【試乗記】レクサスLC500/LS500h/RX450h/RX450hL
- レクサスLC500/LS500h/RX450h/RX450hL
理想に向かってまた一歩
レクサスのラグジュアリークーペ「LC」と、フラッグシップセダン「LS」、そしてブランド最多のセールスを誇る「RX」。重責を担う3モデルの最新型は、どのようにリファインされたのか? マイナーチェンジのポイントと走りの印象を報告する。
最新のLCは“味付け”がポイント
レクサスの顔といえるLC、LS、RXがマイナーチェンジ。これを高速道路、ワインディングロード、市街地という異なるコースで試す機会を得た。
最初にステアリングを握ったのは、「LC500」の特別仕様車。外観は新色のボディーカラー「テレーンカーキマイカメタリック」で、呼応するかのように落ち着いた雰囲気を醸す、ブラウンのセミアリニンレザーシートを備えた一台である。
ところで2019年モデルの変更を語る前に、まず2018年モデルの改良について少しだけ説明させてほしい。なぜならこれこそが、2019年モデルの走りを実現する上で、大きな基礎になっているからである。
その改良は、ステアリングまわりを中心に行われた。具体的にはステアリングサポートをスチールからアルミダイキャスト製に変更し、ラックまわりのギアマウントブッシュの剛性を強化。さらにステアリングとラックを結ぶインターミディエイトシャフトのダンパーを小型軽量化した。これによってLCは見違えるようなクルマになったと思う。初期モデルに見られたステアリングインフォメーションの乏しさや曖昧さが見事に払拭(ふっしょく)され、このグラマラスなボディーにふさわしい直進安定性を得たのである。
ちなみに2019年モデルにおける走りの変遷は、少しばかりややこしい。今回試乗した特別試乗車のみに「乗り心地性能のさらなる向上」が図られ、かつV8ガソリンモデルのみ「車速コントロール性を向上」。シリーズ全体としては、「接地感の向上」を果たしたというのである。つまり、今回試乗した2019年モデル特別仕様車は“全部盛り”となっている。
ただしその具体的な内容は示されていない。想像するに乗り心地の面はレザーシートにおける体圧分布や、ダンパーの特性変更によって改善が図られたのだと考える。また車速コントロールはエンジンスロットル特性、接地感の向上については可変ダンパーの制御変更といった、現状素材のパラメーター変更によって、その味付けが整えられたのではないかと予想している。
最初にステアリングを握ったのは、「LC500」の特別仕様車。外観は新色のボディーカラー「テレーンカーキマイカメタリック」で、呼応するかのように落ち着いた雰囲気を醸す、ブラウンのセミアリニンレザーシートを備えた一台である。
ところで2019年モデルの変更を語る前に、まず2018年モデルの改良について少しだけ説明させてほしい。なぜならこれこそが、2019年モデルの走りを実現する上で、大きな基礎になっているからである。
その改良は、ステアリングまわりを中心に行われた。具体的にはステアリングサポートをスチールからアルミダイキャスト製に変更し、ラックまわりのギアマウントブッシュの剛性を強化。さらにステアリングとラックを結ぶインターミディエイトシャフトのダンパーを小型軽量化した。これによってLCは見違えるようなクルマになったと思う。初期モデルに見られたステアリングインフォメーションの乏しさや曖昧さが見事に払拭(ふっしょく)され、このグラマラスなボディーにふさわしい直進安定性を得たのである。
ちなみに2019年モデルにおける走りの変遷は、少しばかりややこしい。今回試乗した特別試乗車のみに「乗り心地性能のさらなる向上」が図られ、かつV8ガソリンモデルのみ「車速コントロール性を向上」。シリーズ全体としては、「接地感の向上」を果たしたというのである。つまり、今回試乗した2019年モデル特別仕様車は“全部盛り”となっている。
ただしその具体的な内容は示されていない。想像するに乗り心地の面はレザーシートにおける体圧分布や、ダンパーの特性変更によって改善が図られたのだと考える。また車速コントロールはエンジンスロットル特性、接地感の向上については可変ダンパーの制御変更といった、現状素材のパラメーター変更によって、その味付けが整えられたのではないかと予想している。
ラグジュアリークーペになってきた
果たしてこの改良によって、LCは狙い通りのハンドリングを得たと思う。乗り心地に関してはこれまでも十分なプレミアム性が得られていただけに、今回は特に、旋回性能の向上が強く印象に残った。
まず何よりLCは、素直に曲がるようになった。操舵に対して自然にロールが発生し、これを切り込んでいくとノーズがイン側にきちんと入っていくのだ。以前のLCは、操舵における初期応答性こそ高いものの、それ以降は明確なアンダーステアを示した。この点、筆者は「重たく大きなV8エンジンの搭載が影響しているのか」と考えたこともあったが、決して納得はしていなかった。なぜなら同じく大排気量ユニットを積む欧州のライバルたちは、しっかり曲がることができるからだ。
レクサスはLCに新規GL-Aプラットフォームを採用し、なおかつ後輪操舵も与えていた。これで素直な旋回性が得られなかったのは、何か理由があると思っていたのである。それこそがつまり、2019年モデルの改良点だ。持ち得る素材のキャリブレーションなのだと思う。2012年にデトロイトで登場したコンセプトカー「LF-LC」の好評を受け、直ちに開発に取りかかったLC。その5年という短い開発期間で最良の素材を用意しつつも、これをまとめる上でまずは極めてコンサバティブな方法論、つまり“安定志向のハンドリング”を用いたのだろう。
それが年次改良を経ることによって、だんだん理想に近づいてきた。前述の通りステアリングは操作性と操舵感を向上させ、可変ダンパーは素直にサスペンションを縮ませるようになった。後輪操舵もきっと、こうして各部が調整されたことによって、素直に動くようになったのではないかと思う。もはやその存在すら、大きく意識させない。
スッキリと雑味なく、よく曲がるハンドリングと、奥行きのある吸気サウンドを伴う自然吸気V8ユニットのパワー。そして心地いい咆哮(ほうこう)。これらが素直に絡み合うことでLCは、文字通りのラグジュアリークーペになったと思う。
唯一残念なのは、この良好なバランスが、速度を上げるほどに少しずつずれてくるように感じられたことだった。走行モードをSPORT S、SPORT S+と上げていくほどに車両は安定していくべきだが、そのハンドリングはスポーティーさを際立たせようと、より過敏になっていく。またこうしたモードでも乗り心地のよさを確保するためにダンピングが高まりきらない傾向があり、路面のうねり次第では、前後のピッチングが収まらない場面が見受けられた。
レクサスはそのハンドリングにおいて「すっきりと奥深い走り」という、二律背反の価値観を示している。しかしそこにとらわれすぎると、本当に運転を愛するドライバーには、その矛盾が意識されるようになるのではないかと思う。日本や北米の道路事情は、欧州のようにハイアベレージではない。ならば、今のままでも良いではないか? という声もあるかもしれない。しかしLCが本物のラグジュアリースポーツカーを目指すのであれば、さらなる領域での安定性を得たうえで、スッキリ感を維持してほしい。だからこそレクサスは年次改良を真剣かつこまめに行う決断をしたのだし、結論としては現状でもかなりの進化を見せている。次のステップが何より楽しみである。
まず何よりLCは、素直に曲がるようになった。操舵に対して自然にロールが発生し、これを切り込んでいくとノーズがイン側にきちんと入っていくのだ。以前のLCは、操舵における初期応答性こそ高いものの、それ以降は明確なアンダーステアを示した。この点、筆者は「重たく大きなV8エンジンの搭載が影響しているのか」と考えたこともあったが、決して納得はしていなかった。なぜなら同じく大排気量ユニットを積む欧州のライバルたちは、しっかり曲がることができるからだ。
レクサスはLCに新規GL-Aプラットフォームを採用し、なおかつ後輪操舵も与えていた。これで素直な旋回性が得られなかったのは、何か理由があると思っていたのである。それこそがつまり、2019年モデルの改良点だ。持ち得る素材のキャリブレーションなのだと思う。2012年にデトロイトで登場したコンセプトカー「LF-LC」の好評を受け、直ちに開発に取りかかったLC。その5年という短い開発期間で最良の素材を用意しつつも、これをまとめる上でまずは極めてコンサバティブな方法論、つまり“安定志向のハンドリング”を用いたのだろう。
それが年次改良を経ることによって、だんだん理想に近づいてきた。前述の通りステアリングは操作性と操舵感を向上させ、可変ダンパーは素直にサスペンションを縮ませるようになった。後輪操舵もきっと、こうして各部が調整されたことによって、素直に動くようになったのではないかと思う。もはやその存在すら、大きく意識させない。
スッキリと雑味なく、よく曲がるハンドリングと、奥行きのある吸気サウンドを伴う自然吸気V8ユニットのパワー。そして心地いい咆哮(ほうこう)。これらが素直に絡み合うことでLCは、文字通りのラグジュアリークーペになったと思う。
唯一残念なのは、この良好なバランスが、速度を上げるほどに少しずつずれてくるように感じられたことだった。走行モードをSPORT S、SPORT S+と上げていくほどに車両は安定していくべきだが、そのハンドリングはスポーティーさを際立たせようと、より過敏になっていく。またこうしたモードでも乗り心地のよさを確保するためにダンピングが高まりきらない傾向があり、路面のうねり次第では、前後のピッチングが収まらない場面が見受けられた。
レクサスはそのハンドリングにおいて「すっきりと奥深い走り」という、二律背反の価値観を示している。しかしそこにとらわれすぎると、本当に運転を愛するドライバーには、その矛盾が意識されるようになるのではないかと思う。日本や北米の道路事情は、欧州のようにハイアベレージではない。ならば、今のままでも良いではないか? という声もあるかもしれない。しかしLCが本物のラグジュアリースポーツカーを目指すのであれば、さらなる領域での安定性を得たうえで、スッキリ感を維持してほしい。だからこそレクサスは年次改良を真剣かつこまめに行う決断をしたのだし、結論としては現状でもかなりの進化を見せている。次のステップが何より楽しみである。
ドイツのライバルをもしのぐLS
レクサスのフラッグシップセダンであるLSには、市街地と高速道路を走る一般的なルートが設定された。主にそのフィーリングを味わう試乗となったが、こちらも確実に進化と洗練を感じ取ることができた。
試乗したグレードは「LS500h“エグゼクティブ”」。パワーユニットに3.5リッターV6(最高出力299PS)とモーター(同180PS)を採用する、4WDのハイブリッドカーである。まずそのハイブリッドシステムは、顧客の使用状況をモニターしたビッグデータをもとに進化。使用頻度が90%以上となる通常走行領域に着目して、改良を行ったのだという。バッテリーは、数値こそ公表されていないが、容量を増やして駆動力を向上させた。またこれに合わせてアクセル開度に伴う加速感をバランスさせたという。
ちなみにモーターによる駆動力は、アクセル開度40%のトラクションで比較すると、従来に比べて170N・m向上。これによってエンジン回転数を低く抑えることが可能となった。同じアクセル開度40%の状況で行う0-60km/h加速では、エンジン回転数が500rpm低められている。
シャシー面では、2018年に改良された4WD車のダンパーシステム、「伸圧独立オリフィス」がFR車にも採用された。これによって従来よりも減衰力を下げることが可能となり、乗り心地をさらに向上させることができたという。加えてランフラットタイヤは、乗り心地を改善するべくサイドウオール剛性を適正化。これによって19インチタイヤでは13%、20インチタイヤでは10%縦バネ剛性を低減することができた。
こうした地道な改良の積み重ねは、一つひとつの効果を確かめるというよりも、LS全体の質感をさらに軽やかなものにした。確かにこれまでに対してその乗り心地はスッキリ感が増し、LCと同様に“レクサスの今”を感じ取ることができる。特にリアサスペンションの動きはスムーズになり、突っ張り感がなくなった。これによって後輪操舵の動きを意識する必要はなくなり、市街地でもこの巨体をもてあますことなく運転することができた。
エアサスと新型ダンパーが織りなす軽やかな乗り心地に対して、パワーユニットの静粛性も実によくマッチングしている。蹴り出し加速が素早くトルキーであるにもかかわらず、エンジンの主張が極めて控えめなため、街中では上質な移動空間という印象が得られる。さらに高速道路でアクセル開度を高めていくと、自然吸気のV6エンジンが遠鳴りで気持ちよく吹け上がる。そのちょうどよい音圧や鼓動感は、LSという車格にふさわしいと感じられた。
これ以上の領域での変化については、正直、今回の試乗では分かりかねる。しかし前述した9割のユーザーが使用する環境においては、LSならではの風格と静粛性を披露してくれると感じる。ドイツ勢も最近はこの日常領域におけるドライバビリティーを向上させてきているが、こと日本の使用環境においては、LSの方が軽やかさの点で一枚上手なのではないだろうか。6ライトのクーペライクなシルエットと相まって、今回のマイナーチェンジはLSの魅力を大きく引き上げたと思う。
試乗したグレードは「LS500h“エグゼクティブ”」。パワーユニットに3.5リッターV6(最高出力299PS)とモーター(同180PS)を採用する、4WDのハイブリッドカーである。まずそのハイブリッドシステムは、顧客の使用状況をモニターしたビッグデータをもとに進化。使用頻度が90%以上となる通常走行領域に着目して、改良を行ったのだという。バッテリーは、数値こそ公表されていないが、容量を増やして駆動力を向上させた。またこれに合わせてアクセル開度に伴う加速感をバランスさせたという。
ちなみにモーターによる駆動力は、アクセル開度40%のトラクションで比較すると、従来に比べて170N・m向上。これによってエンジン回転数を低く抑えることが可能となった。同じアクセル開度40%の状況で行う0-60km/h加速では、エンジン回転数が500rpm低められている。
シャシー面では、2018年に改良された4WD車のダンパーシステム、「伸圧独立オリフィス」がFR車にも採用された。これによって従来よりも減衰力を下げることが可能となり、乗り心地をさらに向上させることができたという。加えてランフラットタイヤは、乗り心地を改善するべくサイドウオール剛性を適正化。これによって19インチタイヤでは13%、20インチタイヤでは10%縦バネ剛性を低減することができた。
こうした地道な改良の積み重ねは、一つひとつの効果を確かめるというよりも、LS全体の質感をさらに軽やかなものにした。確かにこれまでに対してその乗り心地はスッキリ感が増し、LCと同様に“レクサスの今”を感じ取ることができる。特にリアサスペンションの動きはスムーズになり、突っ張り感がなくなった。これによって後輪操舵の動きを意識する必要はなくなり、市街地でもこの巨体をもてあますことなく運転することができた。
エアサスと新型ダンパーが織りなす軽やかな乗り心地に対して、パワーユニットの静粛性も実によくマッチングしている。蹴り出し加速が素早くトルキーであるにもかかわらず、エンジンの主張が極めて控えめなため、街中では上質な移動空間という印象が得られる。さらに高速道路でアクセル開度を高めていくと、自然吸気のV6エンジンが遠鳴りで気持ちよく吹け上がる。そのちょうどよい音圧や鼓動感は、LSという車格にふさわしいと感じられた。
これ以上の領域での変化については、正直、今回の試乗では分かりかねる。しかし前述した9割のユーザーが使用する環境においては、LSならではの風格と静粛性を披露してくれると感じる。ドイツ勢も最近はこの日常領域におけるドライバビリティーを向上させてきているが、こと日本の使用環境においては、LSの方が軽やかさの点で一枚上手なのではないだろうか。6ライトのクーペライクなシルエットと相まって、今回のマイナーチェンジはLSの魅力を大きく引き上げたと思う。
新RXで注目すべきは乗り心地
初代LS(日本名「セルシオ」)がデビューしてから既に30年の歳月が流れたというのに、レクサスは欧州の列強に対して自身を「ラグジュアリーブランドとしてはまだまだ若い」と謙遜する。しかしながらこのRXに関しては、彼らも少なからず自信を持っているのではないだろうか。なぜならこのミドルレンジSUVは1998年という早い段階に世界デビューを果たして以来、現在のSUVブームに先駆けて時代を走ってきたパイオニアなのだから。
そんな最新世代のRXは、2019年の8月に初めてマイナーチェンジした。今回はそのうち、ハイブリッドのスポーティーモデル「RX450“Fスポーツ”」と、3列目シートを備える「RX450hL」(同じくハイブリッド)に試乗することができた。
開発陣いわく、変更点は大きく分けて3つ。ひとつは「デザインのリファイン」であり、2つ目は「動力性能の向上」、そして最後に「コネクティビティー性能の向上」が挙げられるという。
デザインから触れると、ヘッドライトはLSと同じ3連フルLEDライトとなり、最新の安全システムとして「ブレードスキャンAHS」を採用。これは「部分的にライトの照射範囲をカットすることで、前走車や対向車を気にせずハイビームを使えるシステム」を、さらに進化させたもの。ねじれた形状の反射板を高速回転させて照射するのがミソで、いわゆるマトリクスヘッドライトのようにLEDを多く必要とせず、24個のLEDでも400個相当の光量が得られるという。
さらにこのヘッドライトやボディーラインと合わせて、スピンドルグリルも意匠が変更された。グリルのパターンもL字をモチーフとしたメッシュパターンに改められている。一見して何が変わったのかはわかりにくいが、どことなくシャープでエレガントになった印象。コンサバな割に手の込んだデザイン変更だと思う。
肝心の動力性能の向上は、まず根幹となるボディーに改良の手が加えられた。まずルーフ周りを中心としたアッパーボディーには構造用接着剤を使い、接着部分をこれまでより2.3m延長。またサイドシルやピラー周辺のアンダーボディーについても1.9m増とした。さらに、サスペンション取り付け部の周辺やピラー周りのフロア側といった“応力が集中する部分”にはスポット溶接を行い、従来よりも打点を14点増やしている。
実際、マイナーチェンジの効果は乗り心地のよさに表れたと思う。かつ、Fスポーツ専用となる「フリクションコントロールダンパー」が路面からの入力を巧みに吸収し、荒れた路面でも快適な乗り心地を実現している。またボディーに取り付けられたパフォーマンスダンパーの効果が高いのか、フロアからは不快な振動も感じられない。操舵に対する応答性は自然で、素直によく曲がる。LCやLSと同じく“すっきりとした味わい”が核となっていて、ここにレクサスの血統を感じた。
ただ、これだけいいボディーがあるならば、そしてFスポーツを名乗るならば、もう少しサスペンション剛性を高く取ってもよいのではないかとも思えた。街中や高速道路ではちょうどよく感じられたそのハンドリングも、ワインディングロードレベルの荷重領域になると、やや初期の踏ん張りが足りないように思うのである。特に高速コーナーでは、ちょっとフロントが巻き込み過ぎてしまうように感じる。
もう少しだけサスペンションがグッと踏ん張り、タイヤのグリップを引き出した上で曲がってくれる方が、ハイブリッドシステムを搭載する重めの車重から考えても、安心感は高い。エアサスとまではいわずとも、もう少し容量の大きな可変ダンパーを組み合わせることができれば、この乗り心地を維持したままロールスピードを抑えることができるのではないか。
……という印象を開発陣に伝えると、Fスポーツの立ち位置をあらためて教えられた。“F”の文字が付くとどうしても「RC F」や「GS F」のようなハンドリングを思い浮かべてしまうが、このFスポーツはもっとライトなスポーツ仕様だ、というのである。アウディで例えれば、「S」シリーズではなく「Sライン」。そう考えると、なるほど、少しだけ納得することはできた。
そんな最新世代のRXは、2019年の8月に初めてマイナーチェンジした。今回はそのうち、ハイブリッドのスポーティーモデル「RX450“Fスポーツ”」と、3列目シートを備える「RX450hL」(同じくハイブリッド)に試乗することができた。
開発陣いわく、変更点は大きく分けて3つ。ひとつは「デザインのリファイン」であり、2つ目は「動力性能の向上」、そして最後に「コネクティビティー性能の向上」が挙げられるという。
デザインから触れると、ヘッドライトはLSと同じ3連フルLEDライトとなり、最新の安全システムとして「ブレードスキャンAHS」を採用。これは「部分的にライトの照射範囲をカットすることで、前走車や対向車を気にせずハイビームを使えるシステム」を、さらに進化させたもの。ねじれた形状の反射板を高速回転させて照射するのがミソで、いわゆるマトリクスヘッドライトのようにLEDを多く必要とせず、24個のLEDでも400個相当の光量が得られるという。
さらにこのヘッドライトやボディーラインと合わせて、スピンドルグリルも意匠が変更された。グリルのパターンもL字をモチーフとしたメッシュパターンに改められている。一見して何が変わったのかはわかりにくいが、どことなくシャープでエレガントになった印象。コンサバな割に手の込んだデザイン変更だと思う。
肝心の動力性能の向上は、まず根幹となるボディーに改良の手が加えられた。まずルーフ周りを中心としたアッパーボディーには構造用接着剤を使い、接着部分をこれまでより2.3m延長。またサイドシルやピラー周辺のアンダーボディーについても1.9m増とした。さらに、サスペンション取り付け部の周辺やピラー周りのフロア側といった“応力が集中する部分”にはスポット溶接を行い、従来よりも打点を14点増やしている。
実際、マイナーチェンジの効果は乗り心地のよさに表れたと思う。かつ、Fスポーツ専用となる「フリクションコントロールダンパー」が路面からの入力を巧みに吸収し、荒れた路面でも快適な乗り心地を実現している。またボディーに取り付けられたパフォーマンスダンパーの効果が高いのか、フロアからは不快な振動も感じられない。操舵に対する応答性は自然で、素直によく曲がる。LCやLSと同じく“すっきりとした味わい”が核となっていて、ここにレクサスの血統を感じた。
ただ、これだけいいボディーがあるならば、そしてFスポーツを名乗るならば、もう少しサスペンション剛性を高く取ってもよいのではないかとも思えた。街中や高速道路ではちょうどよく感じられたそのハンドリングも、ワインディングロードレベルの荷重領域になると、やや初期の踏ん張りが足りないように思うのである。特に高速コーナーでは、ちょっとフロントが巻き込み過ぎてしまうように感じる。
もう少しだけサスペンションがグッと踏ん張り、タイヤのグリップを引き出した上で曲がってくれる方が、ハイブリッドシステムを搭載する重めの車重から考えても、安心感は高い。エアサスとまではいわずとも、もう少し容量の大きな可変ダンパーを組み合わせることができれば、この乗り心地を維持したままロールスピードを抑えることができるのではないか。
……という印象を開発陣に伝えると、Fスポーツの立ち位置をあらためて教えられた。“F”の文字が付くとどうしても「RC F」や「GS F」のようなハンドリングを思い浮かべてしまうが、このFスポーツはもっとライトなスポーツ仕様だ、というのである。アウディで例えれば、「S」シリーズではなく「Sライン」。そう考えると、なるほど、少しだけ納得することはできた。
優しさが魅力のRX450hL
最後に試乗したRX450hLは、レクサスとRXの魅力をテンコ盛りにした一台だった。
そのボディーは、3列目シートをおさめるためにジャスト5mの長さがとられている。レギュラーモデルに対し110mmリアを延長しているわけだが、全幅とホイールベースは同じだから、路上における取り回しには、さほど違和感を覚えることはない。
エンジンは、前述のFスポーツと同じくハイブリッド。そして駆動方式は、リアに独立したモーターを配置する4WD「EーFour」である。こうして車重は2240kgにまで膨れ上がっているが、その走りは意外にもまとまっていた。乗り心地はFスポーツに比べて特別ソフトな印象はないが、硬さもない。本当にちょうどいいバランス感である。またそのハンドリングも、レクサスらしいスッキリ感を演出した上で、そこに穏やかさがにじみ出ているのが印象的だった。重量は増したものの、その前後の配分は予想以上に整っているのだろう。
そしてこの優しい身のこなしに、ハイブリッドの特性が絶妙にマッチする。LCのようなビッグデータを元にした改良はどうやら施されていないようだが、そもそもこのハイブリッドのデキが素晴らしい。モーターのトルクでこの巨体をスーッと転がしながら、静かに速度を上げていく走りは、ハンドリング同様、穏やかそのものだ。さらに必要とあらば3.5リッターV6のパワーを引き出して、きちんと加速できる。しかし個人的には、キビキビと走るよりも優しい走りの方が、RX450hLには似合っていると感じた。
そんなRX450hのハイライトはしかし、走りというより3列目シートのリファインだろう。この3列目は2017年末に登場したが、レクサスとしてもそれほど需要があるとは思っていなかったようである。しかしこれがなかなか好調で、市場からの「やっぱり少し狭い!」という声を受けて、シートを95mmスライドできる機能が加わったのだという。
ところで一体誰が、このシートに座るのだろう?
それはなんと、おじいちゃんとおばあちゃん。愛する孫と出掛けるべく、息子もしくは娘夫婦のマイカーの購入を助ける。となると若夫婦は、おじいちゃんとおばあちゃんが乗れる6人、7人乗りのクルマを選ぶ。その候補として、RXのようなスタイリッシュなSUVにも3列目シートの需要が出てくるのだ。レクサスは当初、この3列目を子ども用として用意したはずだ。しかしそんなおじいちゃんとおばあちゃんは、大事な孫を3列目に座らせない。だからこそ彼らが一番後ろに座り、そこに「もう少し広いスペース」が必要になったのである。
ちなみに今回の3列目シートは、身長170cmの筆者にとってはちょっとだけ窮屈な場所だった。短い距離なら大丈夫だが、長距離はちょっと無理そうだ。RXのリアゲートはかっこつけて少し傾斜しているから、きちっと背筋を伸ばすと後髪がルーフに触れる。シートもそれほど肉厚ではないから、不整地では突き上げも感じるだろう。おじいちゃんとおばあちゃん、本当にこれで移動するのだろうか?
もっとも3列目シートのスペース確保はラゲッジを犠牲にして成り立つから、実際に使うのは近場の移動だけで、フル乗車での旅行などはしないのかもしれない。そういう風に使うのであれば「マツダCX-8」か、ミニバンを選ぶことになると思う。
ともあれ、なんとも“腰の低い”スポンサーだ。もし孫がこの祖父母の厚意に甘えて2列目シートにふんぞりかえり、会話もしないまま「ニンテンドースイッチ」をやりまくっていたら……。想像するだけで泣けてくる。3列目シートを使って長旅に出るなら、ぜひサービスエリアごとに席替えをして、仲良く楽しんでほしい!
もちろんそんな家族ばかりではないだろうけど、こうした需要も間違いなくあるのだ。それもこれもRXが「かっこいいSUV」として世間に認知されているからだろう。罪作りだよ、レクサスは。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
そのボディーは、3列目シートをおさめるためにジャスト5mの長さがとられている。レギュラーモデルに対し110mmリアを延長しているわけだが、全幅とホイールベースは同じだから、路上における取り回しには、さほど違和感を覚えることはない。
エンジンは、前述のFスポーツと同じくハイブリッド。そして駆動方式は、リアに独立したモーターを配置する4WD「EーFour」である。こうして車重は2240kgにまで膨れ上がっているが、その走りは意外にもまとまっていた。乗り心地はFスポーツに比べて特別ソフトな印象はないが、硬さもない。本当にちょうどいいバランス感である。またそのハンドリングも、レクサスらしいスッキリ感を演出した上で、そこに穏やかさがにじみ出ているのが印象的だった。重量は増したものの、その前後の配分は予想以上に整っているのだろう。
そしてこの優しい身のこなしに、ハイブリッドの特性が絶妙にマッチする。LCのようなビッグデータを元にした改良はどうやら施されていないようだが、そもそもこのハイブリッドのデキが素晴らしい。モーターのトルクでこの巨体をスーッと転がしながら、静かに速度を上げていく走りは、ハンドリング同様、穏やかそのものだ。さらに必要とあらば3.5リッターV6のパワーを引き出して、きちんと加速できる。しかし個人的には、キビキビと走るよりも優しい走りの方が、RX450hLには似合っていると感じた。
そんなRX450hのハイライトはしかし、走りというより3列目シートのリファインだろう。この3列目は2017年末に登場したが、レクサスとしてもそれほど需要があるとは思っていなかったようである。しかしこれがなかなか好調で、市場からの「やっぱり少し狭い!」という声を受けて、シートを95mmスライドできる機能が加わったのだという。
ところで一体誰が、このシートに座るのだろう?
それはなんと、おじいちゃんとおばあちゃん。愛する孫と出掛けるべく、息子もしくは娘夫婦のマイカーの購入を助ける。となると若夫婦は、おじいちゃんとおばあちゃんが乗れる6人、7人乗りのクルマを選ぶ。その候補として、RXのようなスタイリッシュなSUVにも3列目シートの需要が出てくるのだ。レクサスは当初、この3列目を子ども用として用意したはずだ。しかしそんなおじいちゃんとおばあちゃんは、大事な孫を3列目に座らせない。だからこそ彼らが一番後ろに座り、そこに「もう少し広いスペース」が必要になったのである。
ちなみに今回の3列目シートは、身長170cmの筆者にとってはちょっとだけ窮屈な場所だった。短い距離なら大丈夫だが、長距離はちょっと無理そうだ。RXのリアゲートはかっこつけて少し傾斜しているから、きちっと背筋を伸ばすと後髪がルーフに触れる。シートもそれほど肉厚ではないから、不整地では突き上げも感じるだろう。おじいちゃんとおばあちゃん、本当にこれで移動するのだろうか?
もっとも3列目シートのスペース確保はラゲッジを犠牲にして成り立つから、実際に使うのは近場の移動だけで、フル乗車での旅行などはしないのかもしれない。そういう風に使うのであれば「マツダCX-8」か、ミニバンを選ぶことになると思う。
ともあれ、なんとも“腰の低い”スポンサーだ。もし孫がこの祖父母の厚意に甘えて2列目シートにふんぞりかえり、会話もしないまま「ニンテンドースイッチ」をやりまくっていたら……。想像するだけで泣けてくる。3列目シートを使って長旅に出るなら、ぜひサービスエリアごとに席替えをして、仲良く楽しんでほしい!
もちろんそんな家族ばかりではないだろうけど、こうした需要も間違いなくあるのだ。それもこれもRXが「かっこいいSUV」として世間に認知されているからだろう。罪作りだよ、レクサスは。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
あわせて読みたい「レクサス」関連記事
最新ニュース
-
-
日産がEVオーナー5000人に「EV乗り換え後調査」、87%が満足「静かな車内で会話が増えた」
2024.11.27
-
-
-
アウディ、新型クーペSUV『Q5スポーツバック』発表、「MHEVプラス」で燃費追求
2024.11.27
-
-
-
トヨタ、「GRハイラックス」6台体制でダカールラリー2025に挑む
2024.11.27
-
-
-
ヤマハ、「EVのF1」フォーミュラE初参戦へ「できる限り早く表彰台に」 12月7日開幕
2024.11.27
-
-
-
レッドブル・ホンダのフェルスタッペン、F1ドライバーズチャンピオン獲得!!
2024.11.27
-
-
-
トヨタのハイブリッドミニバン『イノーバハイクロス』、発売2年で10万台販売
2024.11.26
-
-
-
キャデラック、F1参戦を表明…2026年から
2024.11.26
-
最新ニュース
-
-
日産がEVオーナー5000人に「EV乗り換え後調査」、87%が満足「静かな車内で会話が増えた」
2024.11.27
-
-
-
アウディ、新型クーペSUV『Q5スポーツバック』発表、「MHEVプラス」で燃費追求
2024.11.27
-
-
-
トヨタ、「GRハイラックス」6台体制でダカールラリー2025に挑む
2024.11.27
-
-
-
ヤマハ、「EVのF1」フォーミュラE初参戦へ「できる限り早く表彰台に」 12月7日開幕
2024.11.27
-
-
-
レッドブル・ホンダのフェルスタッペン、F1ドライバーズチャンピオン獲得!!
2024.11.27
-
-
-
トヨタのハイブリッドミニバン『イノーバハイクロス』、発売2年で10万台販売
2024.11.26
-
MORIZO on the Road