ダットサン・サニー(B110型/2代目)に恋をして。少年時代に出会ったクルマを息子や孫に託したい

ダットサンおよび日産・サニー。昭和生まれの世代にとって、実になじみ深いクルマだろう。もしかしたら、平成生まれの世代にとっては、ピンとこないクルマかもしれない。トヨタ・カローラ同様、サニーはかつて日本を代表する大衆車として、多くの人に愛され、親しまれてきたクルマだ。

初代サニーは1966年に誕生した。その後、時代の変化とともに姿を変え、9回のフルモデルチェンジを重ねた。そして2004年に日本国内の生産が終了し、サニーという名のクルマはその幕を閉じることとなった。その後、車名こそ変わったが、サニーで培ったノウハウは、確実に現代の日産車にも引き継がれていると信じたい。できることなら、復活を望みたいところだが···。

そんなサニーをこよなく愛するオーナーと出会うことができた。真紅のボディから、オーナーの惜しみない愛情が注がれていることが伝わってくる。

「このクルマは1970年式ダットサン・サニー クーペGX。前期型のモデルになります。サニーと出会ったのは中学生の頃です。就職してから最初に購入したクルマがサニー クーペでした。そして、鹿児島から上京してから購入したのもサニー クーペなんです。私は実家が鹿児島でして、当時母親がサニーに乗っていたことからすべてが始まったように思います」。

オーナーの愛車は「となりの車が小さく見えます」のキャッチコピーでデビューした、サニーとしては2代目にあたるモデルだ。この「となりの車」とは、トヨタ・カローラのことを指していることは言うまでもない。当時、排気量1.1Lのエンジンを搭載するカローラに対して、サニーは1.2Lエンジンを採用し、真っ向勝負を挑んだのだ!その後も、双方を意識したモデルチェンジが繰り返され、それは21世紀まで続いたことになる。カローラ/サニー対決に限らず、このように切磋琢磨を繰り返してきた歴史こそが、世界に誇る現代の日本車の高い質感を作り上げる礎となったのかもしれない。

まさに「筋金入り」のサニー好きといえるオーナーだが、若いときにはアメリカ車(以下、アメ車)に傾倒していたという。

「1980年代前半、大排気量のエンジンを搭載するアメ車は、今では信じられないような安値で中古車販売店に置かれていたんです。現在、私は50代半ばですが、若いときにはキャディラック、マスタング、カマロなど、名だたるアメ車を次々に乗り換えましたよ。でも、エンジンの排気量が5Lを優に超えるアメ車は、ご存知のように燃費が悪いんですね。さらに、大排気量ゆえに高額な自動車税も大きな負担となりました。さすがに維持するのは厳しいと判断し、アメ車から日本車へ乗り換えることにしたんです」。

その後も、通称「サメブル」と呼ばれた日産・ブルーバード(610型)や、通称「ブタケツ」と呼ばれた日産・ローレル(C130型)、トヨタ・スターレットなど、数え切れないほどの愛車遍歴を重ねてきたオーナー。そして今から6年ほど前に、このサニー クーペGX(B110型)を手に入れたという。

「前期型にあたるこのサニー クーペGXの現在の走行距離は7.8万kmです。私のところに嫁いできてから、5〜6千kmしか走っていません。このボディカラーは純正ではなく、BMWのレッドをモチーフに私が選んでオールペイントしてもらいました。しかし、またいつでもオリジナルのボディカラーに戻せるように、敢えてエンジンルーム内やトランクなどは塗装していません」。

プロの手を借りつつも、メンテナンスはできるかぎりオーナー自ら行っているそうだ。

「このクルマの配線は自分で引き直しました。購入時、ホイールは別のものを履いていましたが、私のこだわりでワタナベに交換しました。また、ラジエーターの交換や点火系に手を加えるなど、私好みに気持ちよく走れる仕立てにしました。このタワーバーは、サニートラック(通称サニトラ)からの流用です。当時のシートは保管し、ダイハツ・コペンのものに交換しています」。

一見すると当時の雰囲気を色濃く残す個体だが、熱い走りを予感させるモディファイが施してあるようだ。そして、トランクを開けてもらったとき、思わず息を呑んだ。出先でトラブルに見舞われたときに対応できるよう、各部品がビニール袋に包まれ、収納ボックスごとに大切にしまわれていたのだ!

「古いクルマなので、雨の日は乗りませんし、維持にも気を遣っています。自宅の倉庫には、置き場がないくらいの部品をストックしていますよ。もう1台くらいなら、このサニーが組み上がるかもしれません(笑)」。

旧車、特に日本車の部品の確保には悩みが尽きないオーナーが多い。もちろんサニーのオーナーも例外ではないが、その不安要素を払拭するだけの部品をストックしているようだ。しかし、オーナー1人では情報収集に限界がある。オーナーのサニーに対する深い愛情と人柄に惹かれて、仲間達が有益な情報を教えてくれるのだろう。

「私には、31歳と28歳になる息子がいます。お陰様で2人ともクルマ好きです。既に独立していますが、頻繁に実家に寄ってくれるんです。孫もクルマが好きで『じいじ、クルマ見せて』と話し掛けてくるんです。息子から孫へ。私が溺愛するサニーを乗り継いでいって欲しいですね」。

実は、このサニー クーペGXの他に、純白にペイントされた同型のセダンも所有するオーナー。お孫さんに話が及ぶと、目尻が下がりっぱなしだ。若いときにサニーに恋をし、お孫さんに恵まれるようになってもその思いは変わらない。今後ますますクルマを取り巻く環境が変わっていくだろう。そんな時代の変化に抗うように、親子3代、その先の世代にも、このサニーを受け継いでいって欲しいと切に願うばかりだ。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]