GR Garageが沖縄の新たなカーカルチャーの牽引役へ。熱烈なクルマ好きスタッフが語る夢
「町いちばんの楽しいクルマ屋さん」というコンセプトでトヨタ車オーナーを中心にカスタムの魅力や走る楽しさを提供するGR Garage。2024年3月9日、その全国69店舗目として、沖縄県浦添市に「GR Garage沖縄」がオープンした。
沖縄県では、那覇市や浦添市には「ゆいレール」というモノレールが走っているものの、それ以外の地域ではバスやタクシーが主な公共交通手段となる。そのため、多くの人は18歳になれば自ずと運転免許を取得し、クルマは一家に一台ではなく「一人に一台」というのが当たり前という「クルマ社会」だという話を、現地の方からも聞くことが多い。
実際に、那覇市や沖縄市などの市街地を走行しているクルマを見ると、コンパクトカーや軽自動車が多く、ミニバンやSUVなどが少ないことからも、一人一台というクルマ社会であることを感じ取ることができる。
そうした移動の手段としてクルマの所有が当たり前である沖縄にオープンしたGR Garageはどのようなことを目指しているのか、沖縄のスポーツカーやクルマ好き事情などと合わせて取材させていただくことにした。
沖縄県沖縄トヨタ自動車(株)は、2021年にトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店の4販社が統合したトヨタディーラーだ。県内に一社のトヨタ販売店というのは全国でも珍しいが、この統合したこともどうやらGR Garageができたことに影響しているようだ。
カスタムの知識とお客様とのコミュニケーションを重視
GR Garage沖縄は、浦添市にあるトヨタウン港川店ショールーム内に併設された店舗だ。沖縄を南北に縦貫する幹線道路である国道58号線沿いにあり、道路沿いに看板があるためとてもわかりやすい。また軒先にはGRスープラやGR86などのスポーツカーが置かれていることで、興味を惹かれふらっと立ち寄るお客様も多いという。
スタッフは店長と営業担当1名、メカニックが2名という4名のGRコンサルタントの体制で、メカニックの2名は社内公募から選ばれたという。まずは、そうしたスタッフの選定やオープンに向けた話を運天大介店長に伺った。
「私と営業の比嘉は、これまでもクルマをイジり倒してきていることが社内でも知られているので、今回抜擢されたのかなと思っています。メカニックについては、全社にて公募をした際に3分の1の社員から興味があるという回答をいただきました。その中からカスタムについて明確に答えることができ、お客様としっかりとコミュニケーションの取れるスタッフを選任しています」
ちなみに運天店長は、最初は実家にあった父親の130系のクラウンに乗り、その後現在までR32型日産スカイラインのタイプMを所有している。カスタムや走りでクルマ漬けの日々を過ごし、さらに箱替えしてまでスカイラインを乗り続けているかなりのクルマ好きだ。
沖縄で“脈々と続く”スポーツカー文化の再燃
そんな運天店長に、まずはこれまで見てきた沖縄のクルマ文化について伺った。
「よく沖縄はチャンプルー(ミックス)文化だと言われますが、戦後アメリカ統治時代があり、また日本に復帰してという環境の中で、その時代の環境からいいものを拾い上げながら歩んできたのが沖縄県民なんじゃないかと思います。そうした背景もあり、アメ車なども本土よりずっと間近に見る機会もあったので、クルマ文化としてもある意味先に進んでいたんじゃないかなと思います。
たとえば車で行くドライブインとして「A&W」(ファーストフードの店)とか、カーシネマ(現在は存在せず)などは沖縄が早かったんじゃないかと思います。クルマは移動手段として無くてはならないものなので、各家々で大切にされてきたと思います。
以前は改造車=車検が通らないとか、暴走族という見られ方をした時代もありましたが、僕はちょうど車検の規制が緩和されてから免許を取得した世代です。そんな当時は『免許を取ったら男は黙ってスポーツカー』が当たり前でしたね。シルビアやスカイラインなど日産がとても元気があり、シビックやインテグラなどスポーツカーがあふれていて、県内の中古車屋でも普通に買えたし、先輩からお古を安く譲ってもらい、スポーツカーに乗るみたいな世代でした。
当時は、カッコいいスポーツカーに乗って隣にカワイイ女の子が乗せられれば人生すべてオッケーみたいに思っていましたね(笑)。
周りもそうでしたけど、お金がないので自分でカスタムするのが当たり前で、オーディオやカーフィルム、パーツの取り付けなどは、先輩や友人に教えてもらっていました。僕の場合はチューニングショップに出入りして、アルバイトしながら勉強していた時期もありました」
もっとたくさんの若かりし頃の思い出や沖縄のクルマ好き事情を伺ったが、ここではこのくらいにしてぜひ沖縄に行った際は、直々に運天店長にお話を伺って欲しい。
しかし、運天店長が26歳でカローラ店に入社する頃には、「燃費や環境性能が重視され、スポーツカーの生産自体もメーカーで縮小されていった頃でした」というようにスポーツカーの人気も下がり始めていたという。「音がデカイし、乗り心地悪いし、ガソリン食う」といったイメージで、スポーツカーが女の子受けすることも少なくなってきていたのだとか。
とはいうものの、2012年にトヨタから86が発売開始されたことなどで、運天店長が語るように「脈々と続いてきた」スポーツカー人気は再び盛り上がりはじめた。特に若い世代には昭和歌謡がリバイバルされるような感覚でスポーツカーを選ぶ人も増えているという。また女性でもスポーツカーを「カッコいいから」と購入する人も増えてきているそうだ。
そうした若い人に話を聞くと、頭文字Dなど平成のバイブル的な漫画などでクルマに憧れるのではなく、YouTubeなど動画コンテンツで自分好みのクルマやスタイルを見つけて楽しんでいる人が多いそうだ。
GR Garage 沖縄の想い「安心と自信を持って好きなクルマに乗ってほしい」
この辺でGR Garageの話に戻すと、実は以前トヨペット店ではGR Garageの前身とも言えるAREA86を開設していたことがあり、その流れでGR Garageの開業を検討していたという。その際は実現しなかったものの、4販社の統合を経てトヨタディーラー同士での競合がなくなったことも今回のGR Garageがオープンした理由の一つだろう。
ただ、以前から構想は聞いていたものの、いざ実際に運天店長に「GR Garageをつくるぞ」という話が来たのは2023年の10月、つまりオープンの5か月前だという。
そこから準備室は立ち上がったものの、当初は運天店長一人体制で何もないところからのスタート。そこから他県のGR Garageへの視察や準備を進め、本格的に工事が始まったのが2024年の1月からというから、運天店長にとっては急転直下、目の回るような5か月だったに違いない。
しかも、店舗をシェアする販売店は営業しながら開店準備が進められたというから、その苦労たるや……。
そうして立ち上がったGR Garageはどのような思いを持ち、どのような方に愛されたいと考えているのだろうか。
「まずは弊社の野原(野原朝昌 沖縄トヨタ自動車 代表取締役社長)がGR Garageの理念に共感したことから始まりました。通常の販売店では3年や5年単位でクルマの乗り替えをお勧めしたりしますが、スポーツカーや旧車乗りの方はそのクルマを大事に長くお乗りになるじゃないですか。そうしたクルマをディーラーで受け入れて、しっかり維持していける環境を作っていくことがまず必要だと思いました。
クルマを改造することは世間から見てグレーに思われがちですが、例えば公務員の方などちょっと手堅いお仕事をされている方でも、ちゃんと車検に通るようすべてトヨタディーラーで面倒を見てもらっているという、安心感をGR Garageで提供できれば、お客様は自信をもって好きなクルマに乗っていただけるのではないかと思います。
またカスタムの知識や経験を持っているスタッフを揃えているので、カスタムの相談はもちろんクルマの話をすることも楽しんでいただけたらなと思います」
お客様と一緒に愛車を育てていきたい(GRコンサルタント比嘉さん)
ここでGR Garage 沖縄のGRコンサルタントの方にもお話を伺ったのでお届けしていこう。
最初に乗った車は1983年式のスプリンタートレノ(AE86)という営業担当の比嘉雄紀さん。実はTE27のレビンやトレノが欲しくて、駐車場に停めているお家を訪ねては売ってくれませんかとお願いしていたという程の旧車好きだ。
沖縄の旧車乗りの方は複数台持ちの方が多いという。沖縄はそれほど季節による気温の違いは大きくないものの、夏の時期は暑さのためあまり乗ることが少なく、秋から冬の時期にかけて乗ることが多いと教えてくれた。
以前はご自身でもエンジンの乗せ換えをしたり、最近では社内のモータースポーツクラブに毎回参加するなどクルマ好きなエピソードをたくさん伺ったが、このGR Garageではまずはお客様といろいろお話しをしたいという。そしてさまざまな提案をしていく中でお客様と一緒にその愛車を育てていきたいと語ってくれた。
レースメカニックの経験をお客様にフィードバックしたい(GRコンサルタント真栄田さん)
今年25歳で愛車がGR86というメカニック担当の真栄田雄貴さん。社歴は丸5年ほどというが、親戚に整備士や板金をやっている方がいるとのことで、子供の頃からいろいろと英才教育を受けてきたそう。
まずはバイクからカスタムを経験、最初の愛車のアルテッツァでデフや吸排気系など一通りカスタムし、そのイロハを学んだという。もちろん走るのも大好きで、就職する前はよくジムカーナを走りその腕を磨いていたそうだ。
今回GRコンサルタントの公募に応募したのは、昨年同じ沖縄出身の翁長実希選手が参戦するGR86/BRZ Cupのメカニックとして帯同した経験が大きいという。実際にさまざまなレースでレースメカニックの凄さを体感したことにより、沖縄にはいないであろうレースメカニックとしての経験をもっと積みたいと考えたからだ。
そしてお客様に対しても、これまでのカスタムや走りを楽しんできた経験を生かし、組み合わせの良し悪しなどお客様に寄り添ったパーツ提案ができるGRコンサルタントを目指したいという。
残念ながらもうお一人のGRコンサルタントの玉城安喜さんは、取材当日は翌日に控えるGRフェスティバル沖縄のスタッフとして現地に行っていたためお話を伺うことはできなかった。だが実はもうお一方、強力な助っ人GRコンサルタントの方がいらしたのでお話を伺った。
GR Garageへの認識が深まっていることを実感(GRコンサルタント大城さん)
トヨタカローラ福岡(株)が運営するGR Garage福岡空港で店長を務める大城明人さん。すでに6年目を迎えているGR Garage福岡空港の開店当時からGRコンサルタントを続けている。大城さんは沖縄出身であることと、沖縄トヨタ自動車の野原社長とトヨタカローラ福岡の金子 護社長が懇意ということもあり、どうやら金子社長の鶴の一声で3か月間の助っ人として沖縄に来ていたそうだ。
今回オープンの2日間で600人が来訪したというが、「沖縄はクルマ好きも多いし、アメリカ人のクルマ好きがいる軍の基地もあるんだから、早く沖縄にGR Garageを建てたらと僕も言っていたんです」という大城さんは、来場者の様子や実際にお話する中でGR Garageへの認識が高まっているのを感じたという。
また今回の助っ人はGR Garageのオープンだけではなかったという。GR Garage福岡空港ではラリーへの参戦も積極的に行っており、3月17日に開催されたラリーチャレンジでのラリー運営のレクチャーという役割も担っていた。
現在69店舗を数えるGR Garageが、店舗数を増やしていくのみならず、こうしたさまざまな活動を通じた横のつながりがあることは、利用者にとってはうれしいことだろう。
お客様がGR Garage 沖縄に期待すること
そして、実際に沖縄トヨタの顧客の方で、運天店長とも電話をし合う仲だという仲里さんにも、GR Garage沖縄に向けた期待を語っていただいた。
最初に乗った車は5万円で購入したRX-7(FD3S)だという仲里さん。叔母さんが50代の頃にS13シルビアとZ32フェアレディZに乗っていて、それをカッコいいと思ったことがクルマ好きの原体験だというが、お父さんも若いころはシビックや、お祖母さんもKP61型のスターレットに乗るなど、親族でスポーツカー好きが多かったという。
ただし、友達の家族などはそこまでクルマ好きの環境ではなかったそうで、仲里さんがクルマ好きに引き込んだ友達もいるとのこと。
実は「トヨタ車には一切興味がなかったですね」という仲里さんだが、現在の愛車はGRヤリス。WRC好きの友人がGRヤリスを試乗したいということで付いて行き、ご自身でも乗った際に、初めて面白いトヨタ車があると感じたという。
これまで多くのクルマに乗りカスタムしてきたお話も伺い、かなり豊富な知識を持つ仲里さんだが、今乗るGRヤリスはまだノーマル状態をキープ。その走行性能の高さを見極めてから必要なカスタムを施していきたいというから、GRヤリスにポテンシャルを感じていることが伝わってきた。
またGR Garageについても「早くつくれよ! と思ってました」というように、販売店がカスタムできるようになることに対する期待は高いようだ。
運天店長によると、仲里さんと最初に話したときにGR Garageに期待することは? と聞くと「サーキットを作ってください」というかなり大きなことを言っていたそうだが、もう少しできる範囲のことで言えば、GRヤリスの仲間づくりを仕掛けていってほしいという。
86やBRZについてはオーナーズクラブが組織されているが、GRヤリスは価格帯も一段上なこともありまだ乗っている人も少ないという。
ただその走行性能の高さゆえに、旧車との2台持ちオーナーの普段使いのクルマとしての需要など、盛り上げていくことでオーナーも増えていくのではないかと予想しているそうだ。
それはGRヤリス、またトヨタ車に限らず、その車種を盛り上げオーナー同士がつながることは、クルマ好きを増やすことにつながるのだろうと感じられるお話をいただくことができた。
GR Garage 沖縄は沖縄のモータースポーツ文化の起爆剤へ
運天店長も実は本格的なサーキットができてほしいと考えている。沖縄市で開催されていたコザモータースポーツフェスティバルなどを通じて、モータースポーツのイベントは集客力があるという理解が広がり、そうしたイベントを開催したいという県内自治体も増えているという。
またサーキットのみならず、沖縄トヨタとしては過去に米軍基地の中を走るというような提案も行ったことがあるという。その時は実現しなかったというが、そうした沖縄の観光資源などを合わせた企画や、さらには沖縄でクルマを走らせることを目的とした国内外からの観光需要の受け入れを実現したいと考えている。
これは沖縄市がモータースポーツのイベントを手掛けるのと多くの共通した想いがある。
そのためにも、沖縄県内でのモータースポーツへの理解や盛り上がりが必要であり、そのための起爆剤としてGR Garage 沖縄は大きな期待を背負っていると言ってもいいだろう。
まだ立ち上がったばかりのGR Garage 沖縄ではあるが、「その土地のカーカルチャーを牽引する存在」という、新たなGR Garage像を作り上げる可能性もある。
最後は少し夢のような話になってはしまったが、運天店長をはじめとするスタッフはとても気さくでクルマが大好きという雰囲気が伝わってくる。機会があればぜひとも一度訪れて、沖縄のクルマ文化についての話で艶やかな花を咲かせてみてはいかがだろうか。
(文:GAZOO編集部 山崎 写真:GAZOO編集部)
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