【ボルボ V60 新型試乗】現行ボルボラインナップで最良の完成度…中村孝仁
ワゴン作りに定評あるボルボの新型「V60」
『XC90』に始まって、他の90シリーズを完了したSPAと呼ばれるボルボの新しいアーキテクチャ。今度は一つ下のクラス「60シリーズ」への展開が始まった。
その先陣を切った『XC60』に続くのが、今回の『V60』である。まず始めに、ボルボの長期戦力の成せる業か、今回のV60も、そのエンジンバリエーションはガソリン4気筒と、ツインエンジンと称する2種のPHEVが用意されるだけで、ディーゼルの設定はない。今回試乗したのはこのうち、ガソリンの2リットルユニットを搭載したモデルである。
また、シャシーに関して言うと、XC60にまで設定されていたエアサスがなく、リアサスペンションはいずれもユニークな横置きグラスファイバーリーフスプリングを採用したマルチリンクのみとなっている。
ボルボと言えばワゴン作りには定評があって、その歴史も長い。しかし先代のV60は、従来ボルボが追い求めてきた機能性を捨てて、スタイリッシュな、俗に言うスポーツワゴン的なモデルに変貌していたのだが、今回は再び軌道修正されて、機能的で使えるワゴンへと戻っている。それが証拠に、ラゲッジ容量は529~1441リットルと、先代比で約23%ほどの拡大を見ているし、現実的にラゲッジスペースを見てみると、使い勝手もグッとこちらの方が良いという印象を受けた。
しかも驚くことに、3サイズは先代のV60よりも小型化されているのである。特に全幅でマイナス40mmのスリム化は、開発陣が日本の事情を考慮してくれた結果ということで、まだ街中での試乗をしていないが、雑踏を行く時や、駐車スペースでは間違いなく取り回しが良く感じられるはずである。
デザイン&インテリア
スタイリングは「90シリーズ」から続く、P1800譲りのグリルを持つ端正なデザインで、ボルボ側の説明では、よりスポーティーでバックドアが寝かされたV90に比べて、バックドアが立ち気味で、従来のV70のイメージも受け継いでいると言われたが、どうしてどうして十分魅力的&スポーティーに映る。
インテリアは、これも非常に魅力的なドリフトウッドによるインパネをベースに、従来同様他のウッドパネルもチョイスできる。試乗車に装着されていたのは、オプションのリニアライムダークマットウッドという長い名前の付いたものだった。
基本的に操作系は他の90シリーズやXC60と共通だから、少なくともボルボオーナーならば戸惑うことはない。それにかなり直感的に操作できるから、他車から乗り換えてもあまり迷うことはなかった。我々のようにほぼ毎日異なるクルマに乗り、ことなる操作系に接していると、最近の安全運転支援やインフォテイメントが満載された操作系は、モノによっては非常に操作しずらく、またわかりにくい。例えばナビの地図画面の拡大縮小ですら、すぐには出来ないものがあったりして、直感的に操作ができるものは実に有難いし、恐らく誰もが使いやすいと感じるのではないかと思う。
スポーティなフィーリング
今回は、中間グレードのインスクリプションと呼ばれる、2リットル254ps、350Nmのガソリンユニットを搭載したモデルの試乗。デビュー当初のSPAを、XC90で味わった時は、正直この新しいSPAというアーキテクチャに疑問を持たざるを得なかったのだが、徐々に微妙な修正を加えているのだろうか、今回は過去にはない快適さを味わうことが出来た。
もっとも、ステアリングに対する応答性や、ボディの締まり具合などは、明らかにスポーティーな印象を与えるもので、今回のセッティングは3種用意されたうちの中間グレードで、ダイナミックと呼ばれるセッティングだそうだが、専用に開発されたタイヤとのマッチングもあるのか、フィーリング的にはかなりスポーティーである。
装着タイヤはコンチネンタルの「プレミアムコンタクト6」だが、その6の下にVOLの文字が入り、専用であることを物語っていた。各メーカー、専用タイヤの開発は以前から行っているのだが、最近は特にその傾向が強くなって、アフターマーケットで同じタイヤを購入しても、それは専用タイヤではなく、質が違う。ディーラーでしかそれを購入できないのは少々痛い。
現行ボルボラインナップで一番出来が良い
例によって、センターコンソールのノブを回してエンジン始動する独特な方法でエンジンスタート。一般道に乗り出してみる。試乗場所は千葉県の奥の方。だから、いわゆる田舎道と東金自動車道路、圏央道を走る。信号などほとんどない。まずはノーズをすぐに高速に向け、東金自動車道から圏央道をクルージングしてみた。
そしてACCを試してみる。ボルボのACCは、メルセデスと並んで評価の高いもので、かなり安心してクルマ任せが可能なACCである。車線の真ん中を走るかと思いきや、少し右による傾向があって、それを修正すべく意図的に素早くステアリングを切ってみると、非常に俊敏にノーズが動く。いわゆるキレッキレという感じだ。
気になっていた乗り心地も、個人的にはエアサスよりこのグラスファイバーリーフの方が好みで、特に突き上げ感が少なくて快適に感じられる。雨中での試乗だったが、ロードノイズや雨音の侵入も非常に軽微で、静粛性も高い。目線が高く、乗り易いSUV系は、素早い転舵に対して基本的にはロールが大きくなるが、ワゴンの場合は鋭くノーズが切れ込むので、運転は間違いなくこちらが楽しい。
そのサイズ感、完成度、スタイリングが醸し出す佇まいなど、現行ボルボラインナップで一番出来の良いモデルではないかと感じる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
『XC90』に始まって、他の90シリーズを完了したSPAと呼ばれるボルボの新しいアーキテクチャ。今度は一つ下のクラス「60シリーズ」への展開が始まった。
その先陣を切った『XC60』に続くのが、今回の『V60』である。まず始めに、ボルボの長期戦力の成せる業か、今回のV60も、そのエンジンバリエーションはガソリン4気筒と、ツインエンジンと称する2種のPHEVが用意されるだけで、ディーゼルの設定はない。今回試乗したのはこのうち、ガソリンの2リットルユニットを搭載したモデルである。
また、シャシーに関して言うと、XC60にまで設定されていたエアサスがなく、リアサスペンションはいずれもユニークな横置きグラスファイバーリーフスプリングを採用したマルチリンクのみとなっている。
ボルボと言えばワゴン作りには定評があって、その歴史も長い。しかし先代のV60は、従来ボルボが追い求めてきた機能性を捨てて、スタイリッシュな、俗に言うスポーツワゴン的なモデルに変貌していたのだが、今回は再び軌道修正されて、機能的で使えるワゴンへと戻っている。それが証拠に、ラゲッジ容量は529~1441リットルと、先代比で約23%ほどの拡大を見ているし、現実的にラゲッジスペースを見てみると、使い勝手もグッとこちらの方が良いという印象を受けた。
しかも驚くことに、3サイズは先代のV60よりも小型化されているのである。特に全幅でマイナス40mmのスリム化は、開発陣が日本の事情を考慮してくれた結果ということで、まだ街中での試乗をしていないが、雑踏を行く時や、駐車スペースでは間違いなく取り回しが良く感じられるはずである。
デザイン&インテリア
スタイリングは「90シリーズ」から続く、P1800譲りのグリルを持つ端正なデザインで、ボルボ側の説明では、よりスポーティーでバックドアが寝かされたV90に比べて、バックドアが立ち気味で、従来のV70のイメージも受け継いでいると言われたが、どうしてどうして十分魅力的&スポーティーに映る。
インテリアは、これも非常に魅力的なドリフトウッドによるインパネをベースに、従来同様他のウッドパネルもチョイスできる。試乗車に装着されていたのは、オプションのリニアライムダークマットウッドという長い名前の付いたものだった。
基本的に操作系は他の90シリーズやXC60と共通だから、少なくともボルボオーナーならば戸惑うことはない。それにかなり直感的に操作できるから、他車から乗り換えてもあまり迷うことはなかった。我々のようにほぼ毎日異なるクルマに乗り、ことなる操作系に接していると、最近の安全運転支援やインフォテイメントが満載された操作系は、モノによっては非常に操作しずらく、またわかりにくい。例えばナビの地図画面の拡大縮小ですら、すぐには出来ないものがあったりして、直感的に操作ができるものは実に有難いし、恐らく誰もが使いやすいと感じるのではないかと思う。
スポーティなフィーリング
今回は、中間グレードのインスクリプションと呼ばれる、2リットル254ps、350Nmのガソリンユニットを搭載したモデルの試乗。デビュー当初のSPAを、XC90で味わった時は、正直この新しいSPAというアーキテクチャに疑問を持たざるを得なかったのだが、徐々に微妙な修正を加えているのだろうか、今回は過去にはない快適さを味わうことが出来た。
もっとも、ステアリングに対する応答性や、ボディの締まり具合などは、明らかにスポーティーな印象を与えるもので、今回のセッティングは3種用意されたうちの中間グレードで、ダイナミックと呼ばれるセッティングだそうだが、専用に開発されたタイヤとのマッチングもあるのか、フィーリング的にはかなりスポーティーである。
装着タイヤはコンチネンタルの「プレミアムコンタクト6」だが、その6の下にVOLの文字が入り、専用であることを物語っていた。各メーカー、専用タイヤの開発は以前から行っているのだが、最近は特にその傾向が強くなって、アフターマーケットで同じタイヤを購入しても、それは専用タイヤではなく、質が違う。ディーラーでしかそれを購入できないのは少々痛い。
現行ボルボラインナップで一番出来が良い
例によって、センターコンソールのノブを回してエンジン始動する独特な方法でエンジンスタート。一般道に乗り出してみる。試乗場所は千葉県の奥の方。だから、いわゆる田舎道と東金自動車道路、圏央道を走る。信号などほとんどない。まずはノーズをすぐに高速に向け、東金自動車道から圏央道をクルージングしてみた。
そしてACCを試してみる。ボルボのACCは、メルセデスと並んで評価の高いもので、かなり安心してクルマ任せが可能なACCである。車線の真ん中を走るかと思いきや、少し右による傾向があって、それを修正すべく意図的に素早くステアリングを切ってみると、非常に俊敏にノーズが動く。いわゆるキレッキレという感じだ。
気になっていた乗り心地も、個人的にはエアサスよりこのグラスファイバーリーフの方が好みで、特に突き上げ感が少なくて快適に感じられる。雨中での試乗だったが、ロードノイズや雨音の侵入も非常に軽微で、静粛性も高い。目線が高く、乗り易いSUV系は、素早い転舵に対して基本的にはロールが大きくなるが、ワゴンの場合は鋭くノーズが切れ込むので、運転は間違いなくこちらが楽しい。
そのサイズ感、完成度、スタイリングが醸し出す佇まいなど、現行ボルボラインナップで一番出来の良いモデルではないかと感じる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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