女性に乗ってほしい1台も! JAIA輸入車試乗会レポ後編

3日間を通して、23台のクルマに試乗することができた筆者。一枠せいぜい数十分程度。それで何がわかるのかと言われれば、限界はあります。しかしながら、この時間で得た実感は、ある程度信頼できるのではないでしょうか。全体的に見て、かなり個性際立つクルマが多かったし、数年前よりも深みのあるクルマが増えてきたような気がするのです。普段なかなか乗れないようなクルマにも乗せていただくことができたので、そんなモデルを振り返っていきたいと思います。

あらゆるモダンを跪かせる、伝統のちから/シボレー・コルベット グランスポーツ

キャディラック、リンカーンと並んで、アメリカ国内でも不動のヒエラルキーの頂点に座してゆるぎないのがコルベットではないでしょうか。ともすると同じ方向を向いて、見えない力で画一化していくような傾向があるクルマ業界で、通常のカタログモデルとして、こういう特色あるクルマが生産され、極東の島国でも今なお購入できることは、誠に喜ばしいこと。感謝せずにはいられないのです。

自然吸気の6200㏄、V8OHVエンジンをフロントに低く搭載。低い着座位置のコックピット周りは、決して優美さはないけれど、とてもエモーショナルで、ドライバーを運転に集中させるようにデザインされています。今も昔も変わらない、アメリカのドライバーズカーという誇りが随所にちりばめられ、仕上げられているのです。走り始めると低速から「源泉かけ流し」のように途切れることなく、潤沢なトルクが後輪に伝わってきます。もちろん、その気になれば多くのライバルを後塵に排す程度のパフォーマンスを持ちながら、穏便なクルージングも快適にこなすところに、アメリカのおおらかさを感じます。

効率至上主義の昨今、小さな排気量のDOHCエンジンが主流を占めています。しかし、アクセルを踏み込んでから、パフォーマンスが加速と言う形でアウトプットされるまでのワンクッションを味わうと、この古風なスタイルのエンジンの正当性を感じることができます。高回転まで回して、どうにか絞り出される大きなパワーより、どんな時も、どの速度粋からでも加速していく(少なくとも実用域プラスαの状況下で)性能の方が大事、というセッティングには、誰の目にも明白な説得力を感じます。

クーペにはリムーバブルトップという脱着式のルーフが備わり外すことも可能

夢のかなたにまで連れていかれるのではないかと思うほどの強烈な加速も、このクルマならやろうと思えばできます。しかし、あくまで「そういうキャパシティもあるよ」という、ひけらかすことのない「懐中の余裕」のような部分にこそ、このクルマの真価があるように感じるのです。

時空を超えたかと錯覚させるような、他では決して体験できない世界に挑戦し続けているアメリカンプレミア。繰り返します。今の日本で、このクルマが買えること自体が無上の喜びなのです。

あえて言うならば究極のバリューフォーマネー/ベントレー・ベンテイガ

ベントレー初のSUV、ベンテイガのデビューについては、すべての人から歓迎を受けていたか、と言えば、そうでもなかったように感じます。様々な記事やSNS投稿などを見ていると、ベントレーがSUVを作りはじめることに対して、懐疑的な意見も少なからず見られました。

しかし、金色に彩られた真新しいベントレーのステアリングを握ると、思い込みが音を立てて消え去っていきます。まず、これは今のベントレーに共通するイメージですが、運転席に乗り込もうとするときに、異様なほどフレンドリーに迎え入れてくれるのです。「どこか無邪気で、遊び心にあふれた」という表現でもいいでしょう。誰もが振り向く動かしがたいオーラを持ちながら、優しさとほほ笑みを、一見のドライバーにもたらしてくれます。ドライバーズカーの最高級ブランドにふさわしい、上品なカジュアルさは、この新しいSUVベンテイガでも健在でした。

トランクには何やら仕切りのようなものが……

トランクからせり出して腰を下ろせる「腰掛」だ。バンパーに座ってはお尻も汚れるし、傷もつきかねないということだろうか。革張りの腰掛は簡単に展開できる

そして走り始めると、とても軽やかなことに驚かされます。この軽やかさは、もしかするとコンチネンタルGTのモデル以上かもしれません。5mを超える全長と2mに迫る幅を持つ、恐ろしく大柄なこのクルマでも、感覚的には4.8m×1.8m程度のクルマに感じることができます。

凝った構造のW型12気筒エンジンをフロントに納めるものの、微低速時にはEVかハイブリッドカーの類ではないかと思うほどの静粛性。もちろん現代に生まれた高級車なので、アイドリングストップくらいの仕掛けは当然備わります。しかし、感心させられたのは、ストップしているエンジンが無音無振の中から脱兎のごとく加速するという、車格のイメージにそぐわない芸当も、朝飯前にこなす点です。

凝ったプレスラインも印象的。フレンドリーさはあるが、あくまで別格。まぎれもなく、ベントレーの1台だ

些細な点では様々な気づきがありますが、一番強調しておきたいのは、細部に至るまでお金がかかっていること。指先の触れる部分の質感にまで気を使われている点には、感心させられます。

ベントレーの新たな提案として、このクルマが果たす役割は小さくはないでしょう。2017年、日本で販売が予定されている80台はすべてオーナーが決まっているというのも、このオフロードベントレーの輝きと自動車として持つ強い説得力を考えれば、すんなり納得できるのです。

軽さの正義と、FRの旨味/BMW・318i Luxury

古くは2ドアセダンからスタートしたBMWの中核モデル3シリーズは、セダンとワゴンで構成されています。ガソリンモデルのほかプラグインハイブリッドモデル、ディーゼルエンジンも備え、全方向から「ダイナミックな走り」の提案に余念のないラインナップ構成になっています。

日本でも多く見かける現行3シリーズ、最小排気量のニューモデルは決して「単なる廉価版」にあらず!

そこに、コンパクトなモデルとして定評のある3気筒1500㏄エンジンを搭載した318iが追加されました。制振設計も含めて、きわめて精緻なフィーリングをもたらすエンジンの完成度もさることながら、BMWが永年こだわり、今でも強く訴え続けているFRレイアウトの妙味を際立たせ、一番「おいしくいただくことのできる」、説得力に満ちたパワーユニットではないかと感じさせる一台に仕上がっています。

圧倒的に軽量コンパクトなエンジンは、強烈なパワフルさを感じないかもしれません。しかし、トルクバンドのスイートスポットを絶対に外さない回転数を常にキープさせています。上のギヤが矢継ぎ早に迎えに来るように変速するオートマチックが奏功し、決してもたつきません。それを加味した上で、いかにハンドルの前にあるものの軽さが大切か、このクルマをちょっと乗れば思い知ることになります。

クルマ好きの中には依然ファンが多いFRレイアウト。しかし近年ただ後輪で駆動するだけになってしまい、最先端のFFに対しての圧倒的優位性を感じにくいモデルも少なくない中、このクルマは違います。キラリと光るピュアでエモーショナルな心地よい荷重移動、ステアリングフィーリングを気軽に楽しむことができるクルマに仕上がっているのです。

キャパシティの半分? と思わせるほどコンパクトなエンジン。しかし乗ってみると、BMWの雄弁なFR優位論を聞いているかのように感じる

いつまでも走っていたいと思わせるハンドリングとナチュラルなフィーリング。「もしかしてベストバイ?」そう思わせるほどにいとおしい。普通のセダンでもひらりひらりと軽やか。3シリーズ以前、02(マルニ)シリーズの1502なんてこういうクルマだったのではないか? そんな往年のBMWに思いを馳せたくなる、すがすがしく爽やかな1台。とても好印象でした。

女性に颯爽と乗ってほしい1台/ロータス・エヴォーラ400

野郎(男性)は軽トラでもなんでもいいのです。現にみんなそういうクルマも案外好きですし。
でも女性には、颯爽とスポーツカーを乗りこなしてほしい。個人的には常々そう思っています。もちろん、おおいにカッコいい女性への憧れを内包していることは言うまでもないのですが。ファッションにこだわりメイクを工夫し、どう見られているか、常に敏感な女性にこそ、スポーツカーのようなクーペタイプのクルマはマッチすると思うのです。

現在のラインナップにおける4シーター・ロータス「エヴォーラ」もそんなクルマではないでしょうか。とても低い運転席は乗り込むと案外広いことに驚かされます。背後には小柄な女性か子供に限られるミニマムなシートが付くのです。しかし、空間越しにエンジンの見えるレイアウトは、圧迫感が少なく、妙に余裕をもたらしてくれています。エンジンのベースは、トヨタの3500㏄V6エンジン。スーパーチャージャーで強化されており、406馬力を発生します。

クルマの真ん中にエンジンがあるのだ、ということをドライバーに強く自覚させる

試乗車はオートマチック仕様です。スポーツモードも選べますが、最近のクルマにありがちなサスペンションの硬さなどは変わりません。シンプルなシフトの変速スケジュール変化と、素晴らしいエグゾーストノートを堪能させてくれます。

また、さほど重たくなく、曲がるときにミッドシップの良さを味わうことができるキャラクターは、街中の右左折でも存分に感じることができるでしょう。乗り心地も思いのほかいいのはうれしい誤算でした。

身長約180㎝の筆者は座ることができなかったが、あるとないとでは大違いなのが、この後部座席だ

普段日本で暮らしている私からすると、「なるほど」と思わされたり、「いいな」と心酔してしまう輸入車たち。1年後、2017年に試乗したクルマの中でどれが一番だったかと振り返ったときに、この試乗会を思い出してしまいそうなほど、多種多様のクルマに出会えました。

また、今回実際に試乗してみて感じたのは、気になるクルマは一度見に行って、可能であれば試乗してみるべき、ということ。特に輸入車は異文化に触れることができるから、またその楽しみはひとしおですしね。

(中込健太郎+ノオト)

[ガズー編集部]