カーボンニュートラルに向け、仲間づくり、そして「つくる、運ぶ、使う」ことを実践
スーパー耐久第4戦大分オートポリスで水素エンジンカローラに使用される水素は、福島県浪江町のFH2Rに加え大林組とトヨタ自動車九州のグリーン水素を使用した。大林組は、大分県九重町で日本初の地熱発電電力を活用したグリーン水素の実証実験を行っており、その水素、トヨタ自動車九州は、太陽光発電により製造した水素を供給した。
レース前、大分オートポリスの現場で大林組の蓮輪賢治社長、トヨタ自動車九州の永田理社長、トヨタ自動車の豊田章男社長が会見を行った。また関係者席に着座していた川崎重工業 の橋本康彦社長も質疑応答で参加をした。
―豊田社長
カーボンニュートラルに向けては「つくる、運ぶ、使う」が大事であり、全産業で取り組むことが大事。多くの情熱をもったエンジニア、それを支える現場があり、大林組、トヨタ自動車九州の社長は、現場を支えるトップとして、水素社会に向けた活動を大きく支えてくれている。
前回の富士24時間耐久は水素を「使う」という自動車側の選択肢を広げる行動であったとすると、今回のオートポリスでの取り組みは水素を「つくる」、再生可能エネルギー技術の選択肢を拡げる行動になる。なお、次回の鈴鹿サーキットは、「運ぶ」技術の選択肢を拡げる活動になる予定であり、川崎重工業さんと連携する。
今後、水素社会を実現するためには、「仲間を増やす」ことが一番必要であり、仲間は自動車会社、自動車業界だけではない。また、今は水素を使うことがとても大事だ。
―大林組の蓮輪社長
大林組は、再生可能エネルギーによる発電がキーワードだ。その一つとして地熱発電を行っている。
発電した電気をどうやってお客様に運ぶのかが課題。普通は系統連系(電力会社の電力系統に発電設備を接続すること)して、電力を配るが、系統連携の脆弱さを考えると、キャリアとしては難しい。水素にして配ることは、キャリアとして将来のサスティナブルな社会に貢献ができることと考えている。地熱発電の開発とともに、キャリアとしての水素に着目している。
今までは「使う」場所が無かったが、トヨタ自動車九州さんから声をかけてもらい、水素ステーション、そして水素エンジンとして利用してもらえるようになった。これからはコストのことも考え開発を進めていく予定。
―トヨタ自動車九州の永田社長
トヨタ自動車九州は、クルマ(レクサス)、エンジンなどをつくっている。そして今、ものづくりの世界は炭素を減らすことに直面している。
再生エネルギーは不安定であるため、再生エネルギーを水素にすることにより、安定的に電力を工場に供給していくことが可能であり、物流、ものづくりに役立つと考えている。コストは産学官連携して進めていきたい。
―川崎重工の橋本社長
川崎重工は、水素をオーストラリアでつくり、川崎重工業の水素運搬船で運んでいます。次回鈴鹿サーキットでは、その水素を水素エンジンカローラに利用していただける。また、川崎重工業は、水素をつかう側としても、バイクのエンジン、航空機のエンジン、ガスタービンなど水素の可能性を検討している。
何故、地熱発電なのか?
太陽光発電は、一日の半分しか発電できないことがデメリット。一方、地熱発電は温泉業界との関係、山奥から送電線をつくるコストがデメリットであるが、エネルギーを水素に変えれば運ぶことができ、デメリットを解消できる。
また、地熱資源量は環太平洋に埋蔵量が多く、日本はアメリカ、インドネシアに次ぐ三位である。しかも、一位アメリカの80%ぐらい埋蔵量があるので、国土面積を考えると地熱資源大国と言ってもよいだろう。しかし、地熱資源利用(地熱発電設備容量)は、世界で10位、米国の1/7である。つまり、日本で多くとれるエネルギーのため、選択肢の一つとして地熱発電がある。
カーボンニュートラル達成に向けて今大事なこと
豊田社長はカーボンニュートラル政策への希望を3点述べた
- カーボンニュートラル達成に向けて仲間を増やさなければいけない
- カーボンニュートラルを正しく理解しなければいけない
本当の敵は炭素であり内燃機関ではない。まだ正解は見つかっていないし、どこに正解があるかもわからない。
だから、多くの選択肢を与え、そこへのサポートをお願いしたい - カーボンニュートラル達成への道のりを間違えないで欲しい
前回の富士24時間耐久の時、水素は燃焼しても炭素をださないクリーンエネルギーであり、水素エンジンのクルマが走ること、しかも24時間のレースに参戦したのでクルマそのもの、そして完走できるのかということにスポットがあたった。しかし、今回の会見会場にいると、水素を「つくる、はこぶ」にも注目すべきであったところに気づかされた。
カーボンニュートラルに向けて、日本の情熱あるエンジニア達は「つくる、はこぶる」について改善を繰り返し、レース現場で走る情熱あるトップは、自ら「つかう」を実践し、多くの仲間づくりをしていている。
(文・写真:GAZOO編集部 岡本 写真:折原弘之、大林組、トヨタ自動車九州)
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