沖縄で初開催のラリーチャレンジは大盛り上がり!観客目線レポート&参加者インタビューをお届け

  • TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ 第1戦 沖縄のスタートの様子

    TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ 第1戦 沖縄のスタートの様子

沖縄県と聞けばもちろん白い砂浜に青い海、まさにリゾートという印象が一番に思い浮ぶだろうが、クルマ好きの方には「クルマ社会」であると感じている方も多いのではないだろうか。

確かに、那覇市や浦添市には「ゆいレール」というモノレールが走っているものの、それ以外の地域は交通の便がいいとは言えず、18歳になれば誰しもが免許を取得するのが当たり前、と現地の方から聞くことが多い。
そんな環境にありながらも、沖縄には大規模なサーキットがないことで全日本クラスのモータースポーツが開催されておらず、モータースポーツに対してハードルを感じる方も少なくないという。

しかし、「沖縄の人はやっぱりクルマやモータースポーツが好きなんだ!」と思わせてくれるイベントが3月16日(土)、17日(日)に行われた。
16日(土)は豊見城市にある美らSUNビーチで行われたGRフェスティバル沖縄、そして17日(日)は沖縄市とうるま市で開催されたTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ(以下ラリチャレ)だ。
GRフェスティバル沖縄については下記のレポートをご覧いただくとして、この記事では多くの観客で盛り上がったラリチャレの様子を、観戦者目線でお届けしていこう。

家族連れが多く来場したコザ運動公園のサービスパーク

  • TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ 第1戦 沖縄の参加者の集合写真

    TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ 第1戦 沖縄の参加者の集合写真。レース前ながらどの選手にも笑顔があふれている

スタート地点であり車両の整備などが行われるサービスパークが置かれたのは、沖縄県沖縄市のコザ運動公園。そのサービスパークと一緒に、「TOYOTA GAZOO Racing PARK in ラリーチャレンジ沖縄(以下、TGRパーク)」や飲食ブースなどもあり、ラリーの観戦だけでなく、地元のお祭りに家族で遊びに来ているという雰囲気も感じられた。

TGRパークでは、沖縄トヨタ自動車がメカニックの体験やミニカーを使った遊びなどができるブースを出していたり、タイヤメーカーのブースや地元のPRブースなどが軒を連ねる。
さらに水素の利活用をPRするため、水素を燃料とするグリルで調理をしたり、水素で動くフォークリフトなども展示されていた。

ラリーがスタートする際には、スタートゲートの近くにたくさんの観客が集まり、手や旗を振って笑顔で送り出している様子は、初開催とは思えないような盛り上がりだった。

モータースポーツマルチフィールド沖縄でのSSは大盛り上がり!

今回の沖縄でのラリチャレは初開催ということもあり、公道を使うSS(競技区間)は設定されなかったが、3カ所あったSS会場のうち、モータースポーツマルチフィールド沖縄でのSSに取材に伺った。

当日は会場内の駐車場は使用できないため、近隣にある3カ所の施設の駐車場から観光バスでアクセスする方式が採られていたが、満車となってしまう駐車場も。さらにどの会場でもバスを待つ長い列ができていてかなりの待ち時間となっていた。想定を超える来場者の数に、事務局としてはうれしい誤算だったのかもしれない。

実際にモータースポーツマルチフィールド沖縄では、開業以来最高の来場者数だと言うように、コースの周りの観客席には二重三重の人だかりとなっていた。
スーパー耐久などで取材に伺うサーキットでは中年以上の男性の比率が多いが、このラリチャレでは若い方や女性も多く、こちらの会場でもお祭りのような感覚で楽しみながら、初めて見るラリーカーの走行に熱いまなざしと大きな拍手を送っていたことが印象的だった。

ラリー競技の魅力の一つであるリエゾン(SSから次のSSへ移動するための公道を走る区間)については、ラリチャレのルール上事前に公表できなかったということで、住民のみなさんにあまり告知できなかったことは、事務局の方も残念がっていた。

ただそれでも、参戦しているドライバーやコ・ドライバーに聞くと沿道で応援してくれていた人はいたとのことで、そうした沖縄ならではの景色の中で走ることと、リエゾンでのいつもの雰囲気と両方を楽しむことができたようだ。

そんな参戦したドライバーとコ・ドライバーの方にも、今回のラリチャレについての感想を伺ったのでお届けしていこう。

千明正信選手「沖縄らしさとラリーで2倍楽しめた」

  • #101 小倉学園 クスコORC YH GRヤリス 千明正信選手 林浩次選手

#101 小倉学園 クスコORC YH GRヤリス
ドライバー:千明正信選手(左)
コ・ドライバー:林浩次選手(右)
リザルト:E-4(Expert)クラス3位(9台出走)

2023年シーズンに、最高峰クラスでもあるE-4(トヨタ車 / 気筒容積1,501cc以上)クラスでチャンピオンを獲得したドライバーの千明正信選手にお話を伺った。

「南国らしいいつもと違う雰囲気の中でラリーを楽しめるのは気持ちがいいものでした。特にリエゾン区間は観光にきて走っている気分になれますし、その間でラリーのSSを走ってさらに楽しいという感じで、2倍楽しめました。

次回はぜひとも公道でやってほしいですね。沖縄はクルマの台数も多いため封鎖することも難しいかもしれませんが、マルチフィールドのような見やすいコースと林道などの公道コースが上手く混ざりあったラリーになるといいかなと思います。

リエゾンも要所要所では旗を持っていたり手を振ってくれたりもしていたので、思ったよりも地元での認知度が高いのかなと感じました。今回をきっかけに、毎年毎年盛り上がっていけばうれしいです」

今回は有明港からマシンをフェリーで運んで、チームは飛行機で移動したと教えてくれた千明選手。「旅行と割り切ればそれほど高くはないかも」とは言いつつも年間のレースの中で一番移動費がかかるとのことで、年間での参戦をする上では少し考えていく必要もあるようだ。

石川紗織選手「沖縄ならではの熱さを感じた」

  • #110 DL RAYS ZEAL 大仏86 石川紗織選手 西本尚恵選手

#110 DL RAYS ZEAL 大仏86
ドライバー:石川紗織選手
コ・ドライバー:西本尚恵選手
リザルト:E-2(Expert)クラス1位(1台出走)

ラリチャレに参戦して4年目という石川選手。2年目以降は年間5戦~6戦に参戦しているそうだ。

「来るのには勇気がいりましたけど、仲良しのコ・ドライバーの西本選手との旅行も兼ねてということで参戦することにしました。ラリーももちろん面白かったですけど、リエゾンだったりギャラリーステージでの観客のみなさんも他の場所より熱さがあるというか、初めて見た方もいっぱいいたんだろうなとは感じました。

ラリーという観点ではもう少し長く走りたいですが、そこも『まあ、いっか~』と思わせてくれるようなリゾート感とラリーがとても相性が良くて、みなさんもリフレッシュついでにラリーも楽しむなんていいんじゃないですかね。

逆にもっとボリューミーなラリーだと遊ぶ余裕がなくなってしまうかもしれません。初めてのコ・ドライバーでもこなせるぐらいというのも良かったかもしれないですね」

そんなコ・ドライバーを務めた西本選手は、愛車広場でも記事を執筆いただくライターでもある。初のコ・ドライバーはどうだったのだろうか。

「私のラリーに対してのイメージとは全然違って、ゲーム要素とドライビング要素が詰まった面白いモータースポーツなんだなと思いましたね。

SSもリエゾンも短い距離なのに、次を次をと考えてタイムコントロールしていたので、全然気が休まりませんでしたが、とても楽しかったです。プライベート参戦同士でも仲良くさせていただいたり、初参戦ということでみんなに暖かい目で見てもらえて助かりました。

すぐ近くでこんな私にも手を振ってくれたり声援をもらえたので、気恥ずかしかったですが、なかなか経験できることではないのでうれしかったですね。ドリフトの大会にも参戦しているんですが、ドリフトだとトップカテゴリーにならないとこんなに応援してもらえないかもしれません」

翁長実希選手「沖縄のみなさんに走る姿を見せられてうれしかった」

  • #108 RSS TGRヤリス 翁長実希選手 槻島もも選手

#108 RSS TGRヤリス
ドライバー:翁長実希選手(左)
コ・ドライバー:槻島もも選手(右)
リザルト:E-4(Expert)クラス5位(9台出走)

今回がラリー初参戦という沖縄出身の翁長実希選手にも、初めてのラリーや地元で走った感想を伺った。

「このラリチャレを通じて沖縄の道を走ってみると、路面の色が違ったり轍があったりとか、路面やコーナーの形状など沖縄の独特のものがあるということに気が付きました。
また沖縄のみなさんと公道を一緒に走ったりみんなが暖かいまなざしやエールを送ってくれて、ラリーを通して沖縄のみなさんと繋がれた感覚がとってもあって、本当に楽しい1日でした。

マルチフィールドもあんなに端から端まで人がいる光景を初めて見ましたし、みんなが私の走りを観てるんだと思うと高ぶってちょっと力が入っちゃいました。私からも観客のみなさんの表情が見えたり、声援も聞こえましたし、観客のみなさんもラリーカーの走りを五感で感じられたんじゃないかなと思います。

昨日のGRフェスティバル沖縄では、沖縄から本土でモータースポーツに挑戦させてもらい、その成長をお披露目する舞台であったり、感謝を伝えたいという気持ちで走っていました。
今日のラリチャレは実際にレースを走ることで『実希ちゃん頑張ってねー』と直接たくさんの声援ももらえましたし、観てほしかった沖縄のみなさんに観てもらえたのがうれしかったです」

翁長選手の走りを「100点以上の走り」というコ・ドライバーの槻島選手にも感想を伺った。
「観客のみなさんは、別のラリチャレとは違う暖かさを感じましたし、みんな翁長選手を応援しに来てるんだなということが伝わりました。ラリチャレとしても距離が短かったりジムカーナみたいなコースだったりしましたが、路面が白かったり普段とは違う景色を見ながら走れたラリーだったので、心穏やかに楽しめた気がします」

  • サービスパークに戻ってくるラリチャレ参加者

サービスパークに帰ってくると、どの選手たちにも暖かい拍手が送られるのがラリーの素晴らしいところ

こうして無事に初開催を終えた沖縄でのラリチャレだが、今回開催して得た観客からの手ごたえと地元への理解が進んだことは、来年の開催に向けて大きな原動力となることは間違いない。
競技面においては、SS区間の延長やコースのバラエティを増やすこと、そして公道の一部を使用することなどはぜひとも実現したいだろうし、もっと地域全体でラリーを盛り上げていくことなど、始まったばかりだがもっと盛り上がる可能性を秘めていることが感じられた。

今回、GRフェスティバル沖縄とラリチャレの取材を通じて、沖縄の方々がモータースポーツイベントを歓迎し求めていたということは十分感じられたわけだが、同時に「継続」することに対する期待と不安も見聞きすることとなった。
そのためには、地元の方々や企業の参画を期待したいし、沖縄の観光資源を活用した新たなコラボレーションが生まれれば、クルマ好きやモータースポーツファンのツーリズムも期待できるだろう。

まさに伸びしろしかない沖縄でのクルマイベントの可能性、これからも追いかけていきたい。

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:GAZOO編集部)