購入時にまず「自動車取得税」を支払います。もちろん、クルマという買い物をしていますから「消費税」もかかります。また、ナンバーを取得して車検を取らなければ公道を走れませんから、それに必要な「自動車税/軽自動車」と「自動車重量税」も納付しなければなりません。
さらにクルマを所有していると毎年、「自動車税/軽自動車」が課せられます。そして2年ごとの車検時に、「自動車重量税」を支払います。また、クルマを走らせる燃料の価格には「揮発油税」と「地方揮発油税」が含まれています。ディーゼル車用の軽油には「軽油引取税」、タクシーなどのLPガス車には「石油ガス税」が用意されています。
これほど税金が多いのですから、支払う金額も大きくなります。もしも、200万円の新車を買ったとすると、購入時だけで35~40万円の税金を支払うことになります。ガソリンには1リットルあたり53.8円の税金がかかっていますから、月に一度、50リットルを給油するだけでも、年間で32,280円の税金を支払うことに。
実は、これほど税金が高い国は、欧米諸国にはありません。JAFや日本自動車工業会など21団体で構成される「自動車税制改革フォーラム」の調べによると、日本の税負担は欧米の2~32倍にもなるとか。
では、なぜ日本は、そんなにもクルマの税金が増えてしまったのでしょうか?
高度成長期にその税金は作られた
それには理由がありました。道路です。日本でクルマが一般家庭にまで広まったのは、1960年代から1970年代にかけての高度経済成長期でした。しかし、当時の日本は道路の整備が進んでおらず、あちこち土の道路だらけ。「それでは困る」と道路を作ろうとしましたが、予算はありません。そこで“道路を作るため”という名目で数多くの税金が誕生しました。
それが「自動車取得税」「自動車重量税」「ガソリン税(揮発油税/地方揮発油税/軽油引取税/石油ガス税)」です。道路を作るためだけの税金なので、道路特定財源と呼ばれます。
また、大急ぎで道路を作らなければならなかったため、「自動車重量税」と「ガソリン税」は、最初に決められた税額から暫定的に2倍ほどに増額されました。道路が整備されるまでの「当分の間だけ」という増額です。
つまり、未熟であった1960年代の日本の道路を整えるために、クルマの税金が大幅に増やされた。これが日本のクルマの税金が高い理由です。
消費税導入や税制改革を経て今も……
「道路を作るため」の税金や暫定税額が導入されてから、40年以上の月日が流れました。道路はもう十分なほど、日本の隅々まで行きわたったと言えるでしょう。しかし、一度増えた税金が戻ることはありませんでした。
また、平成になってからは「消費税」がスタートします。ガソリンにも当然、「消費税」が課されます。ところが、なぜかガソリン本体料金だけでなく「ガソリン税」にも消費税を課したのです。税金に税金をかける二重課税です。また、購入という行為に課する税金が「消費税」であれば、「自動車取得税」も内容的には同じ。これも一種の二重課税となるため、将来的に「消費税」が10%に増額されると、「自動車取得税」は廃止になる見込みです。
「道路を作る」という目的を達成したはずなのに、ちっとも減額されないクルマの税金。しかし、2009年にさらに驚くべき税制改革が実施されます。道路特定財源の「一般財源化」です。「道路を作るため」に使われていた税金を、道路ではなく、国全体の一般的な予算に組み込んでしまったのです。それまでは「クルマが使う道路のための税金なんだから高くても我慢しなければ」と思っていたのが、その前提さえもなくなってしまいました。
結局、最後に残ったのは、理由も根拠もなくなった数多くの税金です。日本全体として税収が足りずに困っているという状況はわかります。しかし、クルマのオーナーだけが、多めに税金を負担しなくてはならない理由はどこにもありません。小さな声でも、「納得できない」と思ったときは、「NO」と発言すべきでしょう。間違いなく言えるのは、発言しない限り、状況は何も変わらないということです。
変革にむけて高まる声
また、現在の税制に疑問を抱いているのはユーザーだけではありません。クルマを製造し販売する側も同様の考えを抱いているようでした。
自動車メーカーの団体である一般社団法人日本自動車工業会は、9月20日(木)に「平成31年度税制改革に関する要望書」を発表しました。内容は「複雑・過重な自動車関係諸税の簡素化・負担軽減の実現」や「研究開発促進税制の拡充」「固定資産税の抜本見直し(償却資産に対する固定資産税廃止等)といった、自動車と自動車メーカーに関する税制の見直しを要求するものです。
私たちユーザーだけでなく、メーカー側も「現在の自動車の税制はおかしい」と声をあげているのです。そうした声が大きくなればなるほど、税制改革の可能性は高まります。もしかすると税制が変わるかも。そんな期待も生まれつつあるようですね。
(文:鈴木ケンイチ / 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
シリーズ「クルマとお金」
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