【個性派ミニバン比較 第3回】ミニバンだって“走り”で選びたい…岡本幸一郎
国産ミニバンと比べてまだまだ選択肢の少ないのが輸入車の3列シート車だ。個性的でユニークなパッケージングをもつシトロエン『グランドC4ピカソ』をはじめ、このジャンルの先駆者として成功しているVW『ゴルフトゥーラン』。そしてBMWも『2シリーズグランツアラー』という刺客を送り出してきた。
そんな欧州勢に対し、国産ミニバンの代表として、大人気のセレナを持ち込み比較試乗。「ミニバンだって走りで選んでも良いじゃないか!」ということで、第3回となる今回は走りや取り回しについて、それぞれの特徴と魅力を、モータージャーナリストの岡本幸一郎がレポートする。全4回。
◆ソフトな乗り心地に待望のディーゼルエンジンを得た…シトロエン グランドC4 ピカソ
日本導入当初はガソリンの1.6リットル直4ターボのみだったところ、2017年春に待望の「BlueHDi」と呼ぶクリーンディーゼルを追加。排気量は2.0リットルで、最高出力150ps、最大トルク370Nmを発生する。6速ATとの組み合わせで、ディーゼルとしてはやや控えめながらガソリンよりも低速域のトルクがあるので扱いやすく、それでいて音や振動などディーゼルのネガもほとんど気になることはない。
独特のソフトタッチな乗り心地はシトロエンならでは。今回の中でもっとも後席の同乗者にとって優しい乗り味といえる。足まわりはソフトな中にも適度にダンピングが効いていて、路面の凹凸をなめるようにいなす。コーナリングでのロールは大きめでも、常にタイヤがしなやかに路面を追従する感覚がある。
操縦感覚にドイツ車のようなカッチリ感はないものの、いたってラクに乗れて、操舵に対して素直に反応してくれるところもよい。長距離を運転しても、もっとも疲労感が小さいだろう。先進運転支援システムには、30km/h以上で作動する自動ブレーキや、車線逸脱をシートベルトの振動で知らせるユニークな装備を持つ。
◆正確性に優れるハンドリングが生む安心感のある走り…VW ゴルフトゥーラン
パワートレインは、ガソリンの1.4リットル直4ターボと7速DCTという組み合わせ。同エンジンは250Nmの最大トルクを1500~3500rpmというワイドな回転域で発生し、動力性能は十分。
世界的にも数少ないDCT(ダブルクラッチ機構)を搭載する3列シート車であり、発進時に半クラッチの制御のためかややもたつきを感じるのは否めないが、流れに乗ってしまえば、歯切れのよりシフトチェンジとダイレクト感のある走りを楽しむことができる。
一体感のある走り味は、このクルマがミニバンであることを忘れさせるほど。正確性に優れるハンドリングと高い操縦安定性により、乗用車となんら変わらない感覚で運転できるのもトゥーランならでは。
VWはこういう味付けが実に得意だ。初代よりもスポーティ志向になり、ひきしまった足まわりにより2列目以降では若干硬さを感じるが、ガチッとしたボディ剛性感や4輪がしっかり路面を捉える高いグリップ感により、乗っていて安心感がある。
先進運転支援システムは、ステアリングアシストや渋滞時の追従を支援する機能や、自動ブレーキには起こってしまった事故後の被害を最小限にとどめる機能も付くのが特徴だ。
◆俊敏なハンドリングとパワフルなディーゼル…BMW 2シリーズ グランツアラー
前輪駆動となっても、後輪駆動の上級モデルに通じる「駆け抜ける歓び」を追求したことが、ドライブすると伝わってくる。
コーナリングでのロールは小さく抑えられており、可変レシオステアリングやブレーキと駆動力の制御によりニュートラルなハンドリングを得る「パフォーマンス・コントロール」の採用もあって、ミニバンとしては異例の俊敏なハンドリングを楽しめる。強化された足まわりにより、後席の乗り心地はかなり硬めではあるが、そのぶん得たものも大きいのだ。
エンジンは1.5リットル直3ターボのガソリンと、2.0リットル直4のガソリンとディーゼルという3機種が用意されており、6速か8速のATが組み合わされる。今回は最高出力150ps、最大トルク330Nmのディーゼルをドライブしたが、体感的にもなかなかパワフルで、振動は小さく、吹け上がりが気持ちよい。さすがはエンジンでならしたBMWだ。
走行シーンにあわせて、スポーツモードを選べるし、4WDも設定されているのは嬉しいところ。先進運転支援のセンサーはシングルカメラ式で、車線逸脱警報機能や10~60km/hでの走行時に作動する歩行者検知などを備える。
◆プロパイロットと箱型ミニバンの弱点を払拭した走り…日産 セレナ G
セレナといえばミニバンとしていちはやく同一車線内での半自動運転を実現した「プロパイロット」の搭載が最大の特徴。重心が高くてトレッドが狭く、横風の影響も受けやすい箱型ミニバンではなおのこと、高速巡行時に強い味方となってくれることに違いない。
走りの印象がいかにもミニバン然としていることには否めず。とはいえそうした走りにおいては不利なパッケージにもかかわらず、全体のまとまりは悪くない。乗り心地も3列目まで十分な快適性が確保されているし、コーナリングで深くロールしても上手くバランスをとって粘るので、安定性が損なわれることはない。
動力源は150ps、200Nmを発生する自然吸気のガソリン2.0リットル直4エンジンに小出力モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドがメインで、日本車らしくCVTが組み合わされる。
今回の中では動力性能は控えめながら、実用上は大きな不満はなく、エコモーターによりアイドリングストップからの再始動が非常にスムーズで、発進加速時には後押ししてくれる感覚もあり、むろん経済性にも優れる。
これまで3回にわたって、300万円台~で買える個性派ミニバンをレポートしてきた。次回はいよいよ最終評価をお届けする。
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 岡本幸一郎)
そんな欧州勢に対し、国産ミニバンの代表として、大人気のセレナを持ち込み比較試乗。「ミニバンだって走りで選んでも良いじゃないか!」ということで、第3回となる今回は走りや取り回しについて、それぞれの特徴と魅力を、モータージャーナリストの岡本幸一郎がレポートする。全4回。
◆ソフトな乗り心地に待望のディーゼルエンジンを得た…シトロエン グランドC4 ピカソ
日本導入当初はガソリンの1.6リットル直4ターボのみだったところ、2017年春に待望の「BlueHDi」と呼ぶクリーンディーゼルを追加。排気量は2.0リットルで、最高出力150ps、最大トルク370Nmを発生する。6速ATとの組み合わせで、ディーゼルとしてはやや控えめながらガソリンよりも低速域のトルクがあるので扱いやすく、それでいて音や振動などディーゼルのネガもほとんど気になることはない。
独特のソフトタッチな乗り心地はシトロエンならでは。今回の中でもっとも後席の同乗者にとって優しい乗り味といえる。足まわりはソフトな中にも適度にダンピングが効いていて、路面の凹凸をなめるようにいなす。コーナリングでのロールは大きめでも、常にタイヤがしなやかに路面を追従する感覚がある。
操縦感覚にドイツ車のようなカッチリ感はないものの、いたってラクに乗れて、操舵に対して素直に反応してくれるところもよい。長距離を運転しても、もっとも疲労感が小さいだろう。先進運転支援システムには、30km/h以上で作動する自動ブレーキや、車線逸脱をシートベルトの振動で知らせるユニークな装備を持つ。
◆正確性に優れるハンドリングが生む安心感のある走り…VW ゴルフトゥーラン
パワートレインは、ガソリンの1.4リットル直4ターボと7速DCTという組み合わせ。同エンジンは250Nmの最大トルクを1500~3500rpmというワイドな回転域で発生し、動力性能は十分。
世界的にも数少ないDCT(ダブルクラッチ機構)を搭載する3列シート車であり、発進時に半クラッチの制御のためかややもたつきを感じるのは否めないが、流れに乗ってしまえば、歯切れのよりシフトチェンジとダイレクト感のある走りを楽しむことができる。
一体感のある走り味は、このクルマがミニバンであることを忘れさせるほど。正確性に優れるハンドリングと高い操縦安定性により、乗用車となんら変わらない感覚で運転できるのもトゥーランならでは。
VWはこういう味付けが実に得意だ。初代よりもスポーティ志向になり、ひきしまった足まわりにより2列目以降では若干硬さを感じるが、ガチッとしたボディ剛性感や4輪がしっかり路面を捉える高いグリップ感により、乗っていて安心感がある。
先進運転支援システムは、ステアリングアシストや渋滞時の追従を支援する機能や、自動ブレーキには起こってしまった事故後の被害を最小限にとどめる機能も付くのが特徴だ。
◆俊敏なハンドリングとパワフルなディーゼル…BMW 2シリーズ グランツアラー
前輪駆動となっても、後輪駆動の上級モデルに通じる「駆け抜ける歓び」を追求したことが、ドライブすると伝わってくる。
コーナリングでのロールは小さく抑えられており、可変レシオステアリングやブレーキと駆動力の制御によりニュートラルなハンドリングを得る「パフォーマンス・コントロール」の採用もあって、ミニバンとしては異例の俊敏なハンドリングを楽しめる。強化された足まわりにより、後席の乗り心地はかなり硬めではあるが、そのぶん得たものも大きいのだ。
エンジンは1.5リットル直3ターボのガソリンと、2.0リットル直4のガソリンとディーゼルという3機種が用意されており、6速か8速のATが組み合わされる。今回は最高出力150ps、最大トルク330Nmのディーゼルをドライブしたが、体感的にもなかなかパワフルで、振動は小さく、吹け上がりが気持ちよい。さすがはエンジンでならしたBMWだ。
走行シーンにあわせて、スポーツモードを選べるし、4WDも設定されているのは嬉しいところ。先進運転支援のセンサーはシングルカメラ式で、車線逸脱警報機能や10~60km/hでの走行時に作動する歩行者検知などを備える。
◆プロパイロットと箱型ミニバンの弱点を払拭した走り…日産 セレナ G
セレナといえばミニバンとしていちはやく同一車線内での半自動運転を実現した「プロパイロット」の搭載が最大の特徴。重心が高くてトレッドが狭く、横風の影響も受けやすい箱型ミニバンではなおのこと、高速巡行時に強い味方となってくれることに違いない。
走りの印象がいかにもミニバン然としていることには否めず。とはいえそうした走りにおいては不利なパッケージにもかかわらず、全体のまとまりは悪くない。乗り心地も3列目まで十分な快適性が確保されているし、コーナリングで深くロールしても上手くバランスをとって粘るので、安定性が損なわれることはない。
動力源は150ps、200Nmを発生する自然吸気のガソリン2.0リットル直4エンジンに小出力モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドがメインで、日本車らしくCVTが組み合わされる。
今回の中では動力性能は控えめながら、実用上は大きな不満はなく、エコモーターによりアイドリングストップからの再始動が非常にスムーズで、発進加速時には後押ししてくれる感覚もあり、むろん経済性にも優れる。
これまで3回にわたって、300万円台~で買える個性派ミニバンをレポートしてきた。次回はいよいよ最終評価をお届けする。
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 岡本幸一郎)
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