大波乱を乗り越えGT300王座奪還! 近藤真彦監督が語る仲間への感謝とモータースポーツ愛 [SUPER GT/GT300ドライバーランキング]

  • SUPER GT GT300クラスチャンピオン 56号車 KONDO RACING (c)GTA

    SUPER GT GT300クラスチャンピオン 56号車 KONDO RACING (c)GTA

2022年のSUPER GT最終戦の決勝レースが行われた、モビリティリゾートもてぎのサーキット内が大きくどよめいたのは、GT300クラスのトップが42周目を走行していた時だ。
この最終戦にランキングトップで乗り込み、6番グリッドからスタートし安定した走りを見せていた56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの右フロントタイヤが外れる映像が流れたからだ。

何とかピットまで帰還しタイヤを交換してコースに復帰したものの、21番手まで順位を落とし大きくポイント圏内から脱落することとなった。

そして、この時点でほとんどの人が56号車GT-Rはチャンピオン争いから脱落したと感じたのではないだろうか。

1年間ランキングトップを守り抜いた56号車GT-R

  • 56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

    56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

今シーズンの56号車GT-Rは、昨季に続き開幕戦で勝利をおさめ、そのまま最終戦までランキングトップの座をキープしていた。第5戦鈴鹿では、接触やFCY中の追い抜きなどでペナルティをもらいノーポイントのレースとなったが、それ以外のレースではポイントを獲得している。

当然、序盤からポイントを重ねるということは大きなサクセスウエイトを積んでのレースが続くものの、そこはチャンピオン経験チームとしての総合力を見せつけるシーズンとなっていた。

迎えた最終戦の予選、タイム順は7番手ながら他車のペナルティで6番グリッドからスタートすることとなった56号車GT-R。同じGT-R勢でランキング3位につける10号車 TANAX GAINER GT-Rは7番グリッド、15ポイント差の4位となる52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTは9番グリッドからスタートとなっている。

そして2.5ポイント差のランキング2位で、直接的なライバルとなる61号車 SUBARU BRZ GT300は、なんと予選アタック中の最終コーナーでまさかのスピン。さらにその後イン側のウォールに衝突し、マシン後方を大きく破損してしまう。その結果Q2進出組の中で最後尾となる16番グリッドからのスタートとなった。

この予選での61号車BRZのクラッシュと、56号車GT-Rがタイヤが外れるというトラブル、それでも結果的にチャンピオンを獲得できたストーリーについて、56号車 KONDO RACINGの近藤真彦監督がその時の心の内を赤裸々に語ってくれた。
 

近藤監督のモータースポーツ愛あふれる言葉の数々が胸を打つ

  • KONDO RACING 近藤真彦監督 (c)GTA

    KONDO RACING 近藤真彦監督 (c)GTA

まず61号車BRZのクラッシュについて。「昨日の予選でスバルがクラッシュしたんですよね。その時は本当に全然喜べなくって。2.5ポイント差しかなかったんですが、スバルの前でゴールすれば僕たちがチャンピオンだと思っていましたし、この2人のドライバーがいれば間違いなくチャンピオンになれるという自信があったので、ライバル勢のクラッシュは残念に思っていました」

ライバルのクラッシュを喜ぶことができないというのは、アイドルとして絶頂期の20代の頃からモータースポーツの魅力にハマり、みんなでその魅力を伝えていきたいという想いの強い近藤監督だからこその本心だろう。
そして、56号車GT-Rは、2020年にチャンピオンを獲得し、2021年は悔しい2位、そして今年もランキングトップをキープするというドライバーとチームの実力に対して本当に自信を持っている、そうした想いが凝縮されているように感じられた。

そして迎えた決勝レースでのトラブルを受け、近藤監督は一つ一つ丁寧に言葉を並べていく。

「その(スバルがクラッシュした)時、明日は我が身だと思っていたんですけど、今日レースでとんでもないことが起こってしまって、いきなり天国から地獄に落ちて、一人ぼっちになって部屋に戻って、こんなこともあるかな、これがレースかななんて思っていました。

でも俺はいろんなチームがトラブルにあっても喜ばなかったと思ったんですよね。ひょっとしたら僕らに起こったトラブルで喜んでいるチームもあるのかなとか、複雑なことを考えながらピットに戻ってきました。

そうしたら、今度は同じタイヤの開発を一緒に頑張っているヨコハマ勢のGT300マシンがぐいぐい前のマシンを抜いていって、それぞれ自分たちのポイントを少しずつ上げていってくれていて、そのことが僕たちをチャンピオンに導いてくれました。

そういうストーリーがあったからこそ、やっぱりレースは自分達1チームでやっているのではないということを、改めて今日のレースで感じました。レースの魅力を改めて肌ですごく感じることができました」
 
  • GT300クラスチャンピオンとしてチェッカーを受ける56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(c)GTA

    GT300クラスチャンピオンとしてチェッカーを受ける56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(c)GTA

56号車GT-Rにトラブルが起こったあと、一時は10号車GT-Rに流れが大きく傾きかけた。だが終盤、ヨコハマタイヤをはいた87号車 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3、18号車 UPGARAGE NSX GT3、88号車 Weibo Primez ランボルギーニ GT3が速さをみせ、連続して襲い掛かるライバルとのバトルでタイヤを使い果たした10号車GT-Rはズルズルと後退していく。

また2番手を走行し、もしトップのマシンに何かあった場合逆転チャンピオンの可能性もあった52号車スープラGTも、87号車ランボルギーニにかわされその権利を失うこととなった。

このように、ヨコハマタイヤ勢の終盤の活躍によって、56号車GT-Rは奇跡のようなチャンピオン獲得を成し遂げていたのだ。
  • 56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(左)と藤波清斗(右)(c)GTA

    56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(左)と藤波清斗(右)(c)GTA

そして、決してあきらめることのなかったドライバーのコメントも紹介しておこう。

前半スティントを担当した藤波清斗は「タイヤがとれてしまった時、もしかしたらコースの途中で止めてしまうなんてこともありえたと思いますが、J-Pさんが必死に戻ってきてくれましたし、またすぐにタイヤをつけて送り出してくれたスタッフにも感謝しています。

チームに加入して3年目で、昨年は悔しい想いもしましたし、絶対チャンピオンを獲得しなければと思っていたので、すごくうれしかったです」とその喜びをかみしめるように語っていた。

そして、トラブルに見舞われたジョアオ・パオロ・デ・オリベイラは、だんだんとチャンピオンに近づいている状況を知らされない中でも、ベストの走りでチームの期待に応えていた。

「ジェットコースーのような一日。(タイヤを付け換えるため)ピットに戻ったあとも、セーフティカーが出るなど何かチャンスがあるんじゃないかと願いながら、とにかく自分たちを信じて頑張りました。最後の頃はチームとの無線のやり取りはなくなったので、自分の走りに集中していました。

チェッカーを受けて、レースエンジニアから20位だったよと無線が入り、ああそうかと思っていましたが、3秒くらい経ったところで『そして僕たちはチャンピオンを獲得したんだ』と聞いてすごく驚きましたし、気持ちが動転してどういうリアクションを取ればいいのか分からなくなったんですが、とにかく涙があふれてきました」と、あきらめない気持ちの強さを感じさせてくれた。
 

今後のモータースポーツ界をけん引していく近藤監督の人間力

  • シリーズチャンピオン記者会見で笑顔を見せる近藤真彦監督とオリベイラ、藤波清斗

    シリーズチャンピオン記者会見で笑顔を見せる近藤真彦監督とオリベイラ、藤波清斗

そして、近藤監督は来季もGT300での連覇、そしてGT500での活躍に対しての抱負も語ってくれた。

「コロナ禍でパドックや応援席での応援の仕方などが制限されていましたが、ピークも過ぎて少しだけお客さんとの接触ができるような1年だったということに、GTAさんや各メーカーさん、そしてファンのみなさんにお礼を言いたいと思います。そのおかげで、僕たちはのびのびとレースができるようになりました。

今のGT300でチャンピオンを獲るということは、GT500でチャンピオンを獲ることと同等、もしくはそれ以上に難しいことだと思います。ライバルもたくさんいますしね。でもこの2人のドライバーも一生懸命頑張って、チームもヨコハマタイヤも頑張ってくれているので、来年もまたGT300でチャンピオンを目指して、GT500でもチャンピオンを獲れるように頑張っていきたいと思います」

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今年、12号車 カルソニック IMPUL ZでGT500クラスのチャンピオンを獲得した平峰一貴は、2016年~2018年はスーパー耐久で、2019年にはGT300とKONDO RACINGに所属していた。

同じチャンピオン記者会見に参加していた平峰に対し、最後に近藤監督は、「平峰がいろいろ偉そうなこと言ってますけど、彼を育てたのはうちのチームなので(笑)。星野(一義)さんのところに預かっていただいてチャンピオンを獲ってくれたことは自分のことのようにうれしいです」と平峰を祝福した。

モータースポーツに対して深い愛情を持つだけでなく、関係者、ファンへの感謝、そしてドライバーへのリスペクトなど、今回いろいろお話を伺う中で、近藤監督の人間力を改めて感じることができた。

なるほど、闘将星野一義監督が「俺たちの次にレース界を引っ張っていく存在」に指名している理由もこうした人間力にあるのかもしれない。

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:GTA、GAZOO編集部)

 

SUPER GT GT300ドライバータイトル

PoNoDriverTotalBehindRd1Rd2Rd3Rd4Rd5Rd6Rd7Rd8
156藤波 清斗
ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ
52-20211586
261井口 卓人
山内 英輝
49.5-2.536.520416
310大草 りき49-3510161143
452川合 孝汰48-41882011
552吉田 広樹47-5882011
610富田 竜一郎45-751016113
711安田 裕信
石川 京侍
35-17141515
818小林 崇志
太田 格之進
34-1815118
94谷口 信輝
片岡 龍也
33-1942054
1065蒲生 尚弥
篠原 拓朗
33-191115511
117荒 聖治29-232162
1255武藤 英紀
木村 偉織
26-261421
1388小暮 卓史
元嶋 佑弥
25-2736286
142加藤 寛規
堤 優威
24.5-27.51.5320
1587松浦 孝亮
坂口 夏月
23-2933215
1696新田 守男
高木 真一
22.5-29.52.546235
177近藤 翼21-3121
185冨林 勇佑
平木 玲次
15-3715
1930織戸 学14-38311
2034柳田 真孝
井出 有治
12.5-39.57.55
216片山 義章12-4066
2230平良 響
上村 優太
11-4111
2360吉本 大樹
河野 駿佑
11-41281
249ケイ・コッツォリーノ
横溝 直輝
8-448
257アウグスト・ファルフス8-4462
266本山 哲
ロベルト・メルヒ・ムンタン
6-466
2720平中 克幸
清水 英志郎
6-4642
2810塩津 佑介5-4714
2950加納 政樹
阪口 良平
末廣 武士
4-484
3030永井 宏明3-493
31360青木 孝行2.5-49.50.511
32360柴田 優作1.5-50.50.51
3352菅波 冬悟1-511
3425松井 孝允
野中 誠太
1-511
35244佐藤 公哉
三宅 淳詞
1-511
36360名取 鉄平1-511
37360田中 篤0.5-51.50.5


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