ほぼすべての日本車メーカーがWRCに参戦していた!70年代以前の歴史から、ライバルまでを紹介 ~ 「国内メーカー編 その1」
現在、メーカー直系のチームとしてWRCに参戦する日本車はトヨタのみですが、歴史を見わたしてみるとほとんどすべての日本車メーカーが何らかのかたちでWRCに参戦してきた過去があります。ここでは、それぞれのヒストリーを振り返ってみましょう。また、日本車のライバルとして立ちはだかった海外メーカーもご紹介していきます。
第1弾、「国内メーカー編 その1」をご覧ください。
トヨタ
日本車メーカー唯一のマニュファクチャラーズチャンピオン4回、紆余曲折の歴史をたどり現在に至るトヨタ
トヨタのラリー活動がスタートしたのは、1957年のオーストラリア1周ラリーからです。1万7000kmを走破する壮大なラリーに参戦したのはクラウン。完走52台中47位という戦績を残しますが、翌年はエントリーした3台がすべてリタイアとなってしまいます。その後にトヨタ車が国際ラリーの場に登場するのは68年のラリーモンテカルロ。南アフリカのドライバーから要請を受けてスタートしたモンテカルロ挑戦は、69年を経て70年には日本のトヨタ本体が参戦します。欧州でのマーケティングにラリーが有用だとして72年にはオベ・アンダーソンと契約を結び、翌年からスタートするWRCへと乗り込んでいくこととなります。
WRCが始まった73年、アメリカのプレス・オン・リガードレスでトヨタはWRC初勝利を収めますが、この年末にオイルショックが勃発、トヨタWRC活動も苦境に立たされることになってしまいます。しかし、当時のトヨタ首脳陣は支援継続を決断、ここにトヨタ・チーム・ヨーロッパが(TTE)誕生することとなります。
その後、トヨタはセリカをメインのラリーカーとして着々と歩みを進め、グループB時代にはセリカ・ツインカムターボでサファリラリー3連勝を達成(84年〜86年)。グループA時代ではセリカGT-FOURで勝利を積み上げ、93年には日本車初のWRCマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得し、翌年も連覇を達成します。また、ドライバーズ選手権では90年と92年〜94年の4回を獲得するなど、まさに黄金時代を築いてみせました。車両規程違反により一時活動を休止していましたが、98年にはカローラWRCで復帰、99年には3度目のマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得して、再びWRC活動を休止します。
そして2017年、TOYOTA GAZOO RacingとしてWRCに復活したトヨタは、ヤリスWRCで復帰初年度に2勝、さらに2018年には5勝を挙げて通算50勝とし、4度目のマニュファクチャラーズチャンピオンに輝いてみせました。
日産
サファリの雄として名を馳せた“ラリーの日産”、時代の流れとともにサーキットレースにシフト
日産自動車の国際ラリー活動は、1958年のオーストラリア1周ラリーに出場したことから始まります。当時は技術的に未成熟だった自動車にとって、ラリーはテストコース以上の試験場でした。日産はそれ以降もサファリを中心に参戦を続け、69年には4輪独立懸架サスペンションと軽量なパッケージを持つブルーバード(510)がデビュー戦で3位を獲得、翌70年には悲願のサファリ初優勝を1-2フィニッシュで達成します。
71年からはフェアレディZ(240Z)に車両をスイッチし、WRC初年度の73年サファリでは日本車としてWRC初優勝を飾っています。その後はバイオレットでヨーロッパのラリーにも精力的に参戦。サファリでは79年~82年のサファリ4連勝などの金字塔を打ち立てたほか、79年〜81年はマニュファクチャラーズ選手権2位を3年連続で達成するなど、バイオレットは目覚ましい活躍をみせました。
グループB時代にはFRの240RSで挑んだものの、4WD車両には敵わず。グループAの200SXを経て本命の4WD車両、パルサーGTI-R(海外名サニー)をデビューさせますが、思うようなスピードを発揮することができずに92年いっぱいでWRCから撤退することに。一方でこの92年、グループNカテゴリーに出走したパルサーGTI-Rはチャンピオンを獲得しています。
ワークス撤退後には、ニッサン・モータースポーツ・ヨーロッパ(NME)がカスタマー向けにリリースしたサニーGTIでプライベーターが出走、のちのマイクラ、アルメーラといったキットカーにつながる道筋をつくりました。
三菱
圧巻の4年連続ドライバーズチャンピオン、長い歴史に裏打ちされた三菱の技術は市販車に活かされた
三菱自動車の海外ラリー挑戦は、1967年のオーストラリア、サザンクロスラリーで幕を開けます。もともとオーストラリアにコルトを輸出する計画があり、現地テストを行ったドライバーからの提案でラリープロジェクトがスタートしました。三菱は73年までサザンクロスラリーに参戦を続け、2度の総合優勝を達成。73年のサザンクロスでは1〜4位を独占する強さを見せ、ランサーGSRは翌74年のWRCサファリラリーに初出場し、デビューウィンを飾ります。70年代はアフリカなどを舞台とした耐久性の問われるラリーを中心に参戦していましたが、80年代に入るとオーストリアに本拠地を置き、ランサー2000ターボでヨーロッパのWRCに参戦をスタートします。チームはやがてラリーアート・ヨーロッパとして英国にファクトリーを構え、スタリオン4WD、ギャランVR-4、一連のランサーエボリューションシリーズで参戦を続けていきます。開発を担ったのは日本の愛知県岡崎市にある三菱自動車岡崎製作所。名機と呼ばれる4G63エンジンや革新的な4WDシステムで一時代を築きました。
三菱はWRCから撤退するまでの間に通算34勝を挙げ、98年にマニュファクチャラーズタイトルを獲得、96年から99年まで4年連続でドライバーズチャンピオンを獲得しています。この立役者となったのが、現在TOYOTA GAZOO RacingのWRCチームを率いるトミ・マキネンです。
2004年にはMMSPが運営を引き継いでランサーWRCを製作しますが、経営不振などにより05年で活動を休止し、現在に至ります。
ダイハツ
難関サファリを駆け抜けたダイハツのスモールカー、大排気量車に挑む“ジャイアント・キラー”
コンパクトカーの代名詞とも言えるダイハツも、かつてはWRCに参戦していました。ダイハツがWRCに最初の足跡を刻んだのは79年、ラリーモンテカルロでのこと。排気量993ccのシャレードは、いわゆるワークスチームではなく、各国ディーラーの要請を受けてダイハツラリーサービス(DRS。東京ダイハツ自販が設けたスポーツコーナーが母体)がサポートするスタイルをとっていました。この79年モンテカルロはスイスのディーラーからの要請、同年マレーシアにはシンガポールのディーラーの要請で参戦します。
そして、後年名を馳せることになるサファリラリーには82年から参戦。これも、最初は現地ディーラーであるライス・モータースからの要請であり、これ以降12年間サファリに参戦を続け、83年、89年を除き10回の完走を果たしています。グループB時代には車両規定に合わせて排気量を926ccに落とした公認モデル“926ターボ”を送り出し、その後のグループA時代は当時の上位クラスに割って入るような活躍を見せ、“ジャイアント・キラー”と呼ばれ人気を博しました。
最も象徴的な結果は、93年のサファリ。トヨタ・セリカGT-FOURがトップ4を占める快勝を見せたこのラリーで、シャレードが5〜7位を占めたのです。この93年でダイハツとしてのラリー活動はいったんの終わりを迎え、後年はプライベーターたちの手によってWRCラリージャパンなどでその勇姿を見せてきました。
いすゞ
ジェミニやアスカで国内ラリーを席捲したいすゞ、英国RACラリーではクラス優勝も達成
現在は乗用車生産から撤退しているいすゞも、以前はモータースポーツに力を注いでいたメーカーのひとつです。70年代、ゼネラルモータースグループに加わり、オペル・カデットの日本生産をスタート。これがのちのジェミニ誕生につながることとなります。ジェミニは国内ラリーで活躍し、80年代に入るとアスカが登場。国内ラリーで戦っていたチームいすゞやいすゞスポーツカークラブ(ISCC)が83年のRAC(現ラリーGB)に参戦を始め、アスカ2000ターボでクラス優勝を果たしています。RACを中心にWRC参戦を続けていましたが、RACへは91年の参戦を最後にストップ。92年にはいすゞがSUV以外の自社開発中止を発表したため、92年末をもって国内ラリーへの参戦も終焉を迎えました。ちなみにこの年の全日本ラリー選手権Bクラスのチャンピオンは、新井敏弘選手がジェミニで獲得しています。
[ガズー編集部]
WRC 2019シーズン 開幕直前企画
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