新型ヴェルファイアが丸裸! VIPご用達の“大空間高級サルーン”に向けた「制振」と「静音」への挑戦

  • 新型ヴェルファイア

    新型ヴェルファイア

トヨタ自動車は6月21日、新型のアルファードヴェルファイアの発表会を開催し、オンラインでもその模様を一般公開した。

そこで発表会の冒頭、サイモン・ハンフリース執行役員が登場し語ったことは、長い間アルファードとヴェルファイアは国内のみで販売され、“ガラケー”化するのではないかという懸念に対して。

「驚いたことに国内だけでなく、海外の多くのみなさんが、このクルマをひとつ上のステージへと導いてくれたのです。海外からも、根強い人気を獲得。“ガラパゴス”なのではなく、世界のどこにもない魅力が詰まっていたのです。新しくなったアルファードとヴェルファイアは、2倍近くの国で販売されることになります」と、国外でも受け入れられ、さらに多くの国で販売されるというのだ。

新型のアルファード、ヴェルファイアは先代のモデルの「トヨタの最高級ミニバン」を引き継ぎながら、「運転する方も、後席にお乗りになる方も、このクルマをお使いになるすべてのお客様が相手を思いやり感謝し合える空間をこのクルマを通じて実現すること。これを『快適な移動の幸せ』と定義し、従来から受け継がれるその価値を一層追求し、開発を進めました」とし、“世界基準の大空間高級サルーン”として大きく性能を引き上げてきている。

そこには、実際にメルセデス・ベンツのSクラスをはじめとした、世界のVIPが乗るフラッグシップセダンを研究し尽くし、新型アルファード、ヴェルファイアが、国内外の高級セダンに負けない、強烈な個性とあらゆるVIPが満足する快適さを手に入れた自信を感じさせるものとなった。

その快適さのために、徹底的に取り組んだ中に
「制振」
「静音」
という2つのキーワードがある。

今回の発表会では、その「制振」に対する技術的チャレンジが分かりやすいように、ヴェルファイアのホワイトボディが置かれていた。
そのホワイトボディで示されていた各ボディパーツの解説をもとに、新型アルファードとヴェルファイアの新たな魅力をお届けしていこう。

「制振」を追求し1/3まで低減

  • 新型ヴェルファイアのホワイトボディと吉岡憲一チーフエンジニア

    先代のアルファード、ヴェルファイアに続き開発責任者を務めた吉岡憲一氏が自ら解説

制振にとって重要となる車体剛性については、TNGAプラットフォームをミニバン用に最適化し、ロッカー(ボディの両サイドを構成するフレーム)をストレート構造にしている。加えてベースフレームの開発担当者が、「このブレースだけは何とか死守するよう、各パーツ開発担当者に交渉した」という車体後方底部のV字型ブレースによって、車両剛性を従来比約50%アップしているという。
  • 新型アルファード、ヴェルファイアのロッカーアーム

    ストレート構造を採用したロッカー

  • 新型アルファード、ヴェルファイアの「床下Vブレース」

    車台開発担当の肝いり「床下Vブレース」

また、Bピラー、Cピラーは環状構造にし、「高減衰性接着剤」「高剛性接着剤」2種類の構造用接着剤を使用、「フロントサスペンションメンバーストレートクロス」やヴェルファイア専用の「フロントパフォーマンスブレース」を採用することによって、剛性の強化とともにヴェルファイアはアルファードに比べハンドル操作に対するリニアな操作感も追求している。
  • 新型ヴェルファイアの「フロントパフォーマンスブレース」

    ヴェルファイア専用の「フロントパフォーマンスブレース」

足回りはフロントがTNGA用のマクファーソンストラット式に刷新、リヤは従来型を新たに開発したダブルウィッシュボーン式を採用している。そして新規開発した、地面から伝わる振動の周波数に応じて減衰力を機械的に可変させる周波数感応型ショックアブソーバーを採用、地面からの微細な振動を吸収している。

さらに乗員にとって直接的に制振に寄与するシートレールとシートクッションフレームの間に振動(10-15Hzの低周波)を抑制する防振ゴムを設定。
さらに、シートパッドに低反発ウレタンパッドを、シートクッション部には座圧分散性の高いウレタンを採用することで、振動の感じやすい指先や背中に伝わる微振動(20Hz以上)の吸収や上半身の揺れを低減しているという。

こうしたさまざまな開発の成果として、社内測定で従来比の1/3まで振動を抑え、後席の振動レベルは高級セダンにも劣らないものとなり、「2列目の振動レベルについては開発目標を100%達成できている」と開発担当者も自信を持って語ってくれた。
  • 新型アルファード、ヴェルファイアの制振に関する解説資料

    制振に関する解説資料

心地よい「静音」の追求

そして、社外のVIP向けのセダンを研究する中で対策が必要であると痛感させられたという、車内に届く騒音についても妥協なき開発が行われている。

ロードノイズ対策として徹底したボディシールで音の侵入を防ぐとともに静粛性と乗り心地を両立する新開発の専用タイヤを採用している。
また風切音が発生しやすいドアミラーは、ガラスとの隙間を拡大し空気の乱れを抑制、またフロントピラーも空気が流れやすいような形状にしている。

ただ、徹底的に静音をすればいいというわけではないという。人は防音室のような無音の環境は逆に不快になるという心理に対し、「リラックスできる“心地よい静けさ”を追求」している。
低い周波数ではロードノイズを、高い周波数では風切音をと、不快感を感じる周波数の突出した音の低減にこだわっているという。
  • 新型アルファード、ヴェルファイアの静音に関する解説資料

    静音に関する解説資料

高級サルーンとしてのVIP需要に応える新たな使命

プリウスやクラウンなど、最近のトヨタの新型車は大きな驚きを与える変更が多かっただけに、この新型アルファード、ヴェルファイアのエクステリアは大きな変更が見られず、あまり新型感を感じない方も多いかもしれない。

ただ、ここまで紹介したように、これまでの「ミニバンの最上級」という考え方から大きく飛躍し、VIPが愛用する高級セダンに負けない「上質で快適な“おもてなし”を提供する高級サルーン」へと生まれ変わり、乗る人すべてに「快適な移動の幸せ」を提供できるクルマに昇華させるために、多くのリソースを投入しているのだ。

確かに販売価格は大きく上がっており、一般的な需要からはかけ離れてしまったという感覚を覚える方も多いかもしれない。
しかしこれまでの2倍の地域で販売されるというこの新型アルファード、ヴェルファイアが世界のVIPに愛されることで、ひいては日本の自動車メーカーの世界におけるステータスが向上することは間違いないだろう。

それこそが、新型アルファード、ヴェルファイアに与えられた新たなるミッションなのではないかと、ワクワクする期待感を感じるのだ。
  • 新型アルファード、ヴェルファイアの発表会の様子

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:トヨタ自動車、GAZOO編集部)