星野一義率いるTEAM IMPULが27年ぶりの戴冠! チーム力を劇的に底上げした大きな変化とは!? [SUPER GT/GT500ドライバーランキング]

  • SUPER GT GT500クラスチャンピオン TEAM IMPUL (c)GTA

    SUPER GT GT500クラスチャンピオン TEAM IMPUL (c)GTA

「いろんな周りの人から27年ぶりだと言われて、そんな前だったかな」と会見の冒頭で話をしたのは、現役当時「日本一速い男」と呼ばれたTEAM IMPULの星野一義監督だ。

SUPER GTのGT500クラスで、2022年シーズンの最終戦をランキング2位で迎えたTEAM IMPULは、2番グリッドからスタートし2位でフィニッシュ、実に27年ぶりとなるシリーズタイトルを獲得したのだ。

序盤、2番手のマシンを抜きあぐねトップとの差がじわじわと広がっていく展開、そして中盤からのレースの半分は燃料をセーブするためにペースをコントロールしていたトップのマシンをやはり抜ききれず、後ろからもマシンが迫り3台での手に汗握る首位攻防バトルが繰り広げられた。

平峰が感じていた「胃に穴の開くような」プレッシャーとチャンピオン獲得への決意

  • 12号車 カルソニック IMPUL Z (c)GTA

    12号車 カルソニック IMPUL Z (c)GTA

今シーズンのTEAM IMPULは第3戦こそ電気系のトラブルで2周目にマシンを止めることとなったが、それ以外のレースではポイントを獲得、第5戦では予選最後尾から優勝を果たすなど、近年の不振が嘘のような活躍で最終戦を迎えた。
実際に、「前半戦ちょっと苦労した部分もありましたが、後半に行くにつれてクルマもタイヤもどんどん良くなってきて、ライバルのチームと戦えるようになってきたかな」と、チーム3年目となるエースドライバー平峰一貴はシーズンを振り返っている。

それだけに、このタイトルがかかった最終戦は、チームに大きなプレッシャーを与えていたことは想像に難くない。
そして、そのプレッシャーを一番感じていたのは、その平峰だろう。
  • TEAM IMPUL 平峰一貴

    TEAM IMPUL 平峰一貴

レース後のインタビューで、「何とかこの3年目のシーズンでチャンピオンを獲りたい、負けたくないという気持ちで、自分なりにたくさんの努力を重ねてきたつもりですし、最後胃にちょっと穴が空いているんじゃないかなと思うくらい苦しかったんです」と、そのプレッシャーについて語っている。

迎えた最終戦についても、「前日からセカンドスティントで40周くらい行くからねと聞いていましたが、まあ、長かったです。人生でこんなに長い40ラップなんてなかったというくらい長かったです」と、これまでにないほどのプレッシャーの中で戦っていた。

ただ、それは根拠のないプレッシャーではなかった。シーズンが始まる前からチャンピオン獲得への強い想いを抱いていたが、第5戦鈴鹿でのレースがターニングポイントとなり、「鈴鹿のレースでテール・トゥ・ウィンしたことで、監督とチームのみんなに絶対チャンピオンをプレゼントするって腹をくくりました」と、より強固な決意もあわせ持つようになっていた。

2つの大きな変化がTEAM IMPULのチーム力を底上げした

  • 平峰一貴と抱擁するベルトラン・バゲット(左)(c)GTA

    平峰一貴と勝利を喜ぶベルトラン・バゲット(左)(c)GTA

今年、日産勢はニューマシンを投入、ドライバーも新たにベルトラン・バゲットを迎えての新体制となった。しかし今年の変化は、確実にチームにとっていい流れとなっていたようだ。

そのバゲットに対して平峰は最初から全く心配がなかったという。
「今年バケットさんが加入してくれましたが、『バケットさんと組む日が来るなんて』とワクワクしましたし僕を奮い立たせてくれました。すごい経験もあると思うんですけど、もともと持っている速さであったりとかドライビングスタイルなど、学ぶことがすごく多くて、本当に組むことができて良かったですし感謝しています」と、平峰にとって心配どころかプラスの要素が多かったようだ。

そして、平峰はもう一つチームに大きな変化があったという。それは、星野一義監督の息子であり、2021年シーズンでSUPER GTドライバーからの引退を発表していた星野一樹がチームに加入したことだという。
  • 平峰一貴と抱擁する星野一樹(右)(c)GTA

    平峰一貴と熱く抱擁する星野一樹(右)(c)GTA

「一番今年大きく変わったなと思うのが、今年から星野一樹さんが入ってきてくれたことです。作戦であったりとか、僕らドライバーとエンジニアの間に入ってコミュニケーションを取ってくれたりすることで、凄まじいくらいにチーム力を底上げしてくれました。それは監督も、チームスタッフも、バゲットさんも感じていることだと思います。

一樹さんもプレッシャーを感じていると言っていましたが、それでも僕らを常に支えようとしてくれる愛情であったり、熱い想いというのは、僕らの背中を常に押してくれてたなと思います」と語っている。

そのチーム力が底上げされたことは星野一義監督も感じているようだ。

「うちのチームがこんなにまとまった年は珍しいくらい。毎回トップレベルのピットイン、ピットアウト作業をしてくれたスタッフやデザイナー、エンジニアが一樹からのオーダーを素早く計算してくれたりと、チーム全体がすごく成長したと思います。成長していないのは僕だけですけど(笑)、これで来年は自宅にいて、優勝した報告だけしてくれればいいというくらい育っています」と、信頼感の高さを何度も口にしていた。

チャンピオンを獲得したことで感じる感謝の数々

  • SUPER GT第8戦もてぎでバトルする12号車 カルソニック IMPUL Z (c)GTA

そして、2位でフィニッシュした緊迫の最終戦を振り返りながら、平峰はチャンピオンを獲得できた感謝を語っている。

「僕の中で戦っているのは3号車と17号車だと思っていましたし、後ろに来ているのは聞いていましたが、1mmでも前に出さなければ僕らがチャンピオンだと思っていたので、とにかく強い気持ちをもって戦っていました。

最終的にチェッカーを受けて、また勝手に涙が出て、自分が挫折した年が何年か前にあったんですけど、そこからここまで這い上がって来るまでに、支えていただいたいろいろな方たちの顔が浮かんで、本当に感謝感謝です。そして、僕を使っていただいている日産、ニスモにも感謝しています。

今はまだ正直チャンピオンを獲得した実感はないんですけど、とにかく今は難しい状況の中でもSUPER GT、そしてTEAM IMPULを応援していただいているファンのみなさんにも本当に感謝しています」
  • 歓喜のチェッカーを受ける12号車 カルソニック IMPUL Z (c)GTA

    歓喜のチェッカーを受ける12号車 カルソニック IMPUL Z (c)GTA

あの星野一義監督の口から「頑張り屋としたら多分日本でナンバー1だと思います」と言わしめる平峰一貴。現在30歳とこれからドライバーとしての脂が乗ってくる時期だ。

日産陣営のみならず日本のレース界をけん引していく存在として、これからも活躍を楽しみにしたい。

そして、チャンピオンを獲得したことで(していなかったとしてもだろうが)、星野一義監督の情熱はますます燃えているようだ。

「まだまだ僕はレース馬鹿を通したいし、レース=星野ってことでもっともっとやっていきたいです。次はマッチ(KONDO RACINGの近藤真彦監督)がレース界を引っ張っていってくれると思いますが、まだまだ渡さないぞという気持ちで頑張っていきます」

ベストなドライバーコンビと劇的に向上したチーム力、そして星野一義監督の情熱と3拍子揃ったTEAM IMPUL。来年もSUPER GTを大いに盛り上げてくれそうだ。

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:GTA、GAZOO編集部)

 


SUPER GT GT500ドライバータイトル

PoNoDriverTotalBehindRd1Rd2Rd3Rd4Rd5Rd6Rd7Rd8
112平峰 一貴
ベルトラン・バゲット
70.5-45.515206515
23千代 勝正
高星 明誠
66-4.562082048
3100山本 尚貴
牧野 任祐
62-8.51532331521
417塚越 広大
松下 信治
60-10.52115115206
514大嶋 和也
山下 健太
49-21.521234811
637サッシャ・フェネストラズ
宮田 莉朋
43-27.511203225
723松田 次生
ロニー・クインタレッリ
37-33.5114715
839関口 雄飛
中山 雄一
33-37.53851151
924佐々木 大樹
平手 晃平
30.5-401.5511112
1036坪井 翔
ジュリアーノ・アレジ
29.5-4157.5182132
1119国本 雄資
阪口 晴南
28.5-423.5734164
128野尻 智紀
福住 仁嶺
24-46.5110463
1338立川 祐路
石浦 宏明
17-53.5881
1416笹原 右京
大湯 都史樹
16.5-540.5511
1564伊沢 拓也
大津 弘樹
4-624