【ランドローバー ディスカバリー 試乗】どう使うか?それが問題だ…中村孝仁

ランドローバー ディスカバリー
ランドローバー『ディスカバリー』と言えば、かつてはファミリー向けオフロード車として、メーカー自身もキャメルトロフィーなどのアドベンチャーレースに盛んに参加して、タフさをアピールしていたモデル。

それが今では『レンジローバー』と肩を並べる超高級SUVに変貌している。その昔、ランドローバーの故郷、ソリハルのテストコースでレンジローバーを試乗したことがある。見渡す限り一面のぬかるみ。それを端から端までのんびりと走破する。当時僕は助手席でインストラクターのドライブを見ていたが、恐らくはタイヤの半分以上はそのぬかるみの中だったと思う。

もちろん外に出られるわけもなく、無事に渡り切ってから、このテストコースで他ブランドのクルマを走らせたことはあるか?と聞いた。するとインストラクター氏、「あるよ」。で、僕、渡れた?インストラクター氏「いいや」。僕、渡れた他ブランドのモデルはあるの?インストラクター氏「ない」。とまあ、少し不毛なやり取りをしたが、とにかくその時、このブランドのモデルの走破力、普通じゃない…と思った。そして同時にこんな高級車で、こんなぬかるみ入るか?という疑問も。素直にその疑問をぶつけると、イギリスには広大な土地を所有する富裕層がいて、馬だとすべて回るのに数日かかるようなケースもあって、そんな時はレンジローバーが活躍するのだとか…。妙に納得した。

翻って日本。そんな馬で数日かかるような広大なスペースを所有している人は、ひょっとするといるのかもしれないけど、でも多分レンジローバーは使わないよな…そう思った次第。とにかくレンジローバーと言えば高級車で通るクルマだから、バッチィところは行かんだろう…と考えるわけである。そこへ行くとタフなディスカバリーならそういう使い方がいいなぁ…とずっと思っていた。しかし、生まれ変わったディスカバリーは、レンジローバーと肩を並べる高級車。いやいや、これもまたバッチィところが苦手なクルマになったと思ってしまった。

唯一レンジと違う点。それはさすがにスーパーチャージドV8の設定がないことだ。そこだけが、ディスコ(ディスカバリーのこと)に無くてレンジが持つ最大のアドバンテージと言っても過言ではないほど、最新のディスコは高級になっている。インテリアはステアリングはどう見てもレンジローバーと同じだし、エアコンの調整ノブもレンジと見分けがつかない。

さすがに外観はディスコの特徴が今も生きているし、独特なスタジアムシートは後席でも見晴らしが良い。そうそう、室内は3列シートだ。

そんなディスコで、まずはオフロードに挑戦。TPC(テレイン・プログレス・コントロール)と呼ばれるランドローバー独特の機能を作動させる。これ、オフロード用のクルーズコントロールのようなもので、作動は2km/h~30km/hの範囲。その間の設定スピードを維持して走ってくれる。勿論下りも登りも。今回の設定コースはランドローバーには少々甘すぎる簡単なコースだったから、敢えてTPCを作動させる必要もなかったほど。

一方のドライ路面の一般道では、その無類の快適性と静粛性が印象的だった。ガソリン仕様はディーゼルと同じ3リットルV6ながら、ターボチャージャーではなくスーパーチャージャーによる過給を使う。最高出力はディーゼルを上回る340ps。一方の最大トルクはさすがにディーゼルには及ばずだが、それでも450Nm/3500~5000rpmの範囲で発揮してくれる。このエンジン、基本的にはジャガー『XF』などに搭載されているのと同じものだが、出力は同じでも、最大トルクはピークの数値こそ同じものの、発生回転数はテーブルトップ状に幅を持たせてあって、ピンポイントのジャガーのものとは異なっている。やはりクルマに合わせたチューニングが施されているということだ。

バリアブルレシオのステアリングギア比を持つことで、オフでは過敏にならず、オンではエイペックスに向けてまっしぐらの運転を可能にした使い分けが可能。なので、ドライの高速を突き進んで、最後は雪道を走るという、冬山方面に向かうにはまさに理想的なクルマと言えよう。しかしそうはいっておも、バッチィところに入り込む勇気は、ここまで成長してしまったディスコを見ると、さすがに持てない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 :★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

(レスポンス 中村 孝仁)

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